中国のオープンソソースソフトウェアに投資家が殺到しZillizが約45億円を調達

長年にわたり、中国の企業創設者や投資家はオープンソースソフトウェアにはほとんど興味を示さなかった。収益性の高いビジネスモデルとは思われていなかったからだ。だが、Zilliz(ジリズ)が資金調達した最新のラウンドを見ると、そうした態度に変化が起きていることがわかる。創立3年目になるこの中国のスタートアップは、非構造化データの処理を行うオープンソースソフトウェアを開発しているが、先日、4300万ドル(約45億円)のシリーズBラウンドをクローズした。

今回の投資により、Zillizの現在までの調達額は5300万ドル(約55億円)を超え、オープンソース企業としては、世界的にも大きない規模となる。歴史的に名高いプライベートエクイティーファンドHillhouse Capitalが主導し、Trustbridge Partners、Pavilion Capital、そして以前から投資を行なっている5Y Capital(元Morningside)とYunqi Partnersが参加している。

オープンソースが効率的なソフトウェア開発戦略であることに投資家たちが気づき始め、Zillizを支援するようになったのだと、Zillizの創設者でCEOのCharles Xie(チャールズ・シェイ)氏は、深圳で開かれたオープンソースミートアップにてTechCrunchに話した。このイベントでは、彼はLinux Foundation(リナックス財団)傘下の LF AIの中国人初の取締役会会長として講演を行なっていた。

「投資家たちは、この数年、Elastic(エラスティック)からMongoDB(モンゴディービー)まで、世界のオープンソース企業の好成績なエグジットを成功させています」と彼は語る。

「スターロード(シェイ氏のニックネーム)は、まず私たちに、未来のデジタル時代におけるデータ処理に関する彼のビジョンを話しました。私たちはクレイジーな考えだと感じましたが、信じることにしたのです」と、5Y Capitalのパートナー、Liu Kai(リウ・カイ)氏はいう。

この分野への投資には、1つ注意点がある。最初の3年か5年で利益を期待してはいけないということだ。「しかし、8年から10年のサイクルで見れば、これらの(オープンソース)企業は1000億ドル (10兆円)規模の評価額を得るまでになる」とシェイ氏は考えている。

Oracle(オラクル)でソフトウェアエンジニアとして6年務めた後、シェイ氏は米国を去り、故郷の中国に戻ってZillizを立ち上げた。近ごろの中国人起業家のご多聞に漏れず、シェイ氏はそのスタートアップの社名を英語にして、「創設当初からグローバル」だという信念をそこに刻み込んだ。Zillizは上海で設立されたが、目標は今後12カ月以内に「確固としたテクノロジーと製品」を提供できるようになり、本社をシリコンバレーに移すことだとシェイ氏は語る。中国は、有能なエンジニアの人件費が安く、分子構造から人々の購買行動、音声情報、動画コンテンツに到るまで、非構造化データが爆発的に増加しているという両面において、理想的なスタート地点だった。

「この地域の非構造化データの量は、人口と経済活動のレベルに比例しているため、中国が最大のデータソースである理由が簡単にわかります」とシェイ氏は話す。

同時に中国では、モバイルインターネットとAIの開発が急速に進んでいる。特に実生活での応用が顕著に発達していることから、中国がデータ処理ソフトウェアに最適な実験場なのだとシェイ氏は主張する。

いまのところ、Zillizのオープンソース製品Milvus(ミルバス)は、GitHub(ギットハブ)で4440回以上「スター」付けされ、コントリビューターおよそ120人、世界中の法人ユーザー約400社を惹きつけている。その半数は中国国外のユーザーだ。同社は広告費をまったく使わず、むしろGitHubやReddit(レディット)など、開発者のオンラインコミュニティーで積極的に活動することによりユーザーを獲得してきた。

今後Zillizは、新たな資金を使って海外で人材を集め、オープンソースエコシステムの拡大、クラウドベースの製品とサービスの研究開発を行う予定だ。2021年後半の収益化の開始にともない、いずれこれらが収益を生み出すことになる。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Zillizオープンソース中国

画像クレジット:Zilliz founder and CEO Charles Xie

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(翻訳:金井哲夫)