AIサイバーセキュリティ企業SentinelOneが110億円のIPOを申請

AIと機械学習を利用して企業などのデータ保護を支援する後期段階のセキュリティスタートアップSentinelOneが、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にIPOを申請した。

このセキュリティ企業は、米国時間6月3日に提出されたS-1文書で4月30日に終わる3カ月で売上が3740万ドル(約41億円)で前年比108%増加し、顧客ベースは前年の2700社から4700社に増加したことを明らかにした。パンデミックがもたらした成長にもかかわらずSentinelOneの純損失は2020年の2660万ドル(約29億1000万円)から6260万ドル(約68億6000万円)へと倍以上に増加した。

SentinelOneは同文書で「今後も成長のための投資が継続するため、弊社の営業費用の増加も予想される。主な増加要因は、弊社プラットフォームのさらなる開発を進めるための研究開発の拡大と営業およびマーケティング活動の拡張、隣接市場に拡大していくための機能性の開発、そして新たな国や地域における顧客獲得のための費用だ」と述べている。

マウンテンビューに拠点を置く同社によると、同社はそのクラスAの普通株をティッカーシンボル「S」で発行する意図であるが、IPOのために用意する普通株の発行数や価格範囲については未定だ。S−1文書が挙げている主な引受人は、Morgan Stanley、Goldman Sachs、Bank of America Securities、Barclays and Wells Fargo Securitiesとなる。

SentinelOneは2020年11月に2億7600万ドル(約302億4000万円)を調達して、評価額は2021年2月の10億ドル(約1095億5000万円)から30億ドル(約3286億6000万円)へと3倍になった。当時、CEOで創業者のTomer Weingarten(トメル・ヴァインガルテン)氏はTechCrunchに、同社にとってIPOは「次の論理的なステップだろう」と語った。

SentinelOneは2013年に創業され、これまで8回の資金調達ラウンドで計6億9650万ドル(約763億円)を調達した。IPOによる調達額は最大で1億ドル(約110億円)を目指しており、この資金を利用してサイバーセキュリティのマーケットプレイスにおける企業の知名度を上げ、また製品開発など「一般的な企業プロセス」にも資金を投じたい、と述べている。

そしてさらに「資金の一部は弊社のビジネスを補完する技術やソリューションや事業の買収に当てるかもしれない」という。同社のこれまでで唯一の買収は2021年2月に行った高速ロギングのスタートアップScalyrの1億5500万ドル(約169億8000万円)の買収だ。

SentinelOneが上場を目指すこの時期は、サイバーセキュリティへの一般的な関心が高まっている時期でもある。パンデミックの間には著名な企業に波のように押し寄せるサイバー攻撃があり、ハッカーたちはリモートワークの広範な必然化に乗じている。

最大の攻撃の1つがロシアのハッカーによるIT企業SolarWindsのネットワークの侵犯で、それにより政府機関や複数の企業へのアクセスを彼らは得てしまった。SentinelOneのエンドポイント保護ソリューションは、関連する悪質なペイロードを検出および停止でき、顧客企業を護った。

ヴァインガルテン氏はSECへの提出文書の中で次のように述べている。「世界は犯罪者や国家犯やその他の悪質な行為者で満ちており、彼らはデータの窃盗や悪用の機会を探して、私たちの生活を破壊しようとしている。弊社のミッションは、情報を保存し処理し共有するデータとシステムという現代社会のインフラストラクチャの大黒柱を、保護しその安全を確保することにより、世界を正常に動かし続けることだ。犯人たちは、経営と操業を破壊、データを侵犯、利潤を転覆し、ダメージを与える彼らのクエストを急速に進化させているため、これは終わりなきミッションである」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:SentinelOne新規上場機械学習人工知能

画像クレジット:Tero Vesalainen/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

セキュリティスタートアップSentinelOneが高速ロギングのScalyrを約162億円で買収

顧客がAIと機械学習を使用してセキュリティデータを理解するのを支援するレイターステージのセキュリティスタートアップであるSentinelOne(センチネルワン)は米国時間2月9日、高速ロギングスタートアップのScalyrを1億5500万ドル(約162億円)で株式と現金を対価に買収すると発表した。

SentinelOneは顧客がセキュリティの状況を理解するのに役立つよう大量のデータを分類する。エンジニアがデータを迅速に行き来し、問題の根本を突き止めることができるツールを持つことは顧客にとって非常に価値がある、とCEOで共同創業者のTomer Weingarten(トマー・ウェインガーテン)氏は説明した。「Scalyrは、世界中のあらゆる法人顧客のデータを幅広く保護するという当社の継続的なビジョンにぴったりだと思いました」と同氏は筆者に語った。

ウェインガーテン氏は「当社の拡大ニーズを満たす会社を探すのに時間をかけました。Scalyrに出会ったとき、リアルタイムのデータレイクを開発した同社の可能性をすぐに理解しました」と語った。そして「当社のテクノロジーの規模を考えた上で世界中を探し回り、最高のデータ分析テクノロジーを見つけました。データを取り込んでリアルタイムでアクセスできるプラットフォームを見つけたとき、信じられないほど特別なものを見つけたと思いました」と説明した。

同氏は、リアルタイムという要素により顧客が単にデータ侵害に対応するのではなくそれを防ぐことができるようになるため、ゲームチェンジャーになると考えている。「攻撃の緩和や攻撃への対応を考える場合、リアルタイムで実行でき、データをリアルタイムで処理し、異常をリアルタイムで見つけて対応できれば、単に攻撃を認識してそれに対応するだけではなく、実際に攻撃をかわすことができるシステムになります」と同氏は説明した。

同社はScalyrがプラットフォームに統合できるもののスタンドアローンのままでもある製品だと考えている。つまり既存の顧客は以前と同じようにScalyrを使い続けながら、大企業に自社の研究開発に貢献してもらうというメリットを享受できるということだ。

SentinelOneは公開会社ではないが、かなり規模が大きい未公開会社であり、Crunchbaseのデータによるとこれまで6億9500万ドル(約727億円)以上を調達した。直近の資金調達ラウンドは2020年11月で、31億ドル(約3243億円)のバリュエーションで2億6700万ドル(約279億円)を調達している

Scalyrは2011年にSteve Newman(スティーブ・ニューマン)氏が創業した。同氏は当初、Writelyというワードプロセッサーを開発し2006年にGoogleに売却、これは実際にGoogle Docsのベースになった。ニューマン氏はGoogle Docsへの関与を続け、さらに拡張するためにインフラ構築を始め、その経験と知識を活かしてScalyrを築き上げた。Crunchbaseのデータによると、同社は2017年のシリーズAでの2000万ドル(約21億円)を含め、これまで2700万ドル(約28億円)を調達した。

買収取引は今四半期には完了し、その時点でScalyrの45人の従業員はSentinelOneに移る。

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タグ:SentinelOneScalyr買収

画像クレジット:John Lund / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi