これを、かつての最強ブランドSears(シアーズ)の、死刑執行の一時的な延期以外の何かとして見ることは困難だ。ネットショップが優勢になってからの、これまでの数十年間、全国どこでもモールの旗艦店だったこのストアは、苦戦を強いられた。そして今や同社は、Amazonと契約して、家電のストアブランドKenmoreを、今も続いている同社の業績落下の、主要な原因の一つ(==Amazon)で売ることになった。
いかにも負け戦のような選択だが、しかし少なくとも、短期的には賢明だ。ウォール街もご褒美として、今朝(米国時間7/20)の取引では、この131歳の企業の株を25%も上げたではないか。SearsのCEO Eddie Lampertも同じく希望をいだき、“アメリカにおけるKenmoreブランドの流通と入手のしやすさを大きく拡大する”、と今朝の声明で述べている。
全国で651店あるSearsは、今でもアメリカで第五位の大きさのデパートメントストアだ。だから、流通に不足はないはず。ただし2011年には3500店あったことを思い出すと、今さら新しいパートナーシップに感動している場合ではない。
流通チャネルにネットが加われば、同社家電製品の入手しやすさがアップするのは当然だが、Kenmoreのファンにとっては、物理店を避ける理由がひとつ増えたことになる。お客が物理店を避ければ、ワンストップショッピングが売りだった古典的デパートメントストアにおける、“ついで買い”の商機も失われる。
この苦悩する小売企業は以前、Kenmore, Craftsman, DieHardなどのストアブランド商品の流通経路の選択肢を増やすことを検討する、と発表したことがあったが、今回のニュースは、それから1年以上も経っている。これらのブランドには今でも多少の顧客吸引力があり、Searsのお店の残された集客力の、一部でもあるのだ。
Searsのこの契約には、別のおもしろいニュースもくっついている。いやいやながら21世紀へ足を引きずって歩いて行くSearsの、Kenmore家電製品に、Alexaのスキルが実装されるのだ。たとえばGEがそれをとっくにやってしまったエアコンでは、ユーザーは家にいるままでそれを買えて、しかもカウチに座った(寝た?)まま温度を変えられる。