民間宇宙産業では、従来の衛星よりもデザインや組み立て、打ち上げがずいぶん簡単な手頃価格かつ軽量の超小型衛星で革命が起こっている。これはWyvernのような新たなビジネスに道を切り開いている。Wyvernは10年前には不可能だっただろう、かなり特殊なサービスを提供しているアルバータ拠点のスタートアップだ。人間の目や従来のレンズでは見られなかった地球の画像データをとらえる手法を用いて、地球低軌道から撮影されるハイパースペクトルの画像に、比較的低コストでアクセスできるサービスを提供している。
CEOのChris Robson氏、CTOのKristen Cote氏、CSOのCallie Lissinna氏、そしてエンジニアリングVPのでCOOのKurtis Broda氏を含むWyvernの創業チームは、アルバータでデザインして作る初の衛星となった「Ex-Alta 1」プロジェクトを含め、授業を通じて衛星をつくった経験を持つ。彼らはまた、クライアントのニーズに応える画像にするための独自の光学技術を開発した。例を挙げると、彼らのまず最初のターゲットは農家だ。農家は商業版にログインして、農地の最新のハイパースペクトル画像データを得ることができるようになる。こうしたハイパースペクトル画像データは、土壌の変化を検出したり(これにより窒素が足りていないことがわかる)、侵入した植物や昆虫を見つけたりするのに役立つ。
「我々は農家の収支に直接かかわるようなことをやっている」とRobson氏はインタビューで答えた。「そうしたものを検出できれば、影響を推測でき、農家はそれにどう対応するか、究極的にはどうやって収支を向上させるか決断を下すことができる。そうしたことの多くは現在マルチスペクトル(画像)なしではできない。たとえば、マルチスペクトルがなければ種分化できず、侵入種を検出することは不可能だ」。
ハイパースペクトル画像と対照的にマルチスペクトル画像は、平均3〜15バンドで光を測定するが、ハイパースペクトル画像は付近にある数百ものバンドに呼応し、これにより衛星から観測するエリアの地上の動物の種類を特定するというかなり専門的なことができる。
ハイパースペクトル画像は、すでにこうした目的での使用では証明されている技術だ。しかし画像をとらえる主な手段はドローン航空機で、これはRobson氏いわく軌道上のCubeSats(小型衛星)より費用がかかり、効率は落ちる。
「ドローン航空機は本当に費用がかかる。現在使用されているドローンの10分の1以下で我々は画像を提供できる」と語った。
Wyvernのビジネスモデルでは衛星の所有・運営にフォーカスする。データへアクセスできるようにし、誰でもアクセスして使える状態にして顧客に提供する。
「我々の差異化を図っている主な点は、実際に行動に移せる情報にアクセスできるようにしているという事実だ」とRobson氏は語った。「これは、もし画像をオーダーしたければ、誰かに電話して見積もりをとるのに1〜3日待つのではなく、Webブラウザでできることを意味する」。
Robson氏は、光学の発達(我々の光学システムは基本的に、物理法則を破ることなく大きな衛星ですべきことを小さなものでできるようにしている、とRobson氏)、小型衛星、データストレージと監視ステーション、そして他のクライアントと一緒の打ち上げに乗っかることで宇宙にアクセスしやすくする民営の打ち上げによりこうしたことが可能になり、しかも手頃な価格になった、と話す。
Wyvernはこのかなり専門的な情報提供のサービスをまずは農業分野のクライアントに提供し、その後、林業や水質監視、環境モニタリング、防衛といった分野に広げる計画だ。これは、Planet Labsのような他の一般的な衛星画像プロバイダーがしようとしていることではない、とRobson氏は語る。というのも、完全に異なる機材やクライアント、需要による異なるビジネスだからだ。ゆくゆくは集めるデータにより広くアクセスできるようオープンにしたいとWyvernは願っている。
「あなたが誰で、どこの政府や国に属し、どこにいようが、地球の健康に関する情報にアクセスする権利を持っている」とRobson氏は話す。「他の人やあなたが地球をどのように扱っているか、あなたの国がどのような行動を取っているかを見る権利を持っている。そしてまた地球に配慮する権利も持っている。なぜなら我々はかなりの略奪者だからだ。我々は最も賢い生き物だ。そして地球の世話役としての責任もある。その一環として、我々の体で何が起こっているのか理解するのと同じように地球で何が起こっているのか、博識をもって行動することができる。それが我々が人々に望むことだ」。
この実現に向かって、Wyvernは今の所まだ初期段階にある。彼らは初の資金調達に取り組んでいる。そして潜在顧客にアプローチしつつ、初のプロダクトの最終検証作業を行っている。しかし、衛星をつくって打ち上げた実績、どういったことをしたいのかはっきりと示された野望からするに、彼らが確かなスタート切ることは確実だろう。
イメージクレジット: NASA
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(翻訳:Mizoguchi)