2017年にAtlassian(アトラシアン)が買収した、かんばん方式のボードを中心にしたプロジェクト管理ツール「Trello(トレロ)」が、ここ数年で最も重要なアップデートと思われるものを、米国時間2月16日に発表した。
5000万人を超える多くのユーザーを持つTrelloは、現在最も人気のあるプロジェクト管理ツールの1つであり、多くの点でデジタルかんばん方式を主流に押し上げた。今回発表されたアップデートでもその重点は変わらないが、開発チームは新しいボードビューを多数追加するとともに、それらのビューを構成する個々のカードに新しい機能を追加。特に外部ツールからデータを取り込むことに注力した。加えて、サービス全体のルック&フィールにも多くの変更が加えられている。
「何年もかけて、私たちはこの巨大で情熱的なオーディエンスを築き上げてきました」と、Trelloの共同創業者であり、現在はAtlassianのTrelloの責任者を務めるMichael Pryor(マイケル・プライアー)氏は、今回の発表に先立ち筆者に語った。「私たちは、5000万人以上の登録ユーザーを抱えています。この5000万人というのは2018年頃の数字で、現在の数字はまだ知らされていません。【略】そして2020年、新型コロナウイルス感染流行が発生しました。以前、未来の仕事のやり方について話しましたよね?それが突然、現実になったのです。いや、単に仕事のやり方のことです。今ではみんながそのとおりに仕事をして、すべてが分散されています。まさに一晩で変わったのです。以前は爆発的に増えるアプリについての話をしていました。ブラウザのタブの話とか。情報の拡散で人々が迷子になるという話をしていました。それが一気に最大値を超えた状態になったのです」。
Trelloに多くの新機能が追加された理由は、ユーザーがTrelloの中でより多くの作業をより容易に行えるようにするためと、チームが自分たちで取り組んでいることだけでなく、各チーム間や組織内で何が起こっているのかを、よりマクロ的に見ることができるようにするためだ。さらに、この新バージョンには、さまざまな外部ツール形式のデータを、いちいちツールを切り替えなくとも、Trello内でネイティブに見る方法が追加されている。
実際に使ってみると、Trelloに5つの新しいビューが追加されたことがわかる(そして、それらは簡単に切り替えることができるようになっている)。
1つ目は、会社全体やプロジェクト間にまたがる仕事をスプレッドシート式の表示で把握することができるテーブルビュー。2つ目は作業間の障害となるギャップがないことを確認し、開始日や期限を調整するためのタイムラインビュー。3つ目は期日や期間を確認するためのカレンダービュー。4つ目は仕事に関わるさまざまな場所や位置情報を視覚的に確認するためのマップビュー。そして5つ目はプロジェクトの進捗状況や指標をわかりやすく視覚化したりリポートを作成するためのダッシュボードビューだ。
これらのほとんどは、名称からどういうものかわかる。しかし、ここで最も興味深い機能は、新しいテーブルビューが、複数のボードからカードを取り込めるTrello初のビューであるということだ。
「これによって、単一のボードレベルだけでなく、ポートフォリオレベルまで視野を広げることができます」と、プライアー氏はいう。「最終的には、すべてのビューで同じことができるようになります。ボード上でカードを回転させて、プロジェクトの内容や必要性を確認できるようになります」。このアイデアは、Trelloの既存のビジュアル言語を使用・拡大し、共有された視点を加えるためであると、同氏は説明した。
また、ここでもう1つ重要なのは、Trelloはこの機能を、独自のビューを構築したいと考えるサードパーティに開放することも計画しているということだ。たとえばTrelloチーム自身は、プロジェクト内のすべてのカードを使ったスライドを自動的に作成するスライドビューを構築し、たとえば会議で簡単にプレゼンテーションできるようにすることを考えている。
だが、Trelloが新しいカードで何をできるようにしたかということは、おそらくもっと重要だと、プライアー氏は主張する。新たに導入された「リンクカード」は、リンクするURLを貼り付けるだけで、YouTube(ユーチューブ)、Google Drive(グーグルドライブ)、Figma(フィグマ)、JIRA(ジラ)など、30種以上の外部プラットフォームのデータを、Trelloカード内でプレビューすることでができる。同様に「ボードカード」は、他のボードのURLをカードのタイトルとして貼りつければ、そのボードを参照できる。
「これが何を意味するかというと、カードに現れているものが、Trelloの中だけに存在するものから、他のすべてのツールにまたがって起きている作業を表すものへと昇華されるということだと、私は思います」と、プライアー氏は説明する。「JIRA(Atlassianの課題管理システム)のチケットをTrelloカードと一緒に存在させることができるようになるということです。そしてJIRAで起きていることとは独立した状態で、それを分類し、移動させ、それについて話すことができます。他のカードとつなぐこともできますが、ダッシュボードを作成する機能が追加されたので、すべての作業を1カ所でまとめて見ることができるようになりました」。
開発チームは、Trelloのユーザーがすでに気に入っているシンプルさと視覚的な言語を活用し、それを他のツールにも応用したいと考えていたと、プライアー氏は指摘している。「競争に巻き込まれて、プロジェクト管理の機能だけを構築することもできました」と彼はいうが、チームは単なるプロジェクト管理アプリ以上のものを作りたいと考えた。Trelloを、ユーザーがすべてのプロジェクトを管理するのに役立つアプリにしたいと考えた。
機能を追加するだけでは、ただ肥大化するだけだと彼は主張する。そうではなく、チームはカードのメタファーを利用してそれを拡張し、ユーザーがすでに慣れ親しんでいる視覚的な言語を使って、Trelloの中で新しいソリューションを構築できるようにしたいと考えたのだ。
もう1つの新機能も近々導入される。それはTrelloコミュニティで長らく待ち望まれていたもの、「ミラーカード」だ。これは基本的に、複数のボードで同じカードを共有できる機能で、元のカードから他のボードのカードにリンクさせるだけで、元のカードの情報が他のボードのミラーカードに表示される。元のカードを更新すると、他のボードのミラーカードにも自動的に反映される。
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)