SpaceX CEOのイーロン・マスク氏は、同社の次世代宇宙船であるStarship(スターシップ)に関する最新情報を発表した。Starshipは完全な「迅速再利用性」を実現するために設計されている。マスク氏は、スターシップの設計の背後にある技術について語ったが、それらは2017年に最初に発表されて以来、テストと開発を通じて進化を遂げてきたものだ。
数ある最新情報を説明する中で、マスク氏はStarshipが人類の惑星間フライトにどのように使われるかを説明した。その中には軌道上に打ち上げ済のタンカーStarshipとドッキングすることによって、空中で推進燃料を補充するといったことなども含まれている。これは、特に他の宇宙施設へ届けるために100トン近くの貨物を搭載する宇宙船が、打ち上げ後に地球から月または火星への移動に十分な推進燃料を補給するためには必要な措置だ。
これらには、惑星の表面に基地を建設するための資材だけでなく、惑星から惑星への長距離飛行を行う最大100人の乗客も含まれている。
とはいえ、それらは依然として非常に長期的な目標である。マスク氏は現行世代のStarshipプロトタイプの開発と軌道に乗る予定の将来のStarship、そして最初の有人飛行についても詳細に説明を行った。
Starship Mk1、Mk2、および今後登場するMk3およびMk4オービタルテスター(軌道試験機)はすべて、フィン(ヒレ)のあるデザインを備えているが、これは地球の大気に腹部を水平に保ちながら再突入し、振り子のようなスイングで姿勢を変えて、タッチダウンのために垂直状態になる前に、抵抗を高めて速度を落とせるようにするためのものだ。イベントで披露されたように、シミュレーションで示された映像は信じられないようなものだった。なにしろそれは現在のFalconブースターの着陸プロセスよりも、制御されているとはいえ、はるかに扱いにくいもののように見えたからだ。
マスク氏はまた、宇宙船を軌道に乗せるために使用されるブースターであるSuper Heavyで計画されている設計についても紹介を行った。Starship自身の約1.5倍の高さの、この液体酸素を動力とするロケットには、37個のラプターエンジンが搭載され(Starshipには6個しか搭載されない)、さらに6本の着陸脚と、自身が地球に帰還する際に使用する展開可能なグリッドフィンも備えている。
マスク氏が南テキサスのボカチカで発表した、テストと開発の計画に関して言えば、スターシップMk1は1〜2ヶ月のうちに最初のテスト飛行を行う予定だ。それは、7万フィート(約21.3km)よりも少し低い、準軌道高度への飛行になる。プロトタイプの宇宙船には、その飛行に使用する3つのRaptorエンジンがすでに搭載されている。
また、現在フロリダ州ケープカナベラルの別のSpaceX施設で建造中のスターシップMk2は、同様の高度試験を行う予定だ。マスク氏は、これら両方のファミリが引き続き内部で互いに競争を行い、Starshipのプロトタイプとロケットを同時に建造すると説明した。Mk3は来月からボカチカで建造が開始され、Mk4の建造は間もなくケープで開始される。マスク氏は、Mk1の準軌道旅行の後に行われる次のStarshipのフライトは、完全なSuper HeavyブースターとMk3を組み合わせた軌道打ち上げになる可能性があると述べた。
マスク氏は、SpaceXは「ここ(ボカチカ)で宇宙船とブースターの両者を建造し、ケープでも可能な限り作業を急いでいる」と述べた。そして彼らはこの競争の結果、宇宙船の設計と製造の両方で既に「指数関数的な」改善を行えていると述べた。
例えば、Mk1は、以下のプロトタイプの詳細写真で見ることができるようなリング状の溶接パネルを使っているが、Mk3とMk4は、一箇所で溶接された宇宙船の全周を覆うステンレス鋼のフルシートを使用する。このイベントの会場にはそのようなリングが1つ置かれていた。これは、SpaceXがすでにこの部品を制作していることを示している。
このラピッドプロトタイピングにより、SpaceXは2カ月以内にMk2、3カ月でMk3、4カ月でMk4を建造してフライトを行って行くことができる。マスク氏は、Mk3またはMk5のいずれかが、軌道テストとなること、そして6か月以内にそれを達成できるようにしたいと付け加えた。最終的には、スターシップを使う有人ミッションはボカチカとケープの両方で行われる予定だ。両施設はMk4が完了するまではStarshipの生産にのみ集中し、その後Super Heavyブースターの開発が開始される。
マスク氏によれば、SpaceXは、これから最初の軌道飛行までに100基のRaptorロケットエンジンを必要とすると述べた。現在のペースでは、SpaceXは8日ごとに1基のエンジンを生産しているが、数カ月以内には2日ごとに1基に増やし、2020年の第1四半期の早い段階には毎日1基を生産できるようにする予定だ。
積極的な建造とテストサイクルを行うために、そしてマスク氏が言ったように「ブースターを1日に20回飛ばす」とか「1日に(Starshipを)3〜4回飛ばす」ためには、SpaceXは理論的な実行可能性をきわめてに迅速に証明しなければならない。マスク氏はこの結果として、早ければ来年には人間を乗せたStarshipのテスト飛行を行えるだろうと楽観していると語った。
その素早い再利用性の一部は、SpaceXがStarship用に考案した遮熱設計おかげだ。これは宇宙船の半分をステンレス鋼で仕上げて、再突入時に最も高熱のかかる底部にはセラミックタイルを使用するというものだ。マスク氏は、両者は共に再突入のストレスに対して高い抵抗力があり、ステンレス鋼ではなく炭素繊維を使用していた最初のコンセプトとは異なり、莫大なコストをかけることなく頻繁な再利用を実現することができると語った。
マスク氏は現実とあまり一致しないタイムラインを発表することで知られているが、Starshipの初期のテストでは、これまでのところ彼の予測に遅れは出ていない。
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(翻訳:sako)