女子大学生のための「ハッカーハウス」がない、だから自分たちで作る

リモート勤務が長引くにつれ、「ハッカーハウス」が起業家たちの間で復活しつつある。企業創設者たちは、自宅に閉じ込められる現在のスタイルを受け入れられても、20代の女子大学生たちは、大学を卒業してそうしたライフスタイルに飛び込むまでの間、ただ待ってはいられない。

大学2年生のCoco Sack(ココ・サック)氏とKendall Titus(ケンダル・タイタス)氏が立ち上げたWomxn Ignite(ウムエックスエヌ・イグナイト)は、女子またはノンバイナリーの学部学生がコンピューターサイエンスを学ぶための家だ。このアイデアは、サック氏とタイタス氏が、それぞれエール大学とスタンフォード大学のリモート授業に疲れ切ってしまったことから生まれている。退屈なZoom講義をさんざん聞かされた挙げ句に、彼女たちは休学し、もっと生産的な時間の過ごし方を模索し始めた。

「高校でコーディングを学んだ若い女性のためのプログラムはたくさんあります。また、就職の機会を逃した女性のための、企業グループや企業創設者のグループも数多くあります」とタイタス氏。「しかし、20歳から25歳の間の、自分で道を切り開き、声を上げ、自分の立場で踏ん張ろうとするすべての女性のための場所がありませんでした」。

そこで彼女たちは、独自のプログラムをスタートさせた。2人は、カリフォルニアのウェディングリゾート施設を借り、ライフスタイルの冒険を望み1年間の休学ができる女性を募った。40%以上の学生が休学を考えているこの時期だけに、みるみる学生の関心が集まった。参加申し込みは500人を超え、そこから20人だけが選ばれた。

Womxn Igniteは、住み込み式のインキュベーターとして整備された。参加者は興味のある分野ごとにグループ分けされ、それぞれに解決すべき課題が与えられる。

こうすることで、各グループはさまざまなメンターセッションが受けられるようになる。月曜日と火曜日と木曜日には、女性起業家が持ち回りでメンターセッションを行うことになっている。また1週間を通して、Melinda Gates(メリンダ・ゲイツ)氏やBumble(バンブル)のWhitney Wolfe Herd(ホイッニー・ウルフ・ハード)氏といった著名な起業家による講演もちりばめられている。

週の終わりには、各グループは課題、解決策、顧客による検証、製品開発の進捗状況をプレゼンテーションする。

タイタス氏によれば、目標はすべての参加者が会社を興すことではなく、むしろ豊富な人脈を築き、事業を立ち上げる際に役立つ豊かなアイデアを身につけて卒業してもらうことだという。ある参加者は、テック業界で生きる黒人女性を題材にしたテレビ番組の脚本を書いている。また別の参加者は、Womxn Igniteのようなプログラムを、もっと簡単に大規模に実施できる企業を創設しようとしている。

セッションの空き時間は、多くがグループ単位の協調とネットワーク作りにあてられる。テーマを持たせたディナーや、ペアを組んで近所を散策したり一緒に何かを行って、互いをよく知り合うための「プラトニック・デート・ナイト」も催される。週末には、彼女たちは、顔認証に対する倫理的な懸念やナノスケール素材など、各自のニッチなこだわりを語る会に招かれる。

タイタス氏とサック氏は、参加費は5000ドル(約52万円)以上にはならないと話しているが、大半の参加者は匿名の起業家が出資する奨学金を利用している。

コホートの多様性は、経歴にこだわらず女性の力を組織的に高めるコミュニティを作ろうとする際に物をいう。Womxn Igniteでの割合は白人が最も多く、次いで黒人とラテン系、中東系、アジア・インド系がそれに続いている。全員がスタンフォード、エール、ジョージタウン、コロンビア、ハーバード、ダートマス、MITといった一流大学の在学生だ。

参加者たち(画像クレジット:Womxn Ignite)

参加者たちは、多くが大学に戻りたいと考えている。人生の中のいまの時期を踏まえ、デモデーや最初に受け取る小切手などといった古典的なアクセラレーターで聞かれる言葉にはこだわってはいない。反対に、プログラムの修了時、各参加者はこんな誘いを受ける。「今後5年間、年収の1%をシンジケート作りに寄付してくれますか?」と。2人の共同創設者によれば、ほとんどが大学に戻ろうといているわけだが、それでもいまのところ、ほぼ全員がイエスと答えているという。

この資金は、企業を創設したいを女性への投資と、Womxn Ignite卒業生のそれぞれの職種での成長のために使われる。

「その額が増えていくことを期待しています」とタイタス氏。「私たちのような企業創設を目指す女性を応援するために、どのように資金を活かせばよいかをみんなで考えられるよう、共同出資していきます」。

Womxn Ignite参加者のClara Schwab(クララ・シュワブ)氏は、この契約はもっと多くの女性が、若い時期から、男性に支配されているベンチャー投資の世界に参加できるようにするものだと話していた。

「私自身と、その他19人の本当に才能があり頭がよくて意欲があって、全員がテクノロジーに興味を持っている女性が集まって、こんな話ができる環境も状況も、他には知りません」と彼女はいう。

2人の共同創設者は、2月に新しいコホートを迎え、彼女たちのためのデジタルコミュニティー作りに専念する計画だ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Womxn Igniteアントレプレナーシップ学生

画像クレジット:Softulka / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)