もしあなたが育児のためにフルタイム職場を離れたことのある母親なら、育児休暇のあとの仕事復帰に困難を感じた経験があるかもしれない。
時間をかける必要があると感じることもあるだろう;何年も求人市場を離れ、自信というものを完全になくしている;スキルが以前ほど時代に適応していない;あるいは単にキャリアについて考え直したい;そして、多くの雇用側の人がー彼らがそう言うか言わないかはともかくー上記全てを理由にあなたに以前より興味をなくしている。そしてあなたの履歴書がLinkedIn上でどんなに輝かしいものであっても助けにはならない。それはタフな経験となる(私自身の体験に基づいて言う)。
そしていま、シカゴ拠点のスタートアップで、女性ナレッジワーカーが育休後に職探しをするのを手伝うためのプラットフォームThe Mom Projectは、そうした困難を引き受けようと、プラットフォームそのものの小さな卵を育てた。シリーズAで800万ドルを調達し、この資金は同プラットフォームの求人をさらに多くの都市で展開するのに使われるー現在はシカゴ、アトランタ、サンフランシスコで展開している。さらに、仕事と育児の両方をこなす苦労を減らすためのサービスの種類も拡大する。
投資はGrotech VenturesとInitialized Capitalが主導し、今回新たにAspect Venturesが加わった。また、従来の投資家Atlanta Seed Company、Engage Ventures、OCA Ventures、BBG Ventures、IrishAngels、Wintrust Financialも参加した。
今回の投資でThe Mom Projectがこれまでに調達した額は1100万ドルとなった。母親7万5000人、そしてProcter & Gamble、BP、Miller Coors、AT&Tといった企業を含む1000社が利用していて、The Mom Projectは米国におけるこの手のプラットフォームとしては最大とのことだ。
オムツ販売からオムツ替えする身に
The Mom Project創業者でCEOのAllison RobinsonはPampersでの戦略担当の職を離れ、出産休暇を取っていた2016年にこのスタートアップアイデアを思いついた。
「自身が母親になる前に、私は母親たちについて多くのことを認識し始めた」と彼女は起業家になる前の最後の仕事について回顧した。「しかし自分自身が出産休暇を取るまで理解していなかったことは、子どもを持ったあとでは優先順位が変わるということだった」(彼女は息子と写っている上記の写真を見せてくれた)。
彼女がハーバードビジネスレビューで目にした、スキルを持つ女性の43%が子どもをもった後に職を離れると推測される、という記事を引き合いに出しながら、Robinsonは前職に戻るのを中断しているもののどこかの時点で仕事に戻りたいと思っている女性と、マーケットの間に大きなギャップがあることに気づいた。
彼女の言うことには一理ある;仕事に戻りたいと決めた女性は、より時間に柔軟性が必要だったり、スキルがまだ通用するかどうかという懸念、また自信などの問題に直面する。しかし平均的な採用プロセス、そして求人サイト全体そうした問題にあまり対応していない。
またギャップはマーケットの雇用主の側にもある。事業所というのはー社会の目が向けられている大企業、そしてさほど目が向けられていない小さい企業どちらもー人材争奪戦の中にあっていかに能力のある人を雇用し続けるか再考している。(ちょうど今週、英国統計局が、情報・コミュニケーションテクノロジー分野で雇用できていないポジションの数が昨年に比べ24.3%増えたと発表した。労働力不足は他のマーケットでも見られる)。
多様な労働力を抱えることーより多くの女性、そしてさまざまな年代の女性を含むーが労働力不足を解決するだけでなく、全体的に良い労働文化にする鍵を握る。事実、多くの雇用主がそうしたことを自ら認識し、あるいは単に知らずにスポットライトを浴びて修正しようとしている。
にもかかわらず、より多様な労働力の確保を追求しようとしても、それほど機会は多くない。
LinkedInは最近、雇用の多様化を進める小さな取り組みとして、リクルーターが候補者結果を性別で検索できるようにした。しかしこれは、労働人口の特定のセグメントが抱える特異な苦境を実際に解決するのとは程遠い。そしていかに労働者を手助けするかというのは、リクルートを通じてより多くの人を採用するのに熱心な雇用主と関わっている。
事実、特定のケースでナレッジワーカーのための改善した仕事検索機能を提供するというアイデアは実際には非常に興味深く、リクルートという世界においてまだイノベーションの余地がはっきりとあることを示している:こうした取り組みを展開しているHandshakeは今年初め4000万ドルを調達した。Handshakeはマイノリティの大卒者を、労働力の多様化に熱心な企業での面白い求人につなげるためのLinkedInスタイルのプラットフォームを提供している。
