ユニットエコノミクスが低い業界にあって、スクーターや自転車のシェアリングを展開している事業者は、乗り物の信頼性と低料金を維持しながら利ざやアップを図る方法を模索している。もしかすると充電ステーションがそのソリューションの1つになるかもしれない。シェアリング事業者に加え、いくつかの企業がすでに充電ステーションを展開し、この問題を解決しようとしている。そして最近TechCrunchの注意を引いたのがChargeという企業。同社はつい最近、自転車とキックスクーターのための充電ハブをロサンゼルスで立ち上げたばかりだ。
「Chargeは、Limeが参入しようとしているいくつかのマーケットでのトレンドに気づいていた2人のLimeの投資家から生まれた」とChargeでコミュニティのグローバル責任者を務めるQuemuel Arroyo(ケムエル・アロヨ)氏はTechCrunchに語った。「彼らは充電インフラの欠如が弱点だと感じていた。充電インフラがあればスクーターは常に充電された状態となり、世界中で散見されたような、スクーターが街中でゴミのようになったり障害物になったりすることもなくなる」。
私有地にあるChargeのハブは、ギグワーカーが複数のスクーターを同時に充電しやすいようにデザインされている。ワーカーは1回につき24時間ハブのスペースを予約できる。鍵のかかる小部屋は最大18台のスクーターに対応し、ハブとしては一度に72台に対応できる。充電が完了したら、ワーカーはスクーターをピックアップして配備する。
「充電場所を提供するというソリューションであるのに加え、ジューサー(充電作業を行うワーカー)の作業効率を高めている」とアロヨ氏は話した。
Bird、Lime、Spin 、そしてそのほかのマイクロモビリティ事業者は、スクーターの回収や夜間の充電、そして翌朝のスクーター配備といった作業を独立請負人に頼っている。つまり事業者はそうした乗り物を充電するのに自前のガソリン、労働、電気などを使う必要がない。
スクーター充電作業による収入に頼っているギグワーカーにとって、たくさんのスクーターを充電するのに自分の家以外の場所を使えるというのはかなり便利だ。しかし注意すべきなのは、Chargeは使用に30ドル(約3300円)かかること。BirdやLimeはスクーターの充電と配備の作業にワーカーに1台あたり3〜5ドル(約330〜550円)、場所によってはもう少し多く払っている。
例としてSpinで考えてみよう。同社はスクーター1台の充電にワーカーに5ドル(約550円)払っている。もしワーカーが15台回収してChargeのハブに持ってきたら、スクーター充電と配備の対価としてSpinから75ドル(約8300円)をもらう。だがChargeに30ドルを払わなければならず、儲けは実質たったの45ドル(約5000円)だ。
「料金はワーカーにとってかなり安いというものではない。しかしジューサーは1晩にスクーター12台ではなく、24台超を充電できると言う」とアロヨ氏は語った。「そうしてジューサーは収入を増やすことができる」。
スクーター24台で再度計算してみよう。ワーカーはChargeに30ドルを払い、Spinから120ドル(約1万3000円)を得るので、儲けは90ドル(約1万円)だ。これはすごくいい額ではなさそうだが、ジューサーの状況にもよるだろう。1度に充電するスペースを5台ぶんしか確保できなければ、Spinから得られる手間賃はたったの25ドル(約2800円)だ。もしひと晩に24台のスクーターを充電できれば、Chargeを利用することでもう少し儲けることができる。Charge利用では儲けが増えるのに加えて、生活空間をスクーターに占領されずに済み、火災のリスクもなくなる。
マイクロモビリティはまだ歴史の浅い産業だが、そうした乗り物の充電を専門とするかなりのスタートアップが存在する。そうしたスタートアップは合計で1900万ドル(約21億円)をこれまでに調達している。
ロサンゼルスで立ち上げたハブに加え、Chargeは歩道上に設置する最大12台対応のスマート充電ステーションの展開でパリと協議中だ。
「我々はパリ市と独占契約を結んだ。パリ市長いわく、パリの歩道は惨憺たる状態になりスクーターが歩道を占有するのをこれ以上許すわけにはいかない、とのことだ」とアロヨ氏は話した。
この種のモデルでは、ユーザーは乗り物を借りたり返したりするのにドックを使用する。これはSwiftmileと似ているモデルで、Swiftmileは10基の一般向け歩道ステーション展開でオースティン市と協業している。ステーションは80の駐車スペースを備え、Swiftmileは今年末までに設置を完了させる予定だ。このモデルでは充電専門の会社は使用量に基づいてオペレーター(スクーターなどの事業者)に課金する。
例えば、マーケットにもよるが、Swiftmileはオペレーターに分単位で課金し、しかし上限を設ける。当初は、使用方法やメリットなどを示すためにドッキングシステムを全オペレーターにオープンにする見込みだ。そして一定期間後は、Swiftmileは顧客のスクーターの充電にのみ対応する。SwiftmileはまたSpinのスクーター専用の充電ハブを作ることでSpinと提携を結んでいる。
「自治体や当局者はスクーターが散らばっている状態にかなり懸念を示してきた。Spinはこの問題に真っ先に取り組んでいる。マイクロモビリティを真に持続可能な人々の足にするのがゴールだ」とSpinの共同創業者兼CEOのDerrick Ko(デリック・コ)氏はTechCrunchに語った。「充電・駐車のソリューションであるSpin Hubsに我々はかなり投資してきた。また決められた返却ゾーンやHubに駐輪するよう、ライダーにインセンティブを与えるなどの取り組みも拡大してきた」
この分野で有力なのがPerch Mobilityで、充電作業を行うチャージャーによって設立された。Charge同様にロサンゼルスで展開しているPerchは3タイプのプロダクトを提供している。ポッド、トリポッド、そしてスイートだ。これら3つとも、固定料金で無制限に充電できるサービスが用意されている。ひと晩でスクーター14台を充電できる25ドル(約2800円)のサービスと、スクーター21台を充電できる45ドル(約5000円)のサービスだ。
再びSpinを引き合いに出すと、ワーカーが14台を充電するのに25ドルを払い、Spinから70ドル(約7700円)もらう。すると儲けは45ドル(約5000円)だ。
「ユーザーに持続可能な収入と、地域社会の持続可能性の両方を提供することに注力している」とPerch MobilityのCEOでTom Schreiber(トム・シュレイバー)氏は話した。「我々は低所得エリアを含む、コミュニティの全域でサービスを展開する」。
Perch Mobilityを使うとワーカーはより多く稼げる。しかしChargeはリチウムイオン電池を活用してグリーンな電気を提供している自社のシステムの方が環境に優しいと話す。
「マイクロモビリティをより成功させるのに欠けている要素の取り込みに真に役立つ、完全に環境に優しい施設を持っている」とアロヨ氏は語った。もし筆者が充電ワーカーなら、もちろんん環境のことは気にかけるが、いかに最大限稼ぐかに関心がいくだろう。
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(翻訳:Mizoguchi)