英国は国防費の大規模な増額を発表した。その額は4年間で165億ポンド(218億ドル、約2兆2770億円)であり、30年間で最大の増加となる。Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相は「一世代に一度の近代化」「後退の時代の終焉」と表現している。
英国の首相は全体的に支出の増加により4万人の雇用が創出されると述べ、英国は欧州で最大の国防支出国であり、NATOでは米国に次ぐ規模の国としての地位を確固たるものにすると付け加えた。
ジョンソン首相は、投資の焦点は戦争を「革命化」することができる最先端技術になると述べ、人工知能とセンサーを搭載したコネクテッドハードウェアが我々の軍事資産を「敵を克服するために設計された1つのネットワークにする」点で重要な役割を果たすことを示唆し、安全保障、防衛、開発、外交政策に関する(現在進行中の)レビューの最初の結論を発表した。
「敵地にいる兵士たちは、センサーや衛星、あるいは無人偵察機によって察知した遠隔地からの奇襲に対する警告を、人工知能を使って瞬時に送信することで、空爆の要請から大量のドローンによる攻撃命令、サイバー兵器で敵を麻痺させるなど最適な対応策を考えたり、さまざまな選択肢を持つことができるようになる」と、ジョンソン首相は米国時間11月19日に開かれた庶民院での講演で述べ、新型コロナウイルスとの接触後も自己隔離を続けていることをビデオ会議で明らかにしている。
「これまでの物流の限界を超えた、新たな進歩が期待される」と彼は続け、軍事技術の向上に投資することの合理性を強調した。「我々の軍艦や戦闘車両は、無尽蔵のレーザーで標的を破壊する指向性エネルギー兵器を搭載するだろう。『弾薬切れ』という言葉は不要になる」。
「各国は戦争における新たなドクトリンをマスターしようと競い合っており、我々の投資は英国を勝者にすることを目的にしている」と彼は付け加えた。
今回の見直しでは、軍事研究開発に少なくとも15億ポンド(約2070億円)、合計58億ポンド(約8000億円)の追加支出が予定されており、ジョンソン首相は「戦争の新しい技術をマスターするように設計された」と述べている。
またジョンソン首相は、人工知能に特化した研究開発センターも新設すると述べている。
英国宇宙司令部も準備中で、2022年にスコットランドから英国初のロケットを打ち上げるなど同国の衛星を軌道に乗せることを目指している。
英国空軍はジョンソン首相が指定した新しい戦闘機システムを手に入れるが、それにはAIとドローン技術が組み込まれる。
彼はまた、英国の情報機関の職員とテロ、組織犯罪、敵対的な外国籍の者を標的とした、サイバー作戦を実行する同国情報機関のメンバーと軍人から成る合同部隊である国家サイバーフォースの存在を認めた。
ジョンソン首相は議員らに対して、「新たな技術への軍事費の増加は、我々の軍隊だけではなく航空宇宙から自動運転車に至るまで広範な民生用途があり、経済発展の新たな展望を開くだろう」と述べており、今回の軍事支出増加が、より社会的技術の進歩に広くつながることを示唆した。
ジョンソン首相の声明を受けて、野党党首である労働党のKeir Starmer(キール・スターマー)氏は、国防と軍隊のための支出増加の発表を歓迎したが、また「戦略のないプレスリリース」を出したと政府を非難、歴代の保守党政権が過去10年間にわたり国防支出を侵食してきたことを指摘した。
「これは戦略のない支出発表だ。政府は、統合的な見直しにおける重要な部分を再び後退させており、政府の戦略的優先事項が明確ではない」とスターマー氏は続け、新型コロナウイルスによるパンデミックの結果として英国が直面している経済危機を考えると、支出の増加分の財源はどうするのか、つまり増税が必要なのか、あるいは国際開発予算など他の分野での公共支出を削減する必要があるのか、と疑問を呈している。
スターマー氏はまた、ロシアに関する報告書(未訳記事)の問題も指摘し、なぜジョンソン政権は、報告書で特定された「緊急」な国家安全保障上のリスクに対処しなかったのかと指摘している。
議会の情報・安全保障委員会による報告書によると、英国にはロシアや他の敵対国がオンラインで偽情報を流し影響力のある作戦を行うことで、民主的な制度や価値観を標的にしていることから生じるサイバー脅威に対応するための首尾一貫した戦略が英国にはないことを明らかにした。
また、ロシアの資金が英国の政党にどれだけ流れ込んでいるのかについても警鐘を鳴らしている。
「首相は、世界的な安全保障上の脅威への取り組み、サイバー能力の向上を口にしている。それは歓迎すべきことであり、我々はこれを歓迎しているが、情報・安全保障委員会が報告書を発表してから4カ月後、ロシアは【略】我々の国家安全保障に対する緊急の脅威をもたらしたと結論づけた」とスターマー氏は指摘した。
これに対してジョンソン首相は、スターマー氏の質問をすべてかわし、彼の批判を「へまをする」と決めつけ、英国の防衛費増額を支持しなかった労働党の元指導者であるJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏の下にいたことをを理由に労働党党首であるスターマー氏を攻撃することを選んだ。
カテゴリー:人工知能・AI
タグ:イギリス、軍事
画像クレジット:Andrew Brookes
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(翻訳:TechCrunch Japan)