ロシアのSpotify、Zvooqが社員の引き抜きを理由にYandexを相手取り2900万ドルの賠償請求

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西欧の主要レーベルを味方につけ、ロシアと独立国家共同体(CIS)で音楽ストリーミングサービスを提供しているZvooqが、Yandexに2900万ドルの賠償金を求める裁判を起こしている。同社は、ロシアの検索エンジン大手Yandexが、今年の2月に両社の間で結ばれたとされる秘密保持契約書(NDA)に反し、自社の音楽ストリーミングサービスのために、Zvooqのキーメンバーを引き抜いたと主張しているのだ。

モスクワを拠点とし、キプロスに登記されているZvooqは、Yandexを不正競争とNDA違反で訴えている。なお、問題となっているNDAは、YandexがZvooqの戦略的投資家になる意向を示したことを契機に締結されていた。

NDAの中では、調印日から6ヶ月以内に、YandexがZvooqの社員を自社に勧誘することや、社員に解雇を促すことが禁じられていた。

しかし今春、同社のマーケティングディレクターを務めるVarvara SemenikhinaがYandexから勧誘を受けた結果、同社の音楽ストリーミングサービスであるYandex.Musicのマーケティングディレクターに就任したとZvooqは主張しているのだ。

2014年7月からZvooqに勤めていたSemenikhinaは、同社のプラットフォームの開発に”密に関わって”おり、さらには将来的なビジネスプランにも通じていたとZvooqは話す。

またZvooqは、Yandexによる引き抜きが、Zvooqの大型資金調達計画のタイミングと重なっていたため、投資家や同社の買収を検討していた人たちがZvooqから離れていってしまったと語っている。

Zvooq共同ファウンダーのVictor Frumkinは、「不正競争や不正な商習慣が業界全体に与える影響を考慮して、私たちは今回訴訟に踏み切りました。これは特に、公正なビジネス環境が整っていないロシアでは重要なことだと考えています。自由で開けたマーケットは、主要なプレイヤーが適正競争に関する基本的なルールを守ってこそ、効果的に機能するものです。そうすることでしか、Zvooqのように素晴らしいビジネスモデルと革新的なアイディアを持った企業が、消費者の生活を良くすることはできません。もしも企業の行いや市場原則に関する基本的なルールが守られなければ、また、もしも締結済みの契約書の内容が履行されなければ、政界に繋がりを持ったモラルの低い企業だけが市場で生き残ることになってしまいます。昨今の地政学的な状況を鑑みて、保護貿易主義が台頭しているロシアではなおさらです」と話す。

「Yandexによる引き抜きは許されざる行為であり、彼らはその報いを受けるべきだと考えています。というのも、今回の事件によってYandexは、世界中の人々に対して、ロシアの商習慣はまだ未発達で投資には高いリスクが伴うと言っているようなものです。私が知る限り、YandexはZvooq以外の企業にも同じようなことを行ってきており、業界全体のためにも、不正な商習慣がこれ以上悪影響を生み出さないように、私たちはこの状況に歯止めを掛けたいと考えています」と彼は続ける。

Zvooqのリーガルステートメントは、NDAの締結地でもあるリマソール(キプロス)の地方裁判所に提出されているため、英国法に基いて裁判が進められることになる。

Yandexの広報担当者は、TechCrunchに対し「私たちは、この裁判の知らせにとても驚いています。Zvooq社員の引き抜きは起きていないため、YandexはNDAにも違反していませんし、ここ数日の彼らの発言には、現実の状況が反映されていません。私たちは法的な立場を十分に理解しておりますので、裁判でそれを守るだけです。ZvooqとYandexの関係についてのこれ以上の詳細は、企業秘密のためお答えすることはできません」と語った。

ZvooqからYandexに引き抜かれたとされる、Varvara Semenihinaは「私の転職とヘッドハンティングは全くの無関係です。私がYandexにCVを送るずっと前に、Zvooqは私が辞めることに合意していました」と話す

ZvooqもZvooqで、Yandexがロシアの地元メディアに対して一方的な説明をしていると語っている。

ロシアのテックシーンに詳しい情報筋は以下のように語っている。「Yandexは以前ロシアのテック界の申し子でしたが、Googleによってロシア第2位の地位へと徐々に押し込まれてきています。さらに地政学的、経済的にも孤立しはじめたことから、現在同社は暴君のように振る舞っています。そのため、Zvooqのような小さなスタートアップは、以前にも増して今回の引き抜き事件のような集中攻撃を受けて、彼らにねじ伏せられてしまっているんです」

Zvooqによれば、同社の音楽ストリーミングサービスには現在2500万曲が登録されており、Zvooqはユーザーに対して、Universal Music GroupやSony Music Entertainment、Warner Musicといった大手レーベルからライセンスを受けた楽曲を提供している。

今年の6月にZvooqは、500万ドルの資金を調達すると共に、大手携帯電話オペレーターのTele2とパートナーシップ契約を結んでいた。さらにZvooqは、Yandex.Music、Google Play、Apple Musicに続く、ロシア第4の音楽ストリーミングサービスと考えられている。

また、2014年の8月にZvooqは、シリーズAで2000万ドルを調達しており、ロシアの小売企業Ulmartがリードインベスターとなったこのラウンドには、フィンランドのプライベート・エクイティ・ファンドEssedel Capitalが参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter