イーロン・マスクの次世代宇宙船Starshipは半年以内に衛星軌道に、来年には有人飛行

SpaceX CEOのイーロン・マスク氏は、同社の次世代宇宙船であるStarship(スターシップ)に関する最新情報を発表した。Starshipは完全な「迅速再利用性」を実現するために設計されている。マスク氏は、スターシップの設計の背後にある技術について語ったが、それらは2017年に最初に発表されて以来、テストと開発を通じて進化を遂げてきたものだ。

数ある最新情報を説明する中で、マスク氏はStarshipが人類の惑星間フライトにどのように使われるかを説明した。その中には軌道上に打ち上げ済のタンカーStarshipとドッキングすることによって、空中で推進燃料を補充するといったことなども含まれている。これは、特に他の宇宙施設へ届けるために100トン近くの貨物を搭載する宇宙船が、打ち上げ後に地球から月または火星への移動に十分な推進燃料を補給するためには必要な措置だ。

エロン・マスク

これらには、惑星の表面に基地を建設するための資材だけでなく、惑星から惑星への長距離飛行を行う最大100人の乗客も含まれている。

とはいえ、それらは依然として非常に長期的な目標である。マスク氏は現行世代のStarshipプロトタイプの開発と軌道に乗る予定の将来のStarship、そして最初の有人飛行についても詳細に説明を行った。

Starship Mk1、Mk2、および今後登場するMk3およびMk4オービタルテスター(軌道試験機)はすべて、フィン(ヒレ)のあるデザインを備えているが、これは地球の大気に腹部を水平に保ちながら再突入し、振り子のようなスイングで姿勢を変えて、タッチダウンのために垂直状態になる前に、抵抗を高めて速度を落とせるようにするためのものだ。イベントで披露されたように、シミュレーションで示された映像は信じられないようなものだった。なにしろそれは現在のFalconブースターの着陸プロセスよりも、制御されているとはいえ、はるかに扱いにくいもののように見えたからだ。

SpaceX Starship Mk1 29再利用のための重要なコンポーネントであるStarshipプロトタイプのフロントフィンは、再突入の方向を決めるのに役立つ

マスク氏はまた、宇宙船を軌道に乗せるために使用されるブースターであるSuper Heavyで計画されている設計についても紹介を行った。Starship自身の約1.5倍の高さの、この液体酸素を動力とするロケットには、37個のラプターエンジンが搭載され(Starshipには6個しか搭載されない)、さらに6本の着陸脚と、自身が地球に帰還する際に使用する展開可能なグリッドフィンも備えている。

マスク氏が南テキサスのボカチカで発表した、テストと開発の計画に関して言えば、スターシップMk1は1〜2ヶ月のうちに最初のテスト飛行を行う予定だ。それは、7万フィート(約21.3km)よりも少し低い、準軌道高度への飛行になる。プロトタイプの宇宙船には、その飛行に使用する3つのRaptorエンジンがすでに搭載されている。

また、現在フロリダ州ケープカナベラルの別のSpaceX施設で建造中のスターシップMk2は、同様の高度試験を行う予定だ。マスク氏は、これら両方のファミリが引き続き内部で互いに競争を行い、Starshipのプロトタイプとロケットを同時に建造すると説明した。Mk3は来月からボカチカで建造が開始され、Mk4の建造は間もなくケープで開始される。マスク氏は、Mk1の準軌道旅行の後に行われる次のStarshipのフライトは、完全なSuper HeavyブースターとMk3を組み合わせた軌道打ち上げになる可能性があると述べた。

エロン・マスク1

マスク氏は、SpaceXは「ここ(ボカチカ)で宇宙船とブースターの両者を建造し、ケープでも可能な限り作業を急いでいる」と述べた。そして彼らはこの競争の結果、宇宙船の設計と製造の両方で既に「指数関数的な」改善を行えていると述べた。

例えば、Mk1は、以下のプロトタイプの詳細写真で見ることができるようなリング状の溶接パネルを使っているが、Mk3とMk4は、一箇所で溶接された宇宙船の全周を覆うステンレス鋼のフルシートを使用する。このイベントの会場にはそのようなリングが1つ置かれていた。これは、SpaceXがすでにこの部品を制作していることを示している。

このラピッドプロトタイピングにより、SpaceXは2カ月以内にMk2、3カ月でMk3、4カ月でMk4を建造してフライトを行って行くことができる。マスク氏は、Mk3またはMk5のいずれかが、軌道テストとなること、そして6か月以内にそれを達成できるようにしたいと付け加えた。最終的には、スターシップを使う有人ミッションはボカチカとケープの両方で行われる予定だ。両施設はMk4が完了するまではStarshipの生産にのみ集中し、その後Super Heavyブースターの開発が開始される。

スターシップMk1ナイト

マスク氏によれば、SpaceXは、これから最初の軌道飛行までに100基のRaptorロケットエンジンを必要とすると述べた。現在のペースでは、SpaceXは8日ごとに1基のエンジンを生産しているが、数カ月以内には2日ごとに1基に増やし、2020年の第1四半期の早い段階には毎日1基を生産できるようにする予定だ。

