例年、夏休みが明ける時期になると子どもたちの自殺が増加する。自殺総合対策推進センターが8月7日に公表した「昭和48年度から平成27年度における、通学適齢期の自殺者数に関する分析(速報版)」によると、8月下旬・9月上旬に自殺者数が多く、8月下旬に自殺者数のピークがみられるという。
自殺対策の一例として、東京都福祉保険局は「都内在住、在勤、在学のいずれかで、自殺等の悩みを抱えている」主に若い世代を対象としたLINE相談窓口「相談ほっとLINE@東京」を2018年9月10日から2019年3月31日まで実施する予定だ。メッセンジャーアプリなどを用いた同様の取り組みは様々なかたちで行われているが、TechCrunch Japanでは米国発の「STOPit」という最先端の報告・相談プラットフォームを紹介したい。同プラットフォームを提供するストップイットジャパンは2017年、文部科学省主導による「夏休み明けに向けた官民連携によるいじめ防止強化キャンペーン」に参加していた。
2017年6月、同プラットフォームは米国で6000校・266万人が利用。ストップイットジャパンが設立したのは2015年10月。現在、国内では約170校・6万人にもおよぶ生徒に使われている。
STOPitはいじめなど様々な出来事を報告・相談することができるアプリ「STOPit」、組織担当者の管理ツール「DOCUMENTit」などからなるプラットフォームだ。学生などのSTOPitアプリユーザーは匿名で簡単に担当者に問題を報告。メッセンジャーを使うことで生徒たちは匿名・チャット形式で相談できる。報告・相談には証拠となる画像や動画も添付することが可能だ。
STOPitを導入している千葉県柏市では生徒の報告先を市教育委員会のいじめ・非行担当部署と少年補導センターに設定している。報告した生徒には必ず返信をしているが「学校に連絡してよいか」と確認するなど慎重な対応を行なっている。他には外部の専門窓口や学校が生徒たちのSOSを受け取るパターンもある。
ストップイットジャパンCEOの谷山大三郎氏によると、STOPitはいたってシンプルなプラットフォームだが、生徒からの承諾を得た上で教育委員会が対象校に報告したり指導することが出来るのが強みだという。
従来のチャットによる相談受付のみの場合「心の不安はある程度解消できるかもしれないが、いじめ自体はなくならない」(谷山氏)。一方、STOPitを使えば「どの学校のどの学年から連絡がきているか」を把握できるため、いじめが発生している学校の「組織的な課題」の解決につながる。
だが、すべての学生がスマホを持っているわけではない。そのため、ストップイットジャパンは生徒たちにSTOPitを「人を助けるツール」として使ってもらえるように導入校で講演や授業を行っている。また、STOPitにはブラウザ版もあり、アプリ版と同等の機能を使うことができる。
あくまで予定だが、生徒が報告・相談する先を教育委員会だけでなく警察やカウンセラーなど複数化することで生徒たちが「より相談しやすい」プラットフォームにしていきたい、と谷山氏は話していた。