企業のカード決済を支援するSumUpが977億円を調達して成長を加速

ロンドンを拠点とするスタートアップSumUp(サムアップ)は、物理的なカードリーダー、オンラインでの支払い、請求書払いなどに対するカード決済の提供によって、企業の収益向上を支援しているが、同時にSumUp自身も大きくパワーアップさせている。英国時間3月16日、同社は7億5000万ユーロ(約976億5000万円)の資金調達を発表した。新しい資金は事業の継続的な拡大に投入されるが、具体的には買収や、欧州、ラテンアメリカ、アジアの新市場への参入、一連の企業向けサービスの構築に利用される。同社はすでに33カ国で活動していて(最新のところではチリ、コロンビア、ルーマニア)、約300万社の企業を顧客として抱えている。

資金を提供しているのはGoldman Sachs、 Temasek、Bain Capital Credit、Crestline、そしてOaktree Capital Managementが管理するファンドだ。SumUpに確認したところ、今回の資金調達は株式ではなく融資のかたちで行われたため、公開できる正式な評価額はない。これまでのところ、この地域のスタートアップ企業(つまり、未上場のハイテク企業)にとって、融資であるかどうかの形式を問わず、最大の資金調達の1つとなっている。

注目すべきは、Goldman SachsとBain Capitalが2019年にも同社のために3億7100万ドル(約405億3000万円)の融資ラウンドを主導したことだ。

SumUpの共同創業者の1人であるMarc-Alexander Christ(マーク=アレクサンダー・クライスト)氏(同社は「CEO」のような正式な肩書きは使用していないようだ)は、同社が株式ではなく融資を選択したのは、それが可能だったからだと述べている。

彼は「借金をすることができるのは、私たちに非常に安定したキャッシュフローがあるからです」とインタビューに答えている。融資という手段は、より大きく成長していて、特に多くの現金を生み出している企業が採用することの多い手段だ。希釈化しないということは、資本コストも低くなるということである。

この会社は、いわゆるSquare(スクエア)クローンの1つとして2012年にスタートした企業だ。そうした米国内外で設立された「クローン」たちは、携帯電話やタブレットに取り付ける小型のカード決済ドングルを中心にサービスを提供しており、それまでコストがかかりすぎるとか、複雑すぎるといった理由でカード決済を採用してこなかった企業や、銀行が提供する高額な代替手段を使っていた企業たちに訴求してきた。

SquareやiZettle(アイゼットル、後にPayPalに買収された)などの同業他社と同様に、SumUpは時が経つにつれて、オンライン取引、請求書作成、ギフトカード、より幅広いPOSソリューションなど、ビジネス向けの他のカードや決済関連サービスにも手を広げて行った。

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また同社は、この分野での統合者としての顔も見せ始めている。2016年には、より大きな競合他社であるRocket Internet(ロケット・インターネット)傘下のPayleven(ペイレブン)を買収したことで、幅広い市場への進出が後押しされている。ここ数年にわたって、同社は数多くのスタートアップを買収してきたが、たとえば最近では、リトアニアでビジネス向けのモバイルバンキングプラットフォームを提供するPaysolut(ペイソルート)や、より大きな会場でのPOS展開を目的としたGoodtill(グッドティル)やTiller(ティラー)などを買収している。

こうした取引は、SumUpの製品拡大戦略への取り組みも物語っている。同社のビジネスモデルは、主にプラットフォーム上で行われる取引から手数料を徴収することを前提としている。そのため現在のところ、同社は企業向けのサービスを充実させ、その取引の割合の拡大というの戦略をとっている。消費者向けの金融サービス拡大ではない。

これは、Square Cash(スクエア・キャッシュ)によってこれまでに700万人以上の消費者を獲得したSquareや、消費者向けサービスを直接には開始しなかったものの、消費者向けデジタルウォレットの最大手であるPayPal(ペイパル)に買収されたiZettle(アイゼットル)などとは対照的だ。

また、SumUpは、他の2社が積極的に取り組んでいる仮想通貨にも関心がない。

クライスト氏は「Bitcoin(ビットコイン)投資についていえば、Squareは最も容易な入門体験手段となりました」という。「でもそれは、主にお客さま獲得のためのツールの1つなのです。彼らはBitcoinである程度のお金を稼いではいますが、それほど多くはありません。お客様にとって価値のあるものではないので、私たちがすぐにそこに手を出すことはありません。ユーザーの方々はアカウントが気になってログインするだけで、他のことは何もなさらないのです」。

こうした姿勢は、多くの取引がオンラインに移行し現金が忘れられていく流れの中で、同社の着実な成長を助けた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが引き起こしたこの2つの大きな流れは、多くの国で商店の閉店を余儀なくし、人びとに対面での購買を控えさせ、コミュニティへの感染を抑制するために現金使用を控えるようになったからだ。また同社の姿勢は今回の資金調達にも役立った。

Bain Capital Credit のTom Maughan(トム・モーガン)氏は声明の中で「過去2年間にSumUpが遂げた、目覚ましい発展を知っている私たちは、こうしてSumUpを再び支援できることを誇りに思っています。SumUpが、想像し得る限り最も困難な経済状況の中で、世界中の中小企業のために行っている、取引を継続し繁栄するための支援に、大きな賞賛を捧げます」と語っている。「今回、SumUpへの投資額を倍増させたのは、同社の現在の状況と強い将来性への信頼を示しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:SumUp資金調達イギリス

画像クレジット:iStock/Getty Images Plus / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)