「企業は多様性に富んだ労働力の構築の価値を認識し始めた。しかし、平等な参加と機会の達成に向けてはまだ先は長い」とGrotechパートナーでMom Projectの新取締役員として加わったJulia Taxinは語る。「Allisonと彼女のチームは企業向けに多様な人材の驚くべきマーケットプレイスをつくった。職場における性差をなくすのを手伝うという彼女たちのビジョンを実行に移すためにThe Mom Projectと働くのを楽しみにしている」。
The Mom Projectはスペクトルの両サイドにある困難に取り組む、とRobinsonは語った。
まず雇用主サイドについてだが、人事担当者と話し、子供を抱える人ーその多くが女性だが、中には男性もいるーをより採用することで得られる機会を彼らに理解してもらうなど、多くの教育が進行中だとRobinsonは話す。
「我々はこうした企業により多くのデータを提供したい」と言い、それは単に就業機会を提供するという観点だけでなく、親にチャイルドケアや柔軟性のある労働スケジュールといったエリアで選択肢を提供するということになる、と指摘する。そして「我々は彼らに‘この点ではうまくやっている、この点ではまだまだ’などと示したい。うまくやれていなところを直すのにお金はそうかからない。しかし多くの企業が気づいていない」。
「我々のプラットフォームには7万5000人の女性が登録している。そして現在1000社が求人を出している。ゴールは7万5000超の職を提供すること。我々はプラットフォームにサインアップしている全ての母親が就職できるようにしたい」と話した。
「The Mom Projectは、女性が家庭かキャリアかという選択を迫られない将来をつくる」と、Initialized Capitalのパートナーで、Mom Projectの新役員となったAlda Leu Dennisは声明でこう述べた。「経験のある人、親、親でない人などのかなりの人材蓄積があり、こうした人たちの存在はときに見過ごされていた。というのも企業は、そうした人々をひきつけてとどまらせるような、多様性に富み、また柔軟な職場環境を構築していないからだ。Initializedは、こうした職場環境の変化をおこす動きに加わりたい」。
親のサイドについていうと、仕事復帰を考えている人にこのプラットフォームの存在を知ってもらうだけでなく、求職者になりそうな人が面接に行くための柔軟性を提供するなど、基礎的だがとても重要なサポートを用意している。Robinsonは、あるキャンペーンが間もなく始まると話した。そのキャンペーンとはUrban Sitterと提携し、Mom Projectの求職者が面接に行けるよう、無料の託児を提供するというものだ。
「通知から24時間以内に面接を受けに行かなければならない場合もあり、ベビーシッターを予約するのがストレスになる」とRobinsonは指摘する。「我々はそのストレスを緩和したい」。
親はまた、これが面接だけの問題ではないことも承知している:多くの町や地域に、Robinson言うところの“チャイルドケア砂漠”があり、そうしたところでは利用しやすい選択肢が乏しい。
請負業務が王様(そして王妃)
現在のところ、プラットフォーム上の仕事の大半は有期契約労働に集中しているとRobinsonは言うーつまり常用雇用、フルタイムの仕事ではない。
これは多くの理由による。たとえば、育休明けの親は短時間労働、そして長期ではない契約を希望しがちだ。そして雇用側も、育休明けの人の採用がうまくいくかいまだにテストしている。しかしながら、一般的な雇用の傾向として、大きな変動を目の当たりにしている。事業者は、季節性に対応するため、そして会社に柔軟性をもたせるため(福利厚生の義務を軽減するのは言わずもがなだ)、フルタイムの労働者より有期契約の人を雇用している。
Robinsonはより多くのフルタイムの仕事の機会をプラットフォームに持ってくるのが目標だ、としているが、それでもなおMom Projectは興味深い就業機会となる。このスタートアップはさながらAirbnb、Amazon、他の多くのマーケットプレイスのように作用していて、求職者と事業者を結びつけるだけでなく、仕事に関する全ての取引業務を引き受けている。仕事が有期契約の場合、Mom Projectは必然的に労働者に賃金を支払う仕事エージェントとなり、Mom Projectはまた福利厚生なども提供する。
別の言葉で言うと、Mom Projectには、仕事に復帰する女性に就業機会を提供することにターゲットを絞ることでLinkedInのような事業者と競争したり(少なくともビジネスを少し奪ったり)するチャンスがある一方、給料の支払いからチャイルドケアのリスト化などさまざまなサービスを提供して雇用主と労働者のニーズをさばく、ワンストップ雇用ショップになるという大きな可能性を秘めている。
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(翻訳:Mizoguchi)