土曜日に少々長めの散歩をした。パンデミックの間に、屋内で長時間過ごした後の気分転換に散歩するのが習慣となった。今までなら地下鉄に乗ってしまって見逃していた町の様子を歩きながらみる。この土曜日の散歩は、ぶらぶら歩きというよりは行き先が決まっていて、ハリケーンヘンリーが東海岸を直撃する前にと思い、新しくオープンしたTrader Joe’sに向かった。
散歩の途中に降ってきた雨を避けるため、ロングアイランドシティーでフードコートを見つけて入り、シャワルマを注文し、ポケットからGalaxy Z Flipを取り出す。電話を開き、新しいGalaxy Budsを耳に装着し、MLB.TV アプリで、野球観戦をした。こんなとき、Flipは本当に役に立つ。ランドスケープモードで135度に開くと、6.7インチのスクリーンを立てた状態で見ることができる。試合が終了したので(ネタバレだが、試合結果はよくなかった)、携帯を閉じてポケットに入れ、また歩き出す。
携帯電話が常に目新しいテクノロジーを備えているとは限らないが、幸運な場合には、自分の感性に応えてくれる電話に会えることもある。最初のFlipが登場した時には、随分前に廃れたクラムシェル型携帯電話について人々はたくさんのジョークを言い合った。もちろん、そうした風潮がすぐに消え去ることはなかったが、最初のFlipは、多くの人に、折りたたみ式携帯電話に注力するというSamsungの方向性は正しいという印象を抱かせた。
最初のGalaxy Foldにまつわる初期の欠陥(他の記事でそれらをすでに取り上げた)はさておき、このデバイスも扱いやすくはない。折りたたみ式スクリーンが、折りたたみ式でなくては不可能な大きさのスクリーンを持ち歩くことを可能にしてくれるのは事実だが、しかし閉じた状態のデバイスはかさばり、それを開く機会は容易には訪れない。Flipは、スクリーンのサイズと携帯性の違いをうまく切り分けている。ディスプレイサイズの観点で言えば、Flipは事実上2つにおりたためポケットにすっぽりおさまるGalaxy Noteといったところだ。
Samsungの折りたたみ式で話題の中心となっているのはGalaxy Z Foldで、この話題の発信元はSamsung自身だ。同社は、Foldを最近の主力製品と位置づけるために多くのことをしてきた。これにはNoteのラインナップを増強する、または置き換えるなどといったことも含まれる。Fold 3にS Pen機能が追加されていることで境界線が曖昧になっているが、Samsungの既存の主力製品と、同社が思い描く今後の折りたたみ式製品との橋渡し役としてはFlipの方があきらかに適役である。
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折りたたみ式製品を主力にすることは、なかなか難しい提案である。発売した途端に、Samsungは生産の問題とともに2000ドル(約22万円)という価格設定で否定的な報道に見舞われた。この価格は、基本的に丁重に扱わなければならない製品としては高額だ。毎日の生活に必要な製品を当たり前に使用していて誤って壊してしまわないかと心配するのはいただけない。Flipは初期の折りたたみ式製品の失敗から学び、より頑丈なデザインと耐水性を備えたものになった。
しかしながら、より重要なのは、おそらく価格設定だろう。Galaxy Z FlipはSamsungの折りたたみ式製品としては初の1000ドル(約11万円)を下回る製品である。ほんのわずかではあるが、確かに1000ドルを下回っており、これはSamsungやAppleのような高価な携帯電話と似たような価格かもしれないが、折りたたみ式製品としては本当に大きな勝利と言える。最初の数世代の折りたたみ式携帯は、程度の差こそされ、いずれも目新しさだけで生き残ってきた。
市場に投入される折りたたみ式デバイスが増えるにつれ、目新しさよりも機能が重視されるようになってきている。しかし人気の高まりは、裾野の拡大をも意味するわけで、その結果、価格は下がっている。ここへきて初めて、 Samsungの折りたたみ式携帯を1台買おうとするなら、電話2台分の支払いをしなければならない、というわけではなくなった。これはGalaxy Foldの価格が前の世代の製品より200ドル(約2万2000円)下がったことよりも、ずっと大きな意味合いがある。
同社は次のように発表している。「Galaxy ZFold3とGalaxyZ Flip3の予約注文を発表してからわずか10日で、2021年全体でのSamsungの折りたたみ式携帯の全世界の売上をすでに上回り、またこれまでのSamsungの折りたたみ式携帯の予約注文の中で最大の売上を記録しました」。これには、低価格であること、デザインが堅牢になっていること、Noteの新機種が発表されていないこと、顧客に向けて予約注文を熱心に宣伝したことなど、さまざまな要因が関わっているとは思うが、少なくともこのシリーズが正しい方向に向かっているということはできるだろう。
予想通り、同社の数字は、FoldとFlipの売上を分けて示したものではない。確かに、 Foldには多くの機能が備わり、7.6インチスクリーンは長編映画を見るなら6.7インチスクリーンよりよいだろう。しかし、ほとんどの人にとってほとんどの場合に望ましい製品はGalaxy Flipだろう。筆者は、Samsung Galaxy Z Flipは折りたたみ式携帯市場において最も主流の製品だと断言できる。
折りたたみ式の重要性をさほど感じていないなら、当然のことながらこうした言葉もそれほど心に響かないだろう。しかし、モバイルの未来の鍵となるものに飛びつきたいと考えている人の大部分にとっては、Flipこそ、明確なチョイスだ。過去の遺物としてクラムシェルデザインをからかうのは簡単だが、そもそも電話がそのようになデザインになったのには理由があるのだ。クラムシェル型の電話が消え去っていった大きな理由の1つは、今までスマートフォンが折りたたみ式ではなかったせいだろう。
