“わが社のストーリー”を発信するプラットフォーム「PR​​ Table」が1.5億円を調達

企業がプレスリリースを打つサイトといえば、PR TIMESValurPress!DreamNewsなどがある。これらのサービスは伝統的なメディアに対して、伝統的な「プレスリリース」という完成された形式で自社ニュースなど発表文を効率良く届けるものだ。一方、2015年12月にスタートした「PR Table」は企業に埋もれている「ストーリー」を伝えることで、企業ブランディングや採用広報、社内広報、IRなどを支援するプラットフォームだ。

定食屋のスタートアップ「未来食堂」が、飲食業界の定説を覆す!?」というバズった記事を読んだ記憶があるだろうか? 2015年10月の記事だ。これがPR Tableのいうストーリーの1つで、この記事をきっかけにしてPR Tableはコンテンツと売上を伸ばしてきた。

そのPR Tableが今日、シリーズAラウンドとして1億5000万円の資金調達を終えたことを発表した。リードインベスターはDGインキュベーション。ほかに大和企業投資、みずほキャピタル、静岡キャピタル、ABCドリームベンチャーズが本ラウンドにVCとして参加している。PR Tableは2014年12月創業で、2016年10月には大和企業投資、みずほキャピタル、および個人投資家数名からシード資金として3000万円を調達していて、累計1億8000万円の資金調達となる。

共同ファウンダーで代表取締役の大堀航氏はTechCrunch Japanの取材に対して、「エモーショナルなものを発信する文化がどれだけ作れるか」がPR Table成功のカギの1つだと話す。プレスリリースというのは非常に歴史が古いものだが、ネット上のプレスリリース配信が始まったのは2009年ごろのこと。PR TIMESが上場したのは2016年3月のことで「10年近くかかっている」(大堀氏)。大堀氏らが次に普及させたいのは、従来ならニュースやプレスリリースにならないような企業情報をストーリーによって発信する文化だという。

「ゴールは、それぞれの企業が自分でストーリーを書けるようになることです」(大堀氏)

もともとPR Tableは企業から請負で、すべてのストーリーを制作していた。初期導入費用とストーリー5本で150万円。編集者がついて戦略やロードマップを策定し、実際のコンテンツの制作、公開、配信、集客、活用といった一連のプロセスを全部サポートするといったサービスだ。

このサービスで800アカウントほど獲得して足元の売上を作ってきたが、現在はプラットフォーム利用の月額制に移行を終えたという。初期導入費用30万円、月額10万円(初期キャンペーンは4万円)だ。

「企業からみるとコーポレートサイトに近いようなものを運用していくイメージで、1社1社の企業カルテのようなものになる」(大堀氏)という。できあがったランディングページを見てみると、今どきのHTMLでできた創業以来のイベントがタイムラインにアニメーションで表示されたりして、確かに「良い容れ物」という印象だ(たとえば例はここ)。ブラウザ下部には「働きたい」「事業を知る」「取材したい」という3つの大きなボタンが用意されていて、閲覧者にアクションを促す仕組みになっている。

各企業のストーリー作りは、これまでの知見を反映して戦略策定やコンテンツでフォーマットを標準化したり、工程管理のワークフローで業務を効率化できるようにするのが1つのポイントだそうだ。もともと大手PR会社にいた大堀氏は、「広報業務は非効率なところが多いのです。メディアリストをExcelで管理していたり。ストーリー発信は余計な業務なので効率化を進めたい」と話す。ワークフローを情報としてストックしていくことで、広報担当者が変わったときにも社内資産として引き継げるようなものになるという。現場利用者としては広報部以外も想定する。「広報部だけじゃなくて人事部もユーザーです。今後はIRもやっていきます。すでに現在、経営企画室でIR・広報・人事のすべてを見ている人がユーザーにいるのですが、好評です」(大堀氏)

現在すでにPR Tableには500ストーリーほどが掲載されていて、このうち4割ほどは顧客企業が制作している。全く添削が不要なストーリーは5%程度と、まだ編集や広報のプロの視点が必要とされている面もあるようだ。

既存媒体との連携も進めていて、今後は地方紙とも連携していく。例えば熊本出身の起業家のストーリーなどで、日経新聞連載の「私の履歴書」の地方版のようなものをPR Tableで作り、それを地元紙に掲載する取り組みだ。「地方にはニーズがあると思います。地方企業はニュースが少ないのでプレスリリースが出しづらい。でも企業内に良いストーリー自体はあるのです」(大堀氏)