香りの次は味覚、「味が変わるVR」をVAQSOが開発

味が変わるVRを体験する声優の紅音氏

VR体験に香りを加えるデバイス「VAQSO VR」を開発するVAQSOは7月30日、VRコンテンツを制作するORENDAと共同で味覚VR体験を可能とする「フローズンの味が変わるVR」を開発したと発表。

VAQSO VRはVR映像と連動した最大5種類の匂いを感じることのできるデバイス。今回発表された味覚VR体験でもこのVAQSO VRを使用する。

VAQSOいわく、味覚は舌で感じる五味と鼻で感じる風味で構成されるが、味覚の90%を風味が占める。鼻をつまんでキャンディーを舐めると味がわからないのはそのためだ。

フローズンの味が変わるVRでは、五味で作られたベースであるフローズンに、VAQSO VRを使用し風味を加え、味を再構築する。デモを体験したところ、フローズン単体では一体何を口にしているのかわからない不思議な味だったが、VAQSO VRで香りを加えることで、いちご、レモン、メロン、ブルーハワイの味を堪能することができた。想像以上に匂いは強く、体験後もしばらくは匂いが鼻に残っていた。特にいちごは香りが強く、いちごの後にレモンに切り替えたものの、あまりレモンテイストを感じることはできなかった。

VAQSO VRはハイエンドのHMDからスマホ用のVRまで対応するが、当日行われたデモではHTCのVIVE Proが使用された。コントローラーのトリガーを引くと味が変わる仕組みとなっている。味が変わるごとにMR上でのフローズンの色も変わる、など、このORENDAとの連携により開発されたコンテンツのUXはとても工夫されており優れていると感じた。8月3日と4日にはカラオケ ファンタジー 新宿東口店にてこのフローズンの味が変わるVRの店頭体験イベントが実施される。

VAQSO VRは香りにカートリッジを取り付けHMDに装着することで使用する

試作開発がほぼ終了し今年の秋頃から量産が開始される予定のVAQSO VRの技術は、以前にも紹介した、日本航空によるxRを活用したバーチャルツアー体験「JAL xR Traveler」にも採用されている。

この技術の応用に関して、VAQSO CEOの川口健太郎氏は「宇宙関連機関に宇宙食として使われれば」と話した。「砂糖水さえ打ち上げれば、(VAQSO VRを使い)自分の飲みたい様々なフレーバーに変えることができる。宇宙空間で物資を輸送する際のコスト削減に役立つと考えている」(川口氏)

川口氏は、その他にも、アミューズメント施設のアトラクションとしてや飲料、食品メーカーのプロモーションでの利用を想定していると話した。VAQSO VRには15種類ほどの匂いのカートリッジが用意されており、「ゾンビの臭い」などもあるが、そんな味のフローズンは勘弁だ。

匂いVRデバイスのVAQSO、受託制作サービス開始――“女の子の匂いがするVR”も好評

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VRコンテンツに連動して匂いを出すデバイス「VAQSO VR」を手がけるVAQSOは、早稲田大学系のベンチャーキャピタル「ウエルインベストメント」から、総額約60万ドル(6400万円)の資金調達を実施。これに合わせ、法人向け匂いVRコンテンツの受託制作サービスを開始しました。

「VAQSO VR」は、PlayStation VRやHTC Vive、Oculus Riftといった市販のVRヘッドセットにマグネットで固定する、匂いVRデバイスです。サイズはお菓子のスニッカーズ程度。完全ワイヤレスな点も売りで、VRマシンとはBluetooth LEを使って連携します。

匂いが出るタイミングは、VRコンテンツと完全同期。例えば「銃を撃って何秒後に火薬の匂いがを出す」といったことも、開発者が自由にプログラミングできます。プロトタイプ版では1台に3種類の匂いを搭載することが可能。カートリッジは自由に交換でき、匂いを入れ替えることもできます。

VAQSOは、5月上旬に開催されたUnityイベントに「VAQSO VR」を出展。VRアダルトゲームの「VRカノジョ」とコラボした、女の子の匂いのするVRを展示していました。

「ブースはかなり大盛況で、開始1時間で整理券がなくなるという現象が起きたほどでした」と、VAQSO 代表取締役社長の川口健太郎氏は語ります。

左からVAQSO代表取締役社長の川口健太郎氏、ウエルインベストメントの菊池慶輔氏

匂いVRコンテンツを受託制作

VAQSOは、今回の資金調達に合わせ、匂いVRの受託制作サービス「匂いVR制作」を本日(6月22日)開始します。これは、匂いと連動したVRコンテンツの制作を受託するもの。広告代理店やゲーム制作会社、映像制作会社などからの注文を見込みます。例としては、食品メーカーのプロモーションや、災害時救出シミュレーションなどで、匂いで臨場感を増したコンテンツを制作できるといいます。

女の子と手を繋いで散歩するVR、ビッグサイトに展示

東京ビッグサイトで6月28日〜30日に開幕する「先端コンテンツテクノロジー展」。ここでVAQSOは、大手映像制作会社のAOI Pro.と共同で、”彼女と手を繋いで散歩できるVR”を出展。散歩するシチュエーションに応じ、森の中なら「土の匂い」、海なら「磯の香り」といった具合に、嗅覚に訴えかけるVRを体験できるとしています。

また、「VRカノジョ」のイリュージョンとも再度コラボ。VAQSO VRを使った匂いVRのハッカソンを共同開催します。場所は都内で、応募はすでに定員に達しているといいます。

2016年から急速に盛り上がりを見せているVR。VRアミューズメント施設が続々とオープンするなど、2017年に入ってもその熱気が冷める気配はありません。一方で、視覚や聴覚の臨場感はあるものの、触覚や嗅覚面はほぼ手付かずの印象。VAQSO VRの登場で、匂いの臨場感向上にも期待したいところです。

Engadget 日本版からの転載