「接客こそが強みだった」ネット不動産の実現に向けiettyが2億円の資金調達

ietty代表取締役の小川泰平氏(右)とマスコットキャラのイエッティー君(左)

ietty代表取締役の小川泰平氏(右)とマスコットキャラのイエッティー君(左)

自分の住みたい部屋の条件を登録すれば、最適な部屋をプッシュしてくれる——お部屋“探され”サイトをうたってきたiettyがインベスターズクラウド、三生キャピタル、電通デジタル・ホールディングス、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタルを引受先とした総額約2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

ちょうど1年前、2014年10月にYJキャピタルとインキュベイトファンドから約2億円の資金を調達したietty。代表取締役の小川泰平氏は、「やっとゼロイチ(ゼロからイチ、つまり立ち上げの意味だ)のフェーズが終わった」と語る。売上高では今期は1億円以上という数字が見えているほか、来期で数億円の売上高も見込める状況だという。

個人をターゲットにしたプラットフォームである「ietty」を足がかりにサービスを拡大。法人向けの「ietty BIZ」はすでに170社が契約、今年スタートした仲介手数料無料のオフィス移転サービス「ietty OFFICE」も好調だという。

コアコンピタンスは「物件紹介」でなく「ネット接客」

「サービスを提供しているうちに分かってきたのは、iettyのコアコンピタンスは『ウェブで物件を紹介する』ということでなく、『ネットで接客をやっている』だったということだ」——物件を紹介するというのは賃貸広告の市場、つまりはリクルートグループの「SUUMO」やネクストの「HOME’S」といった巨人と戦わなければいけない市場だ。だが小川氏は「不動産はレガシーな市場だが、広告だけはネットになっている。そんな市場にスタートアップが竹槍一本で突っ込んでも仕方ない。しかも市場は500億円程度と小さい」と語る。そこで彼らは2500億円とも言われる賃貸の仲介市場を狙うのだという。

ここはまだネット化されていない領域。その背景には法制度の問題がある。現状賃貸契約をする際には、契約者は不動産会社から対面での重要事項説明を受け、書面にサインしなければならないということがある。

だが新日本経済連盟(新経連)では不動産契約のネット化を推進しているし、国土交通省も「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」の中で、不動産ネット取引の解禁に向けた最長2年の社会実験を実施している(iettyもその採択企業約200社の1社だという)。「広告はネットでも、店頭業務はすべてオフライン。そのオンライン化はあり得る。この市場には誰もネットでチャレンジしていない」(小川氏)

AIを活用した物件の提案も

同社は今後不動産ネット取引の解禁も視野に入れてサービスを強化していく。すでにiettyではAI(人工知能)を使った物件の紹介も試験的に開始しているそうで、今後はそのシステム強化を進めるほか、営業やマーケティングの体制強化を進めるとしている。

スタートアップの取材をすると「猫も杓子もAI」という状況なので、小川氏にもう少し詳しく聞いたのだけれども、現状はあくまでユーザーの望む条件に対して、マッチする物件を自動で提案するという程度のモノなのだそう。

ただし将来的にはユーザーの行動(例えば提案した物件に「興味を持った」「持たなかった」を評してくれるボタンはユーザーの6割が押しているそうだ。こういった行動)を学習し、ユーザーのプロファイルなどを作るといったことも考えているのだそう。

「例えばSpotifyはユーザーの好みをもとに、思いもしないが気持ちいい音楽を教えてくれる。そんなように思いもしなかったが居心地のいい物件の提案だってできるかも知れない」(小川氏)

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。