顧客からのオンデマンドでファッションを提供するKnyttanは、Techstars Londonの出身で、このほど200万ポンドのシード資金を獲得し、衣類の‘製造’の部分をディスラプトすべく頑張っている。
人気の乗り換え案内アプリCitymapperにも投資しているロンドンのConnect Venturesがこのラウンドをリードし、Frederic Courtの新ファンドFelix CapitalとPlayfair Capital、そしてBallpark Venturesが参加した。
2013年の4月に創業されたKnyttanは、協同ファウンダBen Alun-Jones、Kirsty Emery、Hal Wattsの三名がロンドンのRoyal College of Artの同窓生で、彼らがやろうとしているのは、業務用ニッティングマシン(編み機)を3Dプリンタのような簡易なものに変えて、ニット衣類のオンデマンド化を実現することだ。
“衣類の中で製造がいちばん難しいのがニットだ”、とWattsは言う。だから今の業務用のニッティングマシンは“プログラミングが気が狂いそうなほど難しくて、専門的なプログラミングスキルを要する”。ニットは、ファッション産業のボトルネックになっている。
“うちは専門プログラマが要らないようにし、3Dプリンタのように簡単にニットを作れるようにした。いわば、衣類用3Dプリンタだ”、と彼は言う。
デザイナーがこのプラットホームにアクセスすると、そのデザインに応じてKnyttanのマシンが動き出し、製造から販売までの流れが自動化される。これまでは作れなかったような、ニットのデザインでも製品化できる。
また、デザイナーと顧客との‘共同創作’ができるのも、この3Dプリンタ的ニッティングマシンの特長だ。つまり顧客が、デザインに関して、細部の変更などを指定できる。今現在はスカーフとジャンパーでそれができる。もうひとつの利点は、在庫は単なるデジタルデータだから、物理的な在庫が発生しないことだ。
“在庫ゼロで完全オンデマンドの製造と流通の仕組みを作れた。顧客がお金を払ってから品物を作っても、遅いと不平を言われることはない”、とWattsは語る。
今でかい面(つら)をしている古い流儀では、ニットどころか、単なるボタン付けや裾上げでも一週間近く平気で待たされるが、Knyttanのシステムでは、顧客が注文して出来上がるまでが数時間だ。オーダー服の数時間は、超革命的だ。既製服とみなした場合も、デザイン決定から店頭に並ぶまでが数時間というのは、すごいディスラプトだ。
Techstars LondonのJon Bradfordはこう言う: “過去20年間のファッション業界の唯一の革命は、ZARA〔“ヨーロッパのユニクロ”、すでに日本にも50店〕が工場から店頭までのサイクルタイムを6週間に短縮したことだ。Knyttanでは、6週間でも6日でも6時間でもない。これまでどこにもなかった、好みのデザインの服が出来上がるまで、待つ時間は2時間弱だ。衣料品市場の従来型垂直型のサプライチェーンを、完全に破壊するだろう”。
Knyttanのシードラウンドにも、ファッションリテイル畑の人たちが何人も参加している。それらは、José Neves(FarFetch, CEO)、Pascal Cagni(Apple, Net-a-porter担当)、Edoardo Zegna(元Everlane CPO; 現Ermenegildo Zegnaデジタル担当)、Mark Evans(Balderton Capital, VC)、Jon Kamaluddin(Asos, 元国際担当ディレクター)など。
KnyttanがTechstarsのデモデーで行ったピッチ(売り込みトーク)はこれだ。