「リアルを超えるオンライン学習」で司法試験合格へ、資格スクエアが新サービス

既存のeラーニングは「リアルの劣化コピー」にすぎない――。こう豪語するのは、開成高校から現役で東大法学部に進学、旧司法試験に一発合格という、数々の難関試験を突破してきた鬼頭政人氏。その後、弁護士から投資ファンドを経て、2013年4月にサイトビジットを創業した鬼頭氏は、自身が手がけるオンライン資格試験予備校「資格スクエア」を通じて「リアルを超えるオンライン学習」を実現しようとしている。

資格取得学校をリプレイス

資格スクエアは司法書士や行政書士、弁理士といった資格試験のオンライン予備校。わかりやすく言えば、TACやLECといった資格取得学校のリプレイスを図るサービスだ。教室にかかる固定費を抑えることで、大手資格学校の60〜80%の金額でオンライン講義を提供する。講師は有名予備校出身者を中心とした約30人。講義の動画は約3500本に上り、毎月100本ペースで増え続けている。

鬼頭氏いわく、これまでのeラーニングは「リアルの講義をオンライン化しているだけ」。レジュメ(テキスト)もせいぜいPDF化されている程度だと、問題点を指摘する。「時間や金銭的にリアルの予備校に行くのが難しい人が、やむなくeラーニングを選んでいる部分もある」(鬼頭氏)。

これに対して、2月12日に開始した新サービス「資格スクエアクラウド」は、資格試験の勉強に必要な要素をすべてオンライン化。あわせて、受講者同士の知恵を共有することで、「リアルを超えるオンライン学習」を実現するという。

合格のカギは「講義」ではなく「独学」

新サービスはまず、国家試験の最難関と言われる司法試験の予備試験コース(学費は19万8000円)で開始する。

オンライン上では動画の右側に、編集可能なレジュメを表示。太字や下線、付箋といった機能が利用できる。重要な論証をドラッグして「マイ単語帳」に追加し、オリジナルの論証集を作れるなど、今まで問題集やノートに書き込んでいたことがオンライン上で完結する仕組みだ。

司法試験に欠かせない条文や判例については、それらを参照するページヘのリンクを用意。レジュメの分からない部分をドラッグして「?」マークをクリックすると、講師に送る質問が自動入力されるなど、オンラインならではの機能が充実している。

「資格試験の勉強でありがちなのは、いろんな問題集の良い所どりをしようとする『切手集め』的手法。王道は良いと思う問題集を選び、付箋を貼ったりノートに書き込み、それを何度も読み返すこと。でも、今まではオンラインでそれを実現するツールがなかった。」

鬼頭氏によれば、司法試験合格に必要な勉強時間は約8000時間。そのうち講義が占めるのは、わずか約800時間にとどまる。こうしたことから鬼頭氏は、「勉強時間の9割を占める独学を効率化することがオンライン学習の役割」と強調する。

独学を効率化する「クラウドスタディ」

鬼頭氏が「さらに独学を効率化する」と言うのが、過去の質問や各受講者の単語帳を共有する「クラウドスタディ機能」だ。

例えば、各受講者が作った単語帳は誰でも閲覧できるようになっていて、自分の参考になりそうな論証は「マイ単語帳」に追加できる。各受講者の単語帳は「マイ単語帳」に追加された件数が表示されるため、“使える”単語帳がひと目で分かる。「周りの受験生の知恵をいかに借りるかが、リアルを超えるオンライン学習」(鬼頭氏)。

今後は、マルバツ問題で単にマルかバツの選択肢を出すのではなく、「もちろんマル」「たぶんマル」「たぶんバツ」「もちろんバツ」という4択を提示。マルバツ問題に「自信の有無の要素」を加えることで、従来は間違った問題しか復習しなかったのが、自信がなくて正解した問題も復習するようになるという。


投稿者:

TechCrunch Japan

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