【スタートアップバトルへの道】「緊張で震えが止まらなかった」2018 Winner / ムスカ #1

通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

連載のラストに登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した、ムスカ代表取締役CEOの流郷綾乃氏だ。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、応募までのいきさつや登壇時、受賞時の感想などについて話を聞いた。

審査に残れるか分からないがチャレンジ

ムスカは、1200世代の交配を経て生みだされたイエバエのエリートを使って、通常よりも早い速度で有機廃棄物を分解して肥料と飼料をつくり出す、2016年12月に設立されたリアルテックのスタートアップだ。ネットサービスが中心の歴代スタートアップバトル出場者の中では異色の存在と言えるだろう。

「それまでTC Tokyoに登壇していたスタートアップには、ムスカのような会社はなかったので『応募していいのかな』と思っていた」と流郷氏は笑う。

20187月に取材を受けたので『応募するぐらいならいいんじゃないか』と思い、審査に残れるか分からないけれどもチャレンジしてみるか、と申し込んだ。まさか最優秀賞を取れるとは思わなかった」(流郷氏)

ムスカ代表取締役CEO 流郷綾乃氏

決勝登壇10分前にスライドを変更

ハエのちからで世界の食糧危機を解決しよう、というムスカの事業は「そもそも分かりにくい」と流郷氏。このためプレゼン準備では「この事業が何を解決するものかを伝え、ハエにまつわるネガティブなイメージを再定義するために、伝え方やスライドの内容、話し方を工夫した」と語っている。

初日の3分間のプレゼンでは、万全に準備をしてきた資料で臨んだ流郷氏。ところが決勝ではなんと「登壇10分前にスライドを変えた」と言う。「スライドには最初、私が普段は話さないような内容も入れていた。そこで私自身の言葉で話すことができる内容に、直前で変えることにした」(流郷氏)

その結果、最優秀賞を勝ち取ることができた流郷氏だが、直前の内容変更には大きな逡巡があった。「自分の言葉で話さないと(聴衆の)1000人に呑み込まれそうだったので、納得の行く言葉に変えた。でもスライドは自分だけではなく、メンバーが試行錯誤して作ったもの。差し替えたスライドのせいで負けたということになったら、どうしようと思っていた。串間(ムスカ創業者で現・取締役会長の串間充崇氏)も後押ししてくれたので、急遽変更することに決断した」(流郷氏)

そうして最後には「スタートアップのよくあるプレゼンの順とは違う、悔いのない言葉に変えた」流郷氏。だが、葛藤のせいもあって舞台袖では「すごく緊張して、人間ってこんなに思っていることと関係なく震えることができるんだ、と感心するぐらい、震えが止まらなかった」という。

「串間さんが舞台袖に来て、応援してくれた。大丈夫、というその一言とともに励ましてくれて、一緒に屈伸もしてくれた(笑)。それにイベントスタッフでワイヤレスのピンマイクを付けてくれる女性が緊張を解くように話しかけてくれて、とても助けられた。舞台袖は暗くて、頼るところがない気持ちの中で、最後には抱きついたほど、ありがたかった」(流郷氏)

優勝できるとは思っていなかった

審査結果が発表されていく中で、先にスポンサー賞のPR TIMES賞入賞が発表されたムスカ。設立時に広報責任者として参画し、その後暫定CEO(当時)となっていた流郷氏にとっては、「伝えることのプロとしての役割は全うできた」と、それでもう十分に満足だったようだ。

最後に最優秀賞が発表されたときには「TechCrunchで、アグリテックやバイオテックが優勝できるとは思っていなかったので、月並みな言葉だけれどすごく驚いた」と流郷氏は振り返る。同時に「自分の言葉で伝えてよかった」とホッとしたそうだ。

 

インタビュー後半では、登壇後の変化や今後の展望などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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投稿者:

TechCrunch Japan

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