MRIなどのボディースキャン情報から人間の3Dモデルを作るKlarismoが、210万ドルの資金を獲得し、Y Combinatorからローンチした。
Klarismoにネットでアクセスして3Dモデルを作ってもらうと、体の内部構造がよく分かるようになる。ただしサービスを利用するためには、MRIスキャンなどのスキャンデータをKlarismoに提供する必要がある。3Dモデルもネット上で画像として提供され、経時的にこのサービスを利用すると、筋肉が増えたなとか、体脂肪が減ったななど、体の時系列的な変化を見ることができる。脾臓など、内蔵の形や色の変化も分かる。
CEOのMarcus Fosterは語る: “このサービスを利用すると、体の内部が分かる。減量や増量、筋肉の増強などに努力しているアスリートにとっては、とても役に立つサービスだと思う。体の、自分が見たい部分の変化を知ることができるサービスは、これが今のところ唯一だ。筋肉の組織の一つ一つが手に取るように分かるし、体内の脂肪の減り具合も分かる。ほかの方法では、それを見ることはできない。今までに見たことのないやり方で、自分の体を見ることができるんだ”。
しかもそんな3D画像データは、個人ばかりでなく、保険会社や医薬関連の企業にとっても利用価値が大きい。それまでは、そんな大企業ですら、人の体の内部を簡便に見る方法を持っていなかった。3Dモデルを作るための元データはKlarismoのものではないから、ほかの企業がもっと高値で入手することも、できるだろう。
Klarismoは今、いくつかの検査機関とパートナーしてボディースキャンのデータを得ている。データの借り賃は、一体につき250ドルだ。今後はもっともっと多くの、そしてメジャーな、検査機関とパートナーして、世界中の何千何万ものスキャンデータを入手したい、また、できるだけ多くの人びとに、日常的なボディースキャンを習慣づけたい、とFosterは言っている。
3Dモデルが完成したら、ユーザがたとえば、“脾臓を見たい”と入力すると、その部分の立体像を見せてくれる。
Foster自身がこれまで、何度も自転車で事故に遭ったし、脳には腫瘍がある。そこで彼は、誰もが簡単に体の内部を見られる方法がほしい、と思うようになった。
“これまでは、スキャンが終わると、X線技士がわずか2行ぐらいの所見を書き、それに基づいて治療が処方された。患者自身がそのデータを見ることはないから、体の内部の詳細はわからないままだ”、とFosterは語る。
“しかも、実際に病気になってからスキャンすることが圧倒的に多いから、遅すぎるのだ。病気になれば、何らかの症状がある。たとえば癌ではステージ3でスキャンすることが多いが、それでは手遅れなのだ。もっと健康な時点から、定期的にスキャンしてくれるところがあれば、それがいちばん良いのだけど、身近にそんな便利な検査機関がないところが多い”。
Y Combinatorの夏季クラスの生徒としてもらう資金のほかに、同社はKhosla Venturesやlowercase capital、そしてAtomicoからも資金を得ている。
彼によると、体の3Dデータがもたらすもうひとつの利点が、医学研究の進歩だ。研究目的で利用されるとき、データは匿名化されるが、それは研究の支障にはならない。実際に死体解剖などをしなくても、簡単かつ頻繁に体の内部を見られることは、医学教育も大きく進歩させるだろう。新しい治療法の発見も、より早くなるはずだ。
“スキャンデータが今後何十万〜何百万体ぶんも集まれば、その研究資料としての重要性や利用価値は計り知れない。それだけのデータをどうやって集めるか、という方法論も重要だが、ぼくの関心は、そこから作れる新しい消費者製品にある。Klarismoのサービスも、元々は消費者製品がねらいだけどね”。
アップデート: 競合の状況などを追記。