「AIが世界の不平等を悪化させる可能性」と世界経済フォーラムが警鐘

テックと政治のリーダーは今日、人工知能(AI)が世界中で巨大な不平等を悪化させる可能性があるとして、警鐘を鳴らした。世界経済フォーラム(WEF)の警鐘というのは、AIは世界の最も緊迫した問題(気候変動など)のいくつかを解決する大きな可能性を持っているとみられているが、もし一部の機関や国がAIシステムを活用し、そのほかの機関や国がそうしなかったら、しばらくレースを展開したのちにそうした機関や国の間で不平等が広がり、地球にとって予期せぬ事態を引き起こしかねない、ということだ。

スイス・ダボスでのWEFで、Marc BenioffSalesforceの最高経営責任者)とKai-Fu Lee(中国のベンチャーキャピタリストでAIの専門家)が登壇し、“第4次産業革命のためのセンター”のネットワークをコロンビアと他の新興国へと拡大するための新たなWEFのイニシアチブを支持した。コロンビアの他はイスラエルとUAEとなる見込みで、それとは別の数カ国の追加も予定されている。

第4次産業革命センター(C4IR)は、“グローバルでマルチステークホルダーの企業がポリシーの枠組みや、科学とテクノロジーの恩恵を加速させる高度なコラボレーションを発展させるため”のハブとしてWEFがつくった。中でも高度なテクノロジーをいかに早く、そして平等に世界に広めるかに重きを置いている。

高度テックの浸透に伴う問題の一つが、新たなテクノロジーを監理する政府のポリシーが信じられないほど“まだら模様”となりえることだ。あるエリアではかなり法規制があり、別のエリアではまったく規制がない、といいうふうに。

企業や経済に急激な変化をもたらしうるAIの浸透に関しては、最終的に不平等を招くことが区域の“武器化”のようなものになるかもしれない、とWEFは指摘する。

Benioff自身、サンフランシスコにC4IRをつくることを支持し、今ではテクノロジー分野における多くの素晴らしい発展を支えるところになっている。しかし彼はまた、テクノロジーの恩恵を受けてきた人と、完全に乗り遅れた人との間に横たわる大きな不平等に街が直面していることに、鋭くも気づいていた。今年のWEF開催期間中、彼はサンフランシスコのことをシリコンバレーによる不平等の“大惨事”と表現した。

「第4次産業革命、これは歴史上まれに見るものだ。第4次産業革命は、新たな仕事の創出や、病気を治し苦しみから救うための新たな方法を約束してくれる。その一方で、経済や人種、ジェンダー、そして環境の不平等すらも悪化させるリスクがある。これはAIに伴い起こり得る。新たなテックがAIへのアクセスを持っている人と持っていない人を分けるというリスクを我々は負っている。AIは新たな人権となると私は強く確信している。万人が、そして万国がこの新たな必須テクノロジーへアクセスできるようになる必要がある」と彼は語った。

そして彼は続けた。「今日では、いくつかの国や企業だけが世界で最も優れたAIにアクセスできる。アクセスできる人だけがより賢く、より健康に、そして当然より金持ちになり、彼らの争いは明らかによりエスカレートする。だからこそいま、特に平等について疑問を投げかけるのが重要だ。こうしたテクノロジーをみなが使えるようにするために、我々はどんな取り組みをしているだろうか。AIへのアクセスを持たない人は教育が十分に受けられず、また弱く貧しい存在になり、病気がちになる。だから我々は自身に問いかけねばならない。それが住みたい世界なのだろうか、と」。

それから彼は、サンフランシスコの明らかな不平等を引き合いに出しながら続けた。「我々はまた、データとプライバシーの誤使用について、大きな信用危機を抱えている」。

「業界の信用危機真っ只中にある。“テックラッシュ”がこれほど大きなものであることはこれまでなかった。我々は(サンフランシスコで)槍の先端にいて、(テックを学ぶために)素晴らしい場所にいる。我々は将来少し成長する」。

WEFのC4IRネットワークは、いかに企業や政府がAIのようなハイテクを社会や経済に適用するかを解決するのをサポートする、と彼は考えている。

Benioffは「テクノロジーそのものはいいものでも悪いものでもない。しかし我々がそれを使って何をするかが問題だ。私たちは、地球が危機に瀕しているのを目の当たりにしている。WEFによると、2050年までには海には魚よりもプラスチックが多くなるという。こうした問題の全ては、“第4次産業革命テクノロジー”で解決できるだろう」と語り、コロンビアに新たなセンターを立ち上げるWEFを賞賛した。

WEFのグローバルAI協議会の座長を務めるKai-Fu Lee博士はこう語った。「さまざまなコンサル会社が、AIは今後11年間で13〜17兆ドルのGDP増を生み出せる、と予測している。どの国でもいまAIプランを作成中だ」。しかし彼はこうも話した。AIは雇用、プライバシー、セキュリティに重大な影響を及ぼす、と。「多くの観点を検討するセンターになることを願っている。国や地域によってAIに対する態度やビジョンが異なるということは認めざるを得ない。そして、共に取り組む方法を見つけ出さなければならない。単純な包括的アプローチではうまくいかないだろう。WEFの特有のアドバンテージは、包括性から生まれたもの、ということだ。西洋、または東洋の価値観を世界全体に押し付けるために我々は今日ここに集ったわけではない」。彼はまた各国が手を携えてAIに取り組むことで、世界的なAIのアプリケーションに向けたより優れたアプローチを作り出せるはずだ、とも語った。

Leeにとって、AIレースは「あまりにはやく展開されていて、多くの人が誤解している。国と国の間で緊張を高めている」。だからこそ、“透明な議論”が必要なのだ。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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