およそ全てのオンライン出版社が、ペイウォール(有料会員限定サービス)を始めたり発表したりしている(事例1、事例2)。だがもちろん、成功している者たちでも全ての読者を有料顧客にすることはできていないし、大部分の読者にサインアップさせることもできていない。さてPianoとTrue[x]は、大切なサブスクリプション収入を損なうことなく、読者の大多数から収益を上げる効率的な方法を発見したと主張している。
Pianoは、ペイウォールやサブスクリプションマネジメントを含む、様々な出版社向けツールを開発している企業だ。一方True[x]は、数年前に21世紀フォックスによって買収されたアドテックの会社である。
Pianoの国際事業開発責任者であるJonas Rideoutは、このコラボレーションによって、出版社たちは様々な読者メンバーに対して様々なメッセージを送ることができると語る。これはPianoが既に取り組んできたことだが、今回True [x]と提携したことで、プレミアムビデオ広告を観ることで(一時的に)ペイウォールを迂回するオプションを読者に提供することができるようになる。
Rideoutによれば、これはPianoの”out-of-the-box segmentation”(簡単分類)機能を利用しているということだ。これは、サイトへの訪問頻度や、訪問元、そして読んだページ数に基いて読者の支持度を計測する仕掛けである。おそらく最も支持度の高い読者(最も受け容れ易い人びと)に、サブスクリプションを提案することの方が合理的だ。
一方では、コンテンツに興味を持つかもしれないが、(少なくとも今はまだ)実際に課金するつもりがない読者の集団もいる。そうした読者には広告を観るオプションが提供されるので、出版社はそこから収益を得ることができる、そして読者がサブスクリプションを選びたくなったときのために、関心を引きつけておくこともできるのだ。
「おそらく読者の1から3%の人がサブスクリプションに移行します。でも(ペイウォールを迂回する手段を提供することで)金の卵を産むガチョウを料理してしまうのではないかと心配になるでしょう」と語るのはTrue[x]の国際事業開発責任者のChris Shivelyだ。「それが今では、その他97%の読者に別の体験を提供することができるのです。大幅に広告収入を高めながら、読者には製品を楽しんで貰うことができるのです」。
Shivelyは、広告収入がどれくらい優れているかを具体的に開示することは拒んだが、普通の表示やビデオ広告に比べると「はるかに高額」であることだけは語った。また彼は「ユーザーに選択肢があることは私たちにとってとても重要です」と語った。広告オプションを選んだとしても、ユーザーはいつでもサブスクリプションに切り替えることもできるのだ。
そしてはっきりしておかなければならないが、こうした広告は無限に続くフリーパスではない。これはいわば計量システムであり、読者が本当に支払いを行わなければならなくなるまでに、何回ペイウォールを迂回できるかを出版社が指定できる。
PianoとTrue[x]は既にこれをAd Ageと共にテストしている。この結果両社はビデオ広告を観ることを要求された訪問者たちは、高い確率で後に登録を行うことを発見しているのだ。広告を視聴した読者たちは、現在のコンバージョンレートに比べて17倍高い値を示した。しかも、オプションを与えられたが実際にはビデオ広告を観なかった読者の場合でも、単に登録オプションだけを提示された読者よりも3倍多い確率で登録が行われたのだ。
Rideoutはまた、Pianoを使う全ての出版社がサブスクリプションを通じてお金を稼ぐわけではないことも指摘した(実際、TechCrunchは非ペイウォールの目的でPianoを使用している出版社だ)。そのため、現在チームは「これが他のユースケースにどのように適用可能か」を議論しているのだという。例えば景品を提供してサインアップを促したり、データの提供を促したりといったケースだ。
「有料のコンテンツサイトだけではなく、その他の種類のコンテンツにもチャンスがあります」と彼は語った。
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(翻訳:sako)