ロシアの監視技術スタートアップNtechLabが政府系ファンドから13億円超を調達

10万台の監視カメラで撮影された映像の分析事業を手掛けるモスクワ拠点のスタートアップであるNtechLabは、さらなるグローバル展開のために10億ルーブル(13億2100万円)以上の投資を終えたばかりだ。

5年前に設立されたこの会社は、ビデオに映った顔、シルエット、行動を認識するソフトウェアを販売している。同社の共同創業者であるArtem Kukharenko(アルテム・クハレンコ)氏によると「リアルタイムで大規模に認識できるため、顧客は状況に応じて迅速に対応可能なのが特徴」とのこと。

「例えば100台のカメラを処理できるシステムがあるとしましょう。都市に多数のカメラがある場合、これらのシステムは都市のあるエリアの100台のカメラに接続し、それを切断して別エリアの100台のカメラに接続するので、あまり興味深いものではありません」と同氏は語る。

ロシアの政府系ファンド(Sovereign Wealth Fund、ソブリン・ウェルス・ファンド)、Russian Direct Investment Fund、中東の非公開の政府系ファンドが出資する、NtechLabの最新の資金ラウンドは、財務的な重要性よりも戦略的な重要性を帯びている。同社は昨年、売上高が前年の3倍の800万ドル(約8億4500万円)に達して黒字化を果たし、2020年も同様の成長ペースで成長すると予想されている。

にもかかわらず新しいラウンドで得た資金は、攻撃的な行動の自動検出や車両認識などの新機能を開発するために投下され、中東、東南アジア、ラテンアメリカの主要な市場で新しい顧客を探すことを可能にする。同社の収益の柱は地方自治体との契約だが、エンターテインメント産業、金融、貿易、ホスピタリティなどの非政府系の顧客を開拓する計画も持っている。

同社は現在、独立国家共同体(CIS)圏、中東、ラテンアメリカ、東南アジア、ヨーロッパの15カ国30都市に顧客を持つ。これらの顧客は、画像解析処理のために、さまざまなグラフィックプロセッシングユニット(GPU)を搭載したさまざまなハードウェアをベンダーから調達できる。そのため、NtechLabは常に異なるGPUサプライヤーとの連携を図る必要がある。10年前まではNVIDIA(エヌビディア)が最適なソリューションだった、最近ではIntel(インテル)やHuawei(ファーウェイ)のようなライバルが登場している。

モスクワを拠点とするこのスタートアップは、写真をアップロードすることで、誰かのオンラインプロフィールを見けるコンシューマーソフトウェアとしてスタートした。のちにビデオにも進出し、それ以来、法執行機関に顔認証を導入することに熱心な政府のクライアントを引き付けてきた。例えば、新型コロナウイルスの感染蔓延の際には、ロシア政府はNtechLabのシステムを使用して大規模な集会を監視・管理を実施していた。

世界各地では、同様の公衆衛生監視とウイルス制御のための追跡を急ピッチで実施している。これらのプロジェクトは通常、善意のものでだが、大規模なデータソリューションの奔走がもたらすプライバシー侵害、差別、その他の結果についての議論が必要とされている。NtechLabは「適切に使用された場合、ビデオ監視は一般的に害よりも良い結果をもたらす」という見解だ。

「人々をかなり効果的に監視できるのであれば、街のすべての人々を行動を制限する必要はありません。問題は法律を尊重しない人々です。このような人々を監視し、罰則を課すことができれば、状況をよりよくコントロールすることができます」と同社のもう一人の共同創業者であるAlexander Kabakov(アレクサンダー・カバコフ)氏は主張している。

NtechLabのサービスが世界的に拡大するにつれ、必然的にそのアルゴリズムを悪用する顧客に出くわすことになる。同社は、顧客データをすべて非公開にし、自社のソフトウェアがどのように使用されるかは管理していないと主張しているが、「現地の法律に準拠したプロセスを作成するように努めています」とクハレンコ氏。

「私たちは、パートナーを信頼できるように事前に吟味しており、パートナーが私たちの技術を悪い目的に使用しないことを知っています」と締めくくった。

画像クレジット:NtechLab

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(翻訳:TechCrunch Japan)