編集部記:Anders Lassenは、Crunch Networkのコントリビューターである。彼は、デザイナーと開発者の両方に向けた一連のネイティブアプリのツールを提供するFuseのCEOである。
モバイルアプリが浸透すぎた余り、テクノロジー関連の人の多くがモバイルアプリの製作は簡単で作業工程もシンプルだと思うようになった。しかし、アプリ製作の舞台裏を覗いて見ると、予算超過、増加する不要なコードと遺産、開発期日の遅延を頻繁に起こしている。そしてその悲惨な歴史は度々繰り返されるのだ。
この問題はモバイルアプリ開発において特に顕著だ。現在モバイルアプリは、カスタマーと全ての企業が接する最も利用頻度の高い主要なインターフェイスとなった。同時にそれは、モバイルアプリのステークホルダーが増大していることを意味している。つまり、デザイナー、製作チーム、マーケッター、それぞれの上司、そして最終的に彼らに出資しているカスタマー(あるいはVC)だ。しかし彼らの中で、アプリがコード上でどのように動くかを全般的に理解しているのは、ほんの数人だ。
エンジニアだけがアプリ製作の作業工程を理解しているという意味ではない。アプリの計画段階(コンセプトやデザイン)と実際にコードに落とし込んでアプリを製作すること(開発)とに大きな隔たりがあるということだ。
文化的そして技術的な隔たりは、最終的なコードを実装する開発者とその他のアプリ制作の工程で関わる人全員との間に存在し、見逃せない摩擦を起こしている。言い換えれば、テクノロジーに関連するほとんどの人が問題の一部であるということだ。説明しよう。
コードでは実現できない世界を思い描いている
モバイルアプリのデザインについて話すとき、私たちは大抵、Photoshopや、InVisionやPixateといった強力なビジュアルの製作ツールを用いて描いたアプリの最終形態を思い描く。
しかし、それらのプラットフォーム上のアプリは、それを実現するコードと直接的に結びついているのではなく、理想の高い最終プロダクトを表現しているに過ぎない。アプリが、全て実用的な製品に仕上がるとは限らないのだ。(例えば、アニメーションが重い、ダイナミック過ぎるUIがある場合、見た目は魅力的だが、開発に更に数ヶ月要することになりかねない。)
だが、企業は視覚的に訴求するデザインをアプリ製作のための中核に据えることが頻繁にある。(ウェブベースのデザインを考えてみると、最終的なHTML/CSSコードのプロトタイプをリアルタイムで製作することができる。)
私はこれが起きるのを何回も見てきた。クライアントにデザインを提出すると、彼らはそのビジョンしか見えなくなってしまい、数週間、数ヶ月経って、承認したアプリと実際に製作されたアプリの差を見て愕然とするのだ。
そして、次の議題が持ち上がる。
デザインリソースの配分パラドックス
プロトタイプのデザインはアプリの見た目と機能を規定するもので、カスタマーや開発チームとの重要なコミュニケーションツールである。しかし、それはプロダクト自体ではなく、作業工程(それも高額)の一部に過ぎないのだ。
アプリがコードで実装された時、プロトタイプは価値を失い、そのための開発時間と予算の大部分が最終的には放棄されるものにかかっていたことが分かる。アプリの最終版に組み込まれなかったデザインと機能にかけられたリソースもあるだろう。
プロトタイプと開発の隔たりがあるほど、デザイナーにとってコード上で実装不可能なアニメーション、UIのコンセプト、豊富なメディアコンテンツをアプリに盛り込むのが容易になる。
この場合、デザイナーの時間と労力も全て無駄になり、問題が発覚した場合は、新たなデザインを考え直すことが求められる。それは大抵「最終」のプロトタイプが承認され、開発に手渡した後に発覚するのだ。
実際のデータ抜きで行われるデザインの危険性
プロトタイプを製作中のデザイナーは、最終版のアプリにおけるユーザーのインプットへの理想的な反応を反映する最も近い数値、名称、画像を選ぶ。しかしデザイナーはしばし、ユーザーインプットがいかに幅広いか、率直に言えば混沌としているかを忘れがちだ。そこを見落とすと、アプリの見た目を崩し、全く使えないものにしてしまうだろう。(DropboxのJosh PuckettがMediumにこの問題を明示した記事を投稿している。)
残念ながら、特定データ対デザインの問題は、アプリがベータテストを実施してからしか発覚しない場合が多い。ラッキーな開発者はそこで分かるが、アンラッキー(こちらの場合が多い)な場合、App Storeで開放し、実際のコンシューマーが利用してからしか分からない。いずれにしろ、コストと時間がかかるアップデートが要求され、デザイナーと開発者の両方が作業をやり直す必要が出てくるだろう。
プロトタイプではなく、アプリを作ろう
このような問題を克服するのに、デザイナーがコードを覚えるべきという意見を聞くことがある。Jesse Weaverの意見と同様、私もこれは実用的でも望まれる解決方法でもないと考えている。最も重要なのは、アプリを全体として深く理解することだ。プログラミングの基本から、UIやアート的な要素といった表面の部分、そしてそのアプリが動くことになるそれぞれのプラットフォームの文脈を理解することだ。
これは、アプリ開発が一方通行の作業工程ではないことを理解することでもある。アプリ開発において、アプリをデザインしたら開発者に手渡すというあまりに普及しすぎたアプローチを止めなければならない。必要なのはデザイナーと開発者が協力して、魅力的で胸が高鳴るようなアプリのビジョンを構築するために、アプリ専用の作業工程を確立することが必要だ。そして、描いたビジョンが現実に構築できるものかどうかを一歩計画を進めるごとに確認すべきだろう。
モバイルアプリが企業の重要なプロダクトになるほど、アプローチ自体を成長させることがこれまで以上に重要になってくる。
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