【レビュー】Kindle Paperwhiteシグニチャーエディション、充実した読書のためのすてきな機能を追加

筆者はiPhoneをワイヤレス充電器から外し、新しいKindleを載せた。正直なところ、こんな一文を書くことになるとは思っていなかった。心が躍らないことはわかっているし、2021年時点では間違いなくそうだ。だが、冷静に考えてみれば、電子書籍リーダーのイノベーションのペースは、他の業界に比べるとまさに氷河の動きなのだ。


理由の1つは、競争相手が減少していることだ。Sony(ソニー)のようなかつての大企業はとうの昔に撤退し、Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)は表向きにはまだNook(ヌーク)事業を続けているが、かつての栄光の日々はとっくに終わっている。ビッグプレイヤーといえば、まだ健在のKobo(コボ)と、そしてもちろんAmazon(アマゾン)だ。

現実的に考えて、米国での規模と存在感という点ではAmazonに軍配が上がる。他の分野でもいえることだが、この巨大小売企業がこの分野を支配している。出版業界での圧倒的な存在感と、同社のホームページに持つ世界有数の、オンラインの広告塔が寄与している。そして見逃せないのは、同社が総じて優れた電子書籍端末を製造しているという事実だ。

この分野で競争が少ないということは、メーカー同士の激しい競争は二度と起こらないということでもある。つまり、スマートフォンのような競争、あるいは10年前のような競争は起こらないと思われる。

だからこそ、新しいKindleが登場すると、純粋にワクワクする。このカテゴリーにはまだ生命力があるように感じられる。Kindleは、EchoやFire TVの陰に回って久しいが、良い年には1年に1台のペースで新しいKindleが発表される。

2021年9月末に発表された新しいPaperwhiteは、ハイエンドのOasisとの違いを曖昧にするいくつかの機能、そしていくつかの純粋な驚きをもたらした。その中でも、ワイヤレス充電とUSB-Cは、後者のカテゴリーだ(ただし、いずれも「シグニチャーエディションのみで利用可能な機能。同モデルはスタンダードモデルより50ドル[日本では5000円]高い)。これまで何世代にもわたってmicroUSBを採用してきたこのデバイスの底部に、新たなポートが搭載されているのは、正直なところ、単純に不思議な感じだ。

USB-Cの採用により、充電時間が短縮され、約2.5時間(ワイヤレスの場合は約3.5時間)で本体を充電できる。とはいえ、筆者にとっての最大のメリットは、旅先で持ち歩くケーブルが1本減ることだ。Kindleは、私が普段使っている中で、microUSBを使う最後のデバイスの1つだった。もちろん、バッテリー駆動時間を考えると、その点はもう意味を持たない。新しいPaperwhiteは現在、10週間のバッテリー駆動が可能とされているからだ(ワイヤレスをオフにし、1日30分の読書をした場合)。

従来の6週間からさらに長くなったわけだが、ガジェット用のバッテリーとしては、6週間でも非常に良い。数日や数時間ではなく、数週間使える数少ない消費者向けデバイスの1つだ。このことは、一般的な、ある奇妙な点に光を当てる。こうしたデバイスでアップデートされる機能の多くが、バッテリーと充電に集中しているという事実だ。確かに、Bluetoothオーディオを使ったオーディオブックなどは、通常の読書よりもバッテリーに負担がかかる。

新しいPaperwhiteは、一見すると前世代とほぼ同じように見える。Oasisと同様、平らになったベゼル(ディスプレイを囲む縁の部分)とディスプレイが、すでに強固な躯体に加わる。しかし、250ドル(日本では8GB広告付きで税込2万9980円)のOasisのような高級感はない。Oasisには背面が金属製で物理的なページボタンがついているが、Paperwhiteにはそのような贅沢な部品はない。

興味深いことに、スクリーンに大きな違いはない。どちらも解像度は300ppi(前世代と同じ)で、標準的なKindleの167を大幅に上回った。サイズは6.6インチから新モデルの6.8インチへとわずかに大きくなった。Oasisの7インチよりわずかに小さい。また、両モデルともにIPX8規格の防水機能を備え、プールやバスタブなど水のあるところで読書をしたい人にはうれしい仕様となっている。

フロントライトは、Paperwhiteの17個に対してOasisは25個と、Oasisが勝っている(Paperwhiteの方が画面が小さいということはある)。ライトは均一で、暗いところで読むときにもいい仕事をしてくれる。システムは、2019年のOasisで導入された色調調節機能を備える。睡眠パターンに悪影響を及ぼす可能性のある青い光をスケジュールに沿って減らすものだ。明るさを調整するアンビエントライトセンサーは、シグニチャー・エディションにのみ搭載されている。

搭載されているストレージも標準版のPaperwhiteとシグニチャーエディションの大きな違いで、前者の8GBに対し、後者は32GBと大きい。ワイヤレス充電は、ほとんどの人が電子書籍リーダーを使用する際には不要なものであり、140ドル(日本では1万4980円)と190ドル(日本では1万9980円)の価格差を正当化するほどのものではないと思う。30ドル(日本では3480円)のワイヤレス充電スタンドが別売りであることを考えれば、なおさらだ(筆者のAnkerの充電器は問題なく動作しているため遠慮する)。

概して、歓迎すべき追加機能がたくさんある。2018年版のPaperwhiteを持っている人には、アップグレードする価値がないかもしれないが、充実した電子書籍端末を探している人にはお勧めだ。新機能は、上位モデルのOasisとの境界線を曖昧にした。250ドル(日本では8GB広告付きで2万9980円)のOasisはより高級な外観だが、大多数の読者にとっては新しいPaperwhiteの方がずっと理に適っている。

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。