2020年10月のシリーズCラウンドで30億ドル(約3120億円)と評価された(未訳記事)オムニチャネルクラウドコミュニケーションプラットフォームであるMessageBird(メッセージバード)は、ロンドンを拠点とするリアルタイムウェブテクノロジー企業Pusher(プッシャー)を買収した。
買収価格は3500万ドル(約36億円)で、Pusherの共同創業者でCEOのMax Williams(マックス・ウィリアムズ)と25人のPusherチームはアムステルダムに本社を置くMessageBirdに加わる。Pusherは2018年、TechCrunchに60人のチームを持つと語っていたことから、近年明らかにコストを削減した。
Pusherのプロダクトは、既存の顧客に対してはこれまで通り維持される。一方、アプリ内通知が特徴であるPusherの技術と「プッシュ」を中心に構築された開発者向けAPIとSDKはMessageBird独自のコミュニケーションプラットフォームとのギャップを埋めるのに役立つ。MessageBirdのプラットフォームはFacebook Messenger、WhatsApp、Line、WeChatなどのメッセージ中心のチャネルやSMSで強みを発揮する。具体的には、Pusherがアプリ内メッセージング、プッシュ通知、位置追跡などの機能をもたらすといわれている。
「この取引により多くの新しいツールと機能が生まれます。MessageBirdの顧客は、以前よりもさらに多くの方法で彼らの顧客とコミュニケーションをとることができます」とMessageBirdは述べる。
2011年創業のPusherは、ウェブサイトやアプリにリアルタイム機能を組み込みたい開発者の障壁を下げることを目標としていた。それは元々、汎用のリアルタイムAPIとそれをサポートするクラウドインフラを介して提供されていた。アプリ開発者はリッチプッシュ通知、ライブコンテンツの更新、さまざまなリアルタイムコラボレーションおよび通信機能などをより簡単に開発することができた。
しかし同社は最近、特定のリアルタイム機能専用の追加サービスの展開を始めた。まず、チャット機能をアプリまたはサービスに追加するために必要な多くの面倒な作業を担うAPIおよびSDKであるChatkitを開発した。これはその後、チャート、位置追跡、地図を加えて拡張された。PusherはGitHub、Mailchimp、CodeShip、The Financial Timesを顧客に抱える。
一方、MessageBirdは当初、米国を拠点とするTwilio(トゥイリオ)の欧州または「その他の地域」での競合企業と考えられていた。音声、ビデオ、テキスト機能をすべてAPIにまとめてサポートするクラウドコミュニケーションプラットフォームを提供しているが、その後自社を「Omnichannel Platform-as-a-Service」(OPaaS)に位置づけ直した。企業や中小企業が選択した任意のチャネルで顧客と簡単にコミュニケーションできるというのがその構想だ。
従来の常識を破り、MessageBirdはWhatsApp、Messenger、WeChat、Twitter、Line、Telegram、SMS、eメール、音声のサポートを含む。顧客はオンラインで始めると、サポートリクエストやクエリをお気に入りのモバイルメッセージングアプリなどのより便利なチャネルに移動できる。もちろん、モバイルメッセージングアプリもMessageBirdと一緒に使用できる。これはすべて、MessageBirdの創業者でCEOであるRobert Vis(ロバート・ビス)氏の大きな賭けの1つだ。同氏は、顧客とのやり取りの未来はオムニチャネルにあると考えている。
従ってPusherの買収は全体として適切に見える。ロンドンとアムステルダムは地理的にもタイムゾーンも近いが、MessageBirdはとにかくリモートファーストの会社に変身しつつある。また、間違いなくプロダクトには相当の重複があるが、十分に統合する前に埋めるべき正真正銘のギャップもある。
MessageBirdのCEOで創業者であるビス氏は短い電話でPusherの技術とチームについて話した。同氏は、イグジットするスタートアップが単に買収されて跡形もなく消えるのではなく「良い家」を見つけることが重要だという信念を打ち明けた。同様に、MessageBirdが真のオムニチャネルを目指すなら非常に優れた「プッシュ」APIと品揃えが必要だ。そこで買収か開発かという意思決定の機会があり、今回はPusherとチームを組むことが最善の方法であると判断した。
ビス氏は筆者に、オムニチャネルおよびメッセージングプラットフォームの分野でさらに多くのM&Aが見込まれるとの見方を示した。IPOの可能性があるMessageBirdからだけでなく、競合他社が買い手になる可能性もある。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:MessageBird、Pusher、買収
画像クレジット:MessageBird
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(翻訳:Mizoguchi)