Samsungのデザインは的を得たものだ。The Flip 3は今のところ、同社の最も見栄えのよい折りたたみ式製品で、デュアルカラーのシェルは印象的だ。Samsungが筆者に送ってきたクリーム色のものは特に好みというわけでもなかったがグリーン、ラベンダー、 またプレーンブラック、ホワイトでさえとてもすばらしい。これらのカラーは、外部ディスプレイが設置されている部分の黒とよくマッチしている。この部分は1.1インチから1.9インチに増えた。わずかな違いに聞こえるかもしれないが、このサイズのスクリーンではなかなかの増加と言えるだろう。
もちろん、Foldで得られるような完全な外部スクリーン機能はFlipにはない。Flipのディスプレイは通知をさっと見たいときの二次的スクリーンにはなる。それを取り出せば、時間、日付、バッテリーの残存量を見ることができ、右にスワイプすると、通知を見ることができるようになっている。
左にスワイプすると、アラームやタイマー、また天気、メディアの再生(事実上オーディオの再生 / 一時停止)、Samsung Health Metricsといったウィジェットをスクリーンに追加するオプションも表示される。このリストは今は短いが、多くの人がFlipを使用するようになれば、もっと長くなるだろう。下にスワイプすると、簡単な設定をすることができ、上にスワイプするとSamsung Pauseが表示される。
多くの人が電話の使用を控えようと努力している昨今、画面を2つに折りたためるのはありがたいことだ。これは、Foldの7.6インチスクリーンを分割して6.2インチにする形態よりもメリハリのある境界線になる。つまり電話が閉じている時は、通知を確認している時であり、電話が開いている時はなにかの作業をしている時だ。Flipなら電話を開く時もずっと簡単である。片手で開ける技はまだ身につけていないが、事実上本を開くようなかたちになっているFoldよりも、急いで開くにはずっと適している。スピードということでこの形状が最も問題になるのは、写真をさっと撮る方法がないことだ。
写真を撮るには時間がかかり、電話をあけて内部のビューファインダーを見る必要がある。ただし、電源ボタンを二度押しすることで、小さなビューファインダーを兼ねている小さな正面スクリーンでセルフィーを撮ることはできる。左にスワイプすると静止画の切り替え、上下にスワイプすることでズームレベルを変えることができる。やや不格好で優雅さに欠けるが、12メガピクセルのカメラのペア(広角と超広角)を使用すると、ほとんどのピンホールカメラ(Flipの10メガピクセルレンズを含む)よりもはるかに優れたセルフィーを撮ることができる。
Foldと同じで、リアカメラ(見方によってはこれらも正面カメラといえる)はFlip 2以来、概ね変わっていない。2021年の今、デュアルカメラシステムは時代遅れと感じられるほどだが、Samsungが長年かけて培ったカメラソフトウェア技術と合わせ、ほとんどの目的に適った機能を持っている。22:9のアスペクト比であることから、画面の4分の1以上が制御のために割かれるのはやむを得ない。
このアスペクト比はコメントに値する。この比率だと、開いた時、大変長い。GmailやTwitterをスクロールするような場合、たくさんの件数が表示される。しかしビデオを見る時には、スクリーンの周囲のピラーボックスやレターボックスが見えてしまうことが多いだろう。ビデオ界は22:9のアスペクト比に対応できていないし、おそらく今後も対応することはないだろう。
そして当然ながら、継ぎ目がある。それも素敵な2640×1080、425ppi画面の真ん中にである。折りたたみ式の技術に予期せぬブレークスルーが起きない限り、はっきり言ってこの継ぎ目がすぐにも消えることはないだろう。これは売上の妨げになる可能性もあるが、これらのデバイスをしばらく使うと、概ね慣れてしまう。
Foldと同様、FlipはSnapdragon888プロセッサで動作している。予想できることだが、コストが低いことと、RAMおよびストレージの容量が低いことは連動しており、Foldの12および256GBに対し、Flipでは8および128GBとなっている。余計に150ドル(約1万6500円)払うと、ストレージを256GBにアップグレードすることができる。Samsung はほとんど内部を切り詰めてはいないものの、3300 mAhバッテリーは十分とは言えない。
Foldでもバッテリー寿命は問題だが、Flipではより大きな問題であり、実際のところ、Flip最大の問題である。中程度から頻繁な使用では、1日が終わる前に再度充電する必要がある。パンデミックの現在、これは大きな問題ではないかもしれないが、世界が通常運転に戻るにつれ、検討すべき問題になるだろう。充電のできない長時間のフライトなどは問題外である。
繰り返しになるが、筆者は残念ながらこれが売上の障害になると思う。1000ドルも支払うなら、一日バッテリーの心配をせずに使用できる電話が欲しいのは当然だ。これについては、Samsungが第4世代で焦点を当てるべき課題であることは明確だ。
現状では、Galaxy Z Flip 3には強力なアルミニウムフレーム、改良されたスクリーンプロテクター、IPX8防水(Foldレビューで概説されている理由により、防塵等級なし)など、前世代から引き継がれた強みが備わっている。この携帯電話は完璧とは言えないかもしれないが、1000ドル未満であり、Samsungの折りたたみ式携帯電話が3世代でどれだけ進化したかを示す強力な製品となっている。
SamsungがFoldを折りたたみ式携帯の主力としているために、Flipは2番手的な位置付けになっている。しかし、折りたたみ式携帯の世界に入っていこうと考えているほとんどの人にとっては、Flipがより気楽に手に取ることのできるチョイスだろう。
画像クレジット:Brian Heater
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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)