2014年4月にリリースされた、遊休スペースをシェアできるプラットフォーム「スペースマーケット」。お寺や古民家、映画館や個人の住宅まで多様なスペースをレンタルし、会議や撮影、イベントなどに利用できるというユニークなサービスだ。
現在取り扱いスペースは1万2000件を超え、月間で数千件のイベントを生み出すプラットフォームになったスペースマーケット。同サービスではさらなる満足度向上を図るため、10月24日より「ポイント機能」と「直前割引サービス」をスタートした。
リピート利用が前年比で360%増加、継続者増やす新機能リリース
スペースマーケットのユーザー数は対前年比で約300%増加しているが、なかでも順調に伸びているのがリピートユーザーだ。会議や撮影などの法人利用に加えパーティーなどの個人利用も増え、リピート利用が対前年比で約360%増加しているという(3ヶ月以内に2回以上利用したユーザー数)。
リピーターが多いのは会議利用のほか、開発合宿や経営会議など社外で行うオフサイトミーティング、プロモーション素材の撮影、フリーランスのセミナーなど。スペースマーケット企画ディレクション室の堀田遼人氏によると、用途や活用する企業の幅も広がってきているそうだ。
「オフサイトミーティングではこれまでベンチャー企業の利用が多かったが、最近では大企業の利用も増えている。ミーティングをした後でそのままバーベキューをするなど、1日合宿で使えるスペースが人気だ。また専用の撮影スタジオの代わりにスペースマーケットに登録された住宅をレンタルして、動画・写真撮影を行う事例も増えてきている」(堀田氏)
今後さらに継続利用を増やす目的で、スペースマーケットでは新たにポイント機能と直前割引サービスを始める。ポイント機能はスペース利用額の3%がすべてのゲストに付与され、1ポイント1円換算で利用できる仕組み。直前割引は利用日の直前5日間に予約した場合に割引が適用されるというものだ(割引率はスペースごとに異なるが、10%以上になるという)。
スペースマーケットでは以前から一部のスペースを対象に、ホストの承認なしに即時予約できる「今すぐ予約」機能を提供。多くの反響があり利用数の増加に繋がったこともあり、直前割引サービスの開始に至ったという。
また法人利用を増やすべく11月からは法人専用アカウントもリリースする。後払いやコーポレートカードによる決済に対応し経費精算の負担を削減するほか、法人ごとに社員の予約を一元管理できることで使いやすさの向上を図る。
蓄積した資産も活用しながら、法人顧客数の拡大へ
機能追加に加え、スペースマーケットでは蓄積してきた資産を活用した企業のマーケティング支援事業「Memorable Moment Creations」や、空きスペースの再生プロデュース事業も始めている。
「企業が一方的に価値観を発信するのではなく、ユーザーと一緒にストーリーを作っていく『共創』が今のマーケティングのトレンド。スペースマーケットでは記憶に残るスペースに加え、これまで蓄積してきたイベントのナレッジを活用してイベントのサポートを行っていく」(スペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏)
どこで、いつ、どんなイベントが開催されるのか。スペースマーケットにはイベント開催者が気になるデータが蓄積されてきた。たとえばハロウィンなどプライベートのパーティー会場として活用される事例も増えてきているそうで、トレンドを踏まえて企業のマーケティング支援をできるのが強みだという。
空きスペースの再生プロデュース事業についても、不動産は保有しているがどのように運用するのがいいかわからないオーナーのスペース再生をサポートするというもの。これまでも「fika」というブランドで自社プロデュースのスペースを提供していたが、それを本格化する形でスペースの企画から運用までを行う。第一弾として大手不動産投資会社と提携し、池袋の地下空間をリノベーションしたFICTION池袋を10月にオープンしている。
引き続きスペースマーケットでは個人・法人双方に向けた施策を行っていく方針だが、特に重要視する指標のひとつとして、重松氏は「法人の会員数や顧客数」をあげる。プラットフォームの改善をしながら、イベントやスペースのマーケティング、プロデュースといった事業を強化し、法人顧客の拡大を目指していくという。
「このサービスを運営していると、働き方や遊び方の価値観が急速に変わってきていることを実感する。3年前だと少し早かった動きがちょうど普及してきたタイミング。自社でも事例を積極的に発信しながら、働き方や時間の使い方に関する価値観の変遷も伝えていきたい」(重松氏)
スペースマーケットでは2017年6月に成立した民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づき、宿泊事業に本格参入することも9月に発表している。民泊事業も含め、今後の同社の動向が気になるところだ。