NASAは、将来の深宇宙計画で使用する高度ソーラー電気推進(SEP)システムを開発する6700万ドルの契約先に、Aerojet Rocketdyne社を選んだ。
プレスリリースでNASAは、この推進システムは小惑星のロボット探査や火星探査に関連するその他の計画に使用される可能性がある、と説明している。
化学推進(ロケットが地球の引力から逃がれて軌道に達するために用いられる推進方式)と比べて、SEPの推力は小さいが燃料効率が良く長時間推力を提供できる。こうした理由から、SEPは真空中、特に存続期間の長い作戦の宇宙船に適している。
SEPエンジンは、太陽エネルギーを電気に変え、その電力を使ってイオン化燃料を超高速に加速することによって推力を得る。SEPのスラスターから出る特徴的な青色の輝きは、 エンジンを離れたイオンがエネルギーを失う際に解放するフォトンから生まれる。
NASAは1950年代からSEP技術を研究しており、現在準惑星ケレスを周回中で、2つの地球外物体を周回した初めての宇宙船であるDawn探査機等に用いられている。
今回の契約でNASAは現在の電気推進システムの2倍の推力と、現在の化学推進の10倍の燃料効率を目指している。
SEPを使用する深宇宙計画の課題の一つは、太陽系深く(太陽から離れて)飛行するにつれ、宇宙船の原動力となる太陽光を効率的に集めるのが難しくなることだ。このため、現在SEP研究と並行して、高度ソーラーアレー技術の研究にも予算がつけられている。
36ヵ月の契約期間中、Aerojet RocketdyneはSEPシステムの試験と評価のための、コンサルテーション、テスト、および開発を請負う。最終的にAerojet Rokcketdyneは、電気推進ユニット4基を宇宙に送り出すことを目標にしている。
「この契約を通じて、NASAは高度電気推進ユニットを初めて宇宙船で使用するための開発を行う。これは高度ソーラー推進実験計画を2019年までに実現するための足固めとなるだろう」とNASA宇宙技術ミッション部門副責任者、Steve Jurczykは語った。
この電気推進契約に加えて、Aerojet RocketdyneはNASAの火星探査計画で使用するために作られたロケット、スペース・ローンチ・システムのための化学推進システム — RS-25エンジン — の開発も担当している。
Aerojet Rocketdyneの現在の契約は、NASAによる高度SEPシステムを推進する全体計画の一環である。NASAは小惑星軌道変更作戦で、これまでに宇宙で使用された最大かつ最先端のSEPシステムをテストする計画だ。同作戦は小惑星を捕獲し月の軌道に乗せようとするもので、現在2020年代中頃の実行を予定している。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)