「アメリカ心理学会が自撮り写真を精神障害に分類」というニュースは事実無根のジョークだった

〔この記事はSarah Buhrの執筆〕

アメリカ心理学会が大量の自撮り写真を公開することは精神障害の一種と認定したというニュースは、この週末、キム・カーダシアンとカニエ・ウェストの結婚式と共にソーシャルメディアの大きな話題になった。念のためにお知らせしておくが、この話は風刺サイトが掲載したジョークで、まったく事実ではない。

この釣りネタがかくまで急速に広まったのは、多くの人々が「そうであればいい」という願望を抱いていたからではないだろうか。ソーシャルメディアにひっきりなしに自撮り写真を投稿しFacebookのタイムラインを溢れさせる迷惑なユーザーがいることは事実だ。

しかし自撮り愛好家は精神障害ではないのはもちろんだが、一部のフェミニストは自撮りは若い女性の自己確立を助けるものとして積極的に評価している。その意味で、自撮りに「精神障害」のレッテルを貼ろうとするのは女性が自信を持つことを貶めようとするものかもしれない。

もちろん自撮り写真をむやみにソーシャル・メディアに投稿するのは多くの人を不愉快にさせるし、本人の評判を悪くする。しかし一部のフェミニストは自撮り写真が若い女性に自信を与える効果があるとしている。この問題では #feministselfies というタグで昨年末からTwitter上で議論が続いている

事実、Aol/Todayが今年1月に実施した“身体に関する理想と現実のイメージに関する調査によると、若い女性の65%は「自撮り写真は自信をつけてくれる」と回答している。SlateのRachel Simmonsは若い女性の自撮りは、男子には奨励されるが女子には否定されてきた社会的な自我の主張だと考えている。

もちろん、行き過ぎた自撮り中毒者となれば問題だ。Danny Bowmanというティーンエージャー(両親は心理学者)は毎日200枚も自撮りするという。彼は「いくら撮っても思うような写真が撮れないので自殺を考えた」そうだ。もちろんBowmanは極端な例だ。これは自撮り中毒というよりむしろ身体醜形障害という心理的障害の一種として考えるべきだろう。

ソーシャルメディアに自撮りを大量にアップする若い女性をバカだと笑うのは簡単だが、これは同時に、 かつてヒステリーを女性特有の症状としていたように、既存の社会規範に当てはまらない女性の振る舞いを矮小化しようとする試みの一つでもあるのかもしれない。

〔日本版:オリジナルの記事を掲載したジョーク・サイト、The Adobo ChroniclesはApple、Samsung、NokiaはAPAの認定を受けてフロントカメラを廃止すると発表という「フォロー記事」も掲載している。〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+