積極的な建造とテストサイクルを行うために、そしてマスク氏が言ったように「ブースターを1日に20回飛ばす」とか「1日に(Starshipを)3〜4回飛ばす」ためには、SpaceXは理論的な実行可能性をきわめてに迅速に証明しなければならない。マスク氏はこの結果として、早ければ来年には人間を乗せたStarshipのテスト飛行を行えるだろうと楽観していると語った。

その素早い再利用性の一部は、SpaceXがStarship用に考案した遮熱設計おかげだ。これは宇宙船の半分をステンレス鋼で仕上げて、再突入時に最も高熱のかかる底部にはセラミックタイルを使用するというものだ。マスク氏は、両者は共に再突入のストレスに対して高い抵抗力があり、ステンレス鋼ではなく炭素繊維を使用していた最初のコンセプトとは異なり、莫大なコストをかけることなく頻繁な再利用を実現することができると語った。

マスク氏は現実とあまり一致しないタイムラインを発表することで知られているが、Starshipの初期のテストでは、これまでのところ彼の予測に遅れは出ていない。

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(翻訳:sako)

SpaceXがStarshipとSuper Heavyの打ち上げと着陸の詳細な計画を発表

SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの、間もなく実施される試験積載量での打ち上げのための環境評価準備書を整えた。環境評価の準備を行い完了させることは、完成間近なSpaceXの完全再利用型大積載量ロケットの第1弾となるSuper Heavyにとっても、このシステムの第2弾となる宇宙船コンポーネントであるStarshipにとっても、実際の打ち上げの可否を左右する重要な鍵となる。

すでにSpaceXは、Starshipのプロトタイプを飛ばす準備を進めている。SpaceXのCEOElon Musk(イーロン・マスク)氏の楽観的なスケジュールが合えば、「2〜3カ月後」の打ち上げられる予定だ。Starshipを小型化し、同機に搭載予定のRaptorエンジンのテスト用に作られたデモ機のStarHopperによる地上繋留なしの「ホップ」(跳躍)程度の低高度飛行試験は、先日、成功させた。しかし、SpaceXは、その打ち上げ計画の実施が周囲の環境に及ぼす影響を真剣に考慮していることも示す必要がある。

StarshipとSuper Heavyはフロリダから打ち上げられる、しかしSpaceXには、NASAから借り受けているFalcon 9とFalcon Heavyの打ち上げに使用しているケネディ宇宙センター第39発射施設に、2つ目の発射台を建設する計画もある。39A発射台から打ち上げられたStarshipは、今の予定では、ケープカナベラル空軍基地近く(フロリダ州、米東海岸)にあるFalconの第一段ブースターの着陸に現在使用しているゾーン1(LZ-1)に帰還することになっている。Super Heavyは、東海岸と西海岸の打ち上げミッションの条件にもよるが、飛行経路に沿って無人操縦の台船の上に着陸する。これは、SpaceXが現在使用している「Of Course I Still Love You」(もちろん今でも愛してる)と「Just Read The Instructions」(いいから説明書を読め)の2隻の双子の回収台船と同じようなものだ。

Starshipを打ち上げ場のずっと近くに戻したいSpaceXは、ゆくゆくは、第39発射施設内の39A発射台の近くに着陸場を建設したいと考えている。だがそのためには、その実現可能性と影響を詳しく研究して判断する必要があるため、SpaceXでは、今のところはその計画を先送りすることにしている。

「NASAが設計し、人類初の月面着陸を達成した39A発射台は、幅広いミッションに対応できるインフラを備えた、世界でもっとも有能な打ち上げ台のひとつです」と、SpaceXの広報担当者はTechCrunchに宛てた声明の中で述べている。「Starshipの開発を加速させつつ、SpaceXはパートナーたちと共同で、過去の偉業と進歩した新たな宇宙技術の上に、39A発射台の基盤設備を強化し続けます」。

環境評価準備書の中で、SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの打ち上げと着陸を、ケープカナベラル空軍基地のSLC-40と、バンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア州、米西海岸)のSLC-4打ち上げ場で行う可能性も検討していると述べている。しかし、SLC-40にはこれらを実施できるだけの広さがない。またSLC-4の場合は、打ち上げ場に戻るために長い道のりを移動しなければならない(巨大なロケットが陸路で米国を縦断することになる)。

最後にSpaceXは、将来的に「StarshipとSuper Heavyをテキサス州キャメロン郡の施設で建造し打ち上げる」考えも示した。テキサスの打ち上げ場には、SpeceXの要となるロケットとエンジンの開発施設に近いという利点がある。性能的に高度に安定した打ち上げと着陸が行える再利用型のシステムの開発に成功すれば、大きな水域から離れているという欠点は相殺されるだろう。ただしこれらの計画は、別物として考えるべきだ。そのため、近い将来、テキサスからStarshipのフルスケールの打ち上げがあると期待するのはまだ早い。

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(翻訳:金井哲夫)