企業のR&D戦略をサポートするPatSnapがソフトバンクなどから約327億円調達

世界中の企業が競争力を保つために研究と発明に資金を注ぐにつれ、R&D費用の価値の分析に対する需要も増大している。

そうした役割を担っているのがPatSnap(パットスナップ)だ。共同創業者のJeffrey Tiong(ジェフリー・ティオン)氏は10年以上前に医療機器業界で働いていたとき、知的財産や特許がテックの世界でいかに重要かを認識した。

2007年にティオン氏はグローバルの特許検索データベースを構築するためにシンガポールでPatSnapを立ち上げ、他の特許絡みの分野へと事業を拡大した。同氏が「インベーションインテリジェンス」と名づけたPatSnapの直近のソフトウェアは、R&D戦略の分析、競合相手の追跡、そして科学論文や政府のR&D助成金、スタートアップ資金調達ニュースなどのデータ処理による潜在的パートナーの特定で企業をサポートする。

「わかったのは、多くの企業がイノベーションを部門、機能、そして組織内のKPIとして扱っているということでした」とティオン氏は話した。「企業の多くが、どんなテクノロジーがいまあるのか、それを誰が手がけているか、といったことを調べるスタッフを雇っています。すべてを自分で行うというのは最近は無理です。パートナーが必要です」。

投資家らはR&Dブームに注意を払っている。最新の資金調達ラウンドでPatSnapはリード投資家としてソフトバンクのビジョンファンドⅡとTencent(テンセント)を引きつけた。3億ドル(約327億円)のシリーズEラウンドには、中国の国有コングロマリットCITIC Group(中国中信集団公司)傘下のCITIC Industrial Fund、Sequoia China、Xiaomiの創業者Lei Jun氏のShunwei Capital、そしてVertexの投資部門であるVertex GrowthとVertex Ventures Southeast Asia & Indiaが参加した。

ソフトバンク創業者で億万長者の孫正義氏はPatSnapのディールで決断を下す前にティオン氏と30分弱電話で話した。孫氏は20代前半に、後に100万ドル(約1億900万円)で販売したデバイスを発明して特許を取得した。「なので彼は発明、IP(知的財産)、イノベーションの重要性を理解しています」とティオン氏は述べた。

ティオン氏はTechCrunchとのインタビューの中でPatSnapのポストマネー評価額を明らかにするのは却下したが、10億ドル(約1090億円)を超えたと話した。

特許出願ブームにある中国はPatSnapの売上源として急速に成長しているが、同社にとって最大のマーケットは米国だ。世界知的所有権機関(WIPO)は1999年に中国からわずか276件の申請を受け取った。2019年にはその数は5万8990件に増え、米国の件数を上回った。

しかし欧米に比べて、中国企業はソフトウェアに大金をかけることにさほど熱心ではなく、そのためSaaS企業が中国で収益を上げるのは難しい。PatSnapは中国ではZhihuiyaというブランド名で展開しており、顧客は小売ブランドから研究機関、AI会社、製薬大手など多岐にわたる。

特許の激増はすぐさま技術的影響力に結びつくわけではない。R&D支出という点で米国は依然として中国の先を行っている、とティオン氏は述べた。さらに「中国の特許の質はさほど強固なものではなく、多くは画期的な発明ではなく漸進的なイノベーションです」と付け加えた。

PatSnapは50カ国超に1万超の顧客を抱えると話す。従業員700人は米国、欧州、カナダ、日本、中国に散らばっている。名の知れた顧客にはTesla、General Electric、Siemens、Dyson、PalPal、Spotify、Megviiなどがある。新たに調達した資金でPatSnapはプロダクトをさらに開発して専門性を一層深め、グローバルで存在感を高め、そして人的資本に投資する計画だ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:PatSnap資金調達ソフトバンク・ビジョン・ファンド

画像クレジット:PatSnap’s software

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi