コレクターズアイテムのマケプレ「StockX」は米国のロックダウンでもビジネスは絶好調

StockX CEO スコット・カトラー

スニーカーやストリートウェア、ハンドバッグ、その他のコレクターズアイテムの買い手と売り手をつなぐStockX(ストックエックス)は、飛ぶ鳥を落とす勢いで売上を伸ばしている再販マーケットプレイスだ。1000億ドル(約11兆円)規模と言われている世界のスニーカー市場において、スニーカーの再販市場は60億ドル(約6400億円)規模に達している。去年、企業価値10億ドル(約1080億円)と評価された同社は、昨年だけでプラットフォームを通じて10億ドル相当の商品が販売されたと述べている。

問題は、今後StockXがこの勢いを維持できるか否かだ。投資家から約1億6000万ドル(約170億円)を調達したデトロイトを拠点とするこの5年目企業が直面しているのは、複数のライバル社の存在だけでなく、ストリートウェア産業の「バブル」が破裂の危機に瀕しているという意見だ。何百万人もの人々を失業に追いやったパンデミックを考慮に加えると(プラス、仕事を失っていない人々の健康被害も考えると)、答えはNOだと思うだろう。

しかし、今週初めにStrictlyVCが主催し、ニューヨークタイムズのErin Griffith(エリン・グリフィス)氏が運営したオンラインイベントで、StockXのCEOであるScott Cutler(スコット・カトラー)氏は真逆の事実を主張した。同社のビジネスは絶好調だと言うのだ。

意外でもないが、現時点においてStockXは従来の大衆市場よりも息が長そうだとさえ主張している。彼はキャリアの早い段階でニューヨーク証券取引所の役員として9年間過ごしているため、大衆市場にも精通しているわけだ。

インタビューのハイライトを以下に紹介する。

市場を牽引しているのは誰か、またそれが少数のパワーユーザーなのかを尋ねたグリフィス氏の質問からインタビューが開始した。

弊社の顧客の75%は35歳未満で、現在幅広い購買層から成り立っている。約2年ほど前に、スニーカーを収集したり、購入して売ったりする人々を指す「スニーカーヘッズ」という言葉が普及した。統計の中でもたとえばミレニアル世代とZ世代を見てみると、40%の男女が自身をスニーカーヘッズと自称していて、この人口統計は世界中に広がっている。現在170以上の国と地域に弊社の顧客がいる。

カトラー氏によると、StockXは非常に有利なポジショニングにいると言う。AmazonやGoogleの検索で見つけられる、競争率の高い多くの商品とは異なり、StockX自体はほとんどの顧客にとって「最初の」ショッピングサイトなのだ。

ブランド各社でさえもStockXで売られている製品を供給することができないため、顧客は公式ブランドショップではなく、初めから弊社のサイトに立ち寄る。つまり、弊社はカスタマージャーニーの最初の時点で顧客が求めているものを提供できる。これはeコマースでは非常に有利であり、珍しいことだ。

新型コロナウイルスがStockXの収益にどのような影響を与えたかというグリフィス氏の質問に対し、カトラー氏は「当社のビジネスと成長にとっては素晴らしい影響だ」と答えた。

過去数カ月にわたる最近の事情は、弊社ビジネスにとって有益と言える。一部の地域では従来のリテールが機能していないため、弊社サイトへのトラフィックと購入者が増加している。弊社はこれまでも常に、希少価値の高い存在だと自負していたが、実際に物理的にリテールショップに行けない今となっては、ますます顧客はStockXを訪れてくれるようになった。そういった意味では、弊社のビジネスと成長には素晴らしい影響と言える。

StockXでは、販売者は本物であることの認証を受けるために商品をStockXの倉庫に送り、そこから購入者に商品を発送するので、ビジネスの成長を保つには同社の倉庫には従業員の配置が必要だ。ただし「大きな影響を受けているニュージャージーのような地域でさえ、従業員は倉庫に出勤している」とカトラー氏は言う。世界中で大規模なビジネスを運営し続けながら、チームメンバーが「安全」と感じられるようにすることを試みる「バランスのとれた」行為だと述べている。

実際にどのようにして従業員の安全を確保しているかと言うと「弊社の事業が行われている各地域それぞれのルールや規制に従って運営している」とのこと。さらに同社は「スポットボーナス」を支払い、現在も認証センターに通勤している従業員に対しては給与を25%増加したと言う。

倉庫閉鎖の要請が出た場合や、従業員に感染者がではじめた際にどうするのか、同社のバックアッププランをグリフィス氏が尋ねた。ここでカトラー氏は同社が保有する複数の認証センターについて言及した。

ある認証センターから別の認証センターに送る必要がある場合は、そうする予定だ。これまでも同様に運営してきた。

また、同社の現在の事業継続計画については、

サイトの安全性とセキュリティ、および発生するすべてのインシデントを確認し、ルーティンロジックについて毎日チームとして意思決定を行っており、誠実に対応している。

誰もが緊縮経営に焦点を当てている中、StockXのベンチャー投資家と同社はどのような会話をしているのかという質問をグリフィス氏が投げかけた(StockXは、DST Global、General Atlantic、GGV Capital Battery Ventures、GVなどからの投資を受けている)。

カトラー氏は、「現状況が今後どの程度続くか分からないという点では、我々の多くにとっても不確実である」と認めた上で、同社は将来を見据えて「需要のマクロシフトのさまざまなシナリオ」を考慮に入れ、「サプライチェーンにおけるマクロシフト」を見る限り楽観視して良いのではと述べている。例として、この冬に多くのサプライチェーンの工場がダウンした中国でも、今では以前の生産能力の80〜90%に戻っていると指摘した。

(グリフィス氏がプラットフォーム上の高価なスニーカーは数千ドルで販売されていると言及したため)今後景気後退が続いた場合にもStockXは不況知らずかと尋ねられるとカトラー氏は「プラットフォームを用いたビジネスとしては、そうであることを望んでいる」と回答。

多くの販売者が生計をStockXに依存していることを理解する必要がある。毎日何千足ものスニーカーを売り上げるような非常に高度なビジネスを運営していて、StockXでの稼ぎで学費を支払っている学生に販売している事もあるかもしれない。

カトラー氏はまた、StockXを公開株式市場と比較。株式市場と同社はそれほど変わらないと主張し、現時点ではStockXの方がより安全な賭けである可能性があると述べた。

実際に、この状況を市場機会とみなしている顧客もいる。市場と同様に、値下がりしそうな希少なエアジョーダン1の価格を見て、その価格が長続きしないと判断できる人もいる。

「人々はスニーカーにお金を注ぎ込んでいる」とカトラー氏は述べ、「スニーカーにおけるポートフォリオは今年も上昇し続けている。S&Pについて言えるのはそれだけだ」と付け加えた。

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(翻訳:Dragonfly)

スニーカーの巨大マーケットプレイス「StockX」の鑑定プロセスと今後の戦略

Joshua Luber(ジョシュア・ルーバー)氏は、企業評価額10億ドル(約1080億円)のスニーカー帝国「StockX」の共同創業者だ。これは「本物を適正な価格で売り買いできる」ことがセールスポイントのスニーカーのマーケットプレイスとして急成長したが、ルーバー氏によればまだ「ほんの入口にたどり着いたに過ぎない」という。

消費者自身も売り手になってブランド商品を取引できるマーケットプレイスはこのところ急成長している。StockXも最近5番目のカテゴリーとしてコレクター向けアイテムを集めた「コレクティブル」を追加した。「いわば、eBayの進化した姿で、株式市場に似た仕組みでアイテムの価格を決定する。StockXの核心は、適正な市場価格の発見だ」と同氏は言う。

我々(Burns, Cao)は、StockXの1400平方mにもおよぶデトロイトの鑑定センターを訪れ、鑑定プロセスを見ると同時にLuber氏からも話を聞くことができた。

以下は、Matt Burns(マット・バーンズ)記者のインタビュー概要だ、

Matt Burns(MB):StockXの本質は何か?

Josh Luber(JL):我々はeBayの進化形態で、売り手と買い手を結びつけてマーケットプレイスを作ることだ。ただし我々は株式市場が株価を決定するメカニズムを参考にして、スニーカーであれ他のアイテムであれ、適切な市場価格を発見する。

MB:この施設では何が行われているのか?

JL:売り手が発送したスニーカーやカジュアル衣料はまずここに来る。ここでは検品と鑑定が行われる。朝届いた商品はその日のうちに処理される。

MB:鑑定には特別な資格が必要?

JL:理論的には誰でもできるようになる。しかし毎日たとえばスニーカーばかり何百足も鑑定するわけだから、やはりその商品に対する愛着がないと難しい。

スニーカー鑑定部門責任者(SAC):まず箱をチェックする。次に書類がそろっているか確認する。スニーカーを箱から取り出して正しい一足になっていることをチェックする。左ばかり2つとか左右ばらばらとかでないことを確かめる。スニーカーの外観を360°観察し、続いて細部をチェックする。

MB:特に注目する部分は?

SAC:スニーカーのモデルによっていろいろだがステッチはしっかり見る。最後ににおいを嗅いでみる。売り手によってはタバコやペットの臭いが残っていることがある。納得がいったら鑑定済みのタグを取り付ける。

MB:ニセモノだったらどうするのか?

SAC:売り手はニセモノだと知らずに売りに出すことが多い。「これはニセモノだ」という鑑定結果をつけて売り手に送り返している。

MB:StockXの今後の戦略は?

JL:1つはユーザーの拡大だ。いままで中古品を売り買いすることを考えなかった層にもStockXを拡大したい。もうひとつカテゴリーの拡大だ。既存のカテゴリーに出品されている中にレアもの、限定アイテムなどがよく含まれていた。そこで自然の成り行きとしてコレクティブルというカテゴリーを新設した。スター・ウォーズやGIジョーのおもちゃなど有望だ。

MB:スニーカー帝国を運営するようになってもやはり個人的にスニーカーが好きか?

JL:実は好きだ。気づいてみると(StockXをスタートしたときすでに著名なスニーカーのコレクターだったが)、さらにたくさんスニーカーを買っている。

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滑川海彦@Facebook