超人気のマイコンボードRaspberry Piの応用製品がこのところイギリスで相次いでいる。それはまるで、一枚のパイを多くの人が切り分けるように。子どものためのDIYコンピュータKanoに倣って、今度は、デザインとテクノロジのスタジオNordが、 Piを使ったハードウェアアドオンとシンプルなソフトウェアプラットホームで、Kickstarter上のクラウドファンディングキャンペーンを展開している。
そのTingbot(ティンボット)と呼ばれるデバイスは、Piのアプリケーションを実行する小さなコンピュータだ。そのキモは、タッチスクリーンといくつかのプログラマブルなボタンが最初からついているから、子どもやホビイストやプロトタイピング段階のデベロッパが、Pi用のディスプレイなど、ハードウェアのセットアップをまったく省略できるところにある。ハードウェアの準備で苦労することなく、アイデアの実装に取りかかれる。製品としてのTingbotはキットで提供されるが、とてもシンプルなので組み立ては簡単だ。
Tingbotは常時onなので、あなたのアプリケーションもスクリーン上でつねに動いている。NordのKickstarterページには、“コンピュータと正面から向き合うのではなく、“ちょい見”する感覚、有意義な情報をそれとなく提供できるのがTingbotだ”、とある。とても小さくて、気軽な印象を与える。
Kanoと違うのは、子どもだけが対象でないこと。むしろ、Piでこんなことをやってみたい、と日ごろ思っていても、ハードウェアの準備が面倒なので二の足を踏んでいたクリエイティブな人たちによる利用を、ねらっている。
Piは単なる汎用のマイコンボードだから、プラグ&プレイですぐに使える製品ではない。子どもたちがプログラミングを勉強するときも、このような裸のハードウェアからスタートすると、コンピュータへの理解がより深まると考えられる。
でもまた、この、裸のマイコンの難しさというPiの特徴の副産物として、そこからもうすこし使えるもの、使いやすいものを作ろうという、多様なPiアドオン産業が生まれた。たとえばその中には、Piによるゲーム専用機などもあった。さらにPiで動くラップトップも登場した。Tingbotのねらいは、そうやって個別にさまざまなPiアドオンを構想&実装するのではなくて、原則としてどんなアイデアでもそこで試してみられる“汎用Piアドン”だ。言い換えると、Piによるオリジナル開発が、もっと楽にできるためのデバイス。
チームがKickstarter上で提案しているTingbotの使い方の例は、ある特定の場所(例:赤ちゃんベッド)からのライブのビデオフィード、天気予報の通知、などだ。バス停に次のバスが来ることを、お知らせしてもよい。Tingbotの上で動くいろんなアプリケーションを、Pythonで書ける。そのための簡単な開発環境とライブラリも、最初から提供している。
今後は、ユーザが自他のアプリケーションをシェアしていくためのアプリケーションストアも作る予定だ。
Nordのクラウドファンディング目標額は4万ポンドだが、すでにその目標に近づいている。プロジェクトをスタートできたら、発売は2016年5月の予定。おそらく今のペースなら、目標額をクリアできるだろう。
Tingbotを一台予約購入する、という形での支援は、50ポンド(75ドル)だ。“これがあればPiでいろんなアイデアをより楽に実現し、試作できる”、と、同製品にポジティブな感想を持たれた方は、ぜひ応援を。