2013年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで優勝した指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」が9日、ついに一般販売を開始した。価格は269.99ドル、日本国内での送料は一律15ドルとなっている。購入者の手元に届くまでには約1カ月がかかるという。RingはKickstarterで88万ドル(約9000万円)を集めて「魔法の指輪」と話題を呼んだが、出荷予定が当初の7月から8月末に延び、さらに9月末に延期。Kickstarterの支援者の中に返金を求める人も出ていて、製品化を不安視する向きもあった。
Ringは人差し指につけて空中に絵文字やアルファベット、数字などを描くことで、事前に登録したアクションを実行してくれる。Kickstarterの説明文によると、Bluetoothでスマートデバイスと接続したり、「Ring Hub」と呼ぶ中継器を使って赤外線による家電操作が行える。デモ動画には、人差し指の動作ひとつで電気やテレビをつけたり、音楽を再生したり次の曲に飛ばしたり、Ringを付けている人同士で連絡先を交換したり、果ては「$12」と指で描くと目の前にいる人に送金する利用シーンが紹介されている。
気になるのは、「実際にRingで何ができるの?」ということではないか。そう思って販売ページを見てみると、機能の紹介が見当たらない。そこでRingを開発するログバー創業者の吉田卓郎に聞いてみたところ、現時点で使える機能がいくつかわかった。彼によれば、デモ動画にあった連絡先の交換や音楽の再生・曲送りに加えて、スマホ経由で操作できるLED照明「Philips hue」や「Belkin WeMo」のオン・オフ、iPhoneのカメラ撮影、TwitterやFacebook、Evernoteへの位置情報と写真の送信などが可能なのだとか。
そのほかに彼がオススメする機能としては、Google Glassのカード型UIである「タイムライン」に情報を送信できることだという。Google Glassに命令する文をあらかじめRingに登録しておき、それをジェスチャーで送信するわけだ。例えば、指で太陽のマークを描けば、言葉で命令しなくてもGoogle Glassが天気予報を教えてくれるのだろう。これらすべての機能は、ジェスチャーをした後にRingのアプリを仲介して命令が送信される仕組みとなっている。
現時点で「魔法の指輪」と呼べるほどのプロダクトであるかはわからないけれど、なぜRingは販売ページで機能を紹介しないのか? この点について吉田に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「現状でこれができます!って言うよりも、まずはRingという全く新しい世界観を味わってほしいと考えています。普通にガジェットとして見ると機能だけにフォーカスしてしまいますが、僕たちはあくまでもライフスタイルをもっとシンプルにしたいんです。ジェスチャー入力デバイスというと、Leap MotionやKinectなどを想像しますが、あくまでもこれらは機能ベース。僕らはワンジェスチャーという本当にシンプルなライフスタイルを世界中の人たちに提案したいです。」
販売ページによれば、リチウムポリマーバッテリー(3.7V / 22mA)を内蔵し、連続稼働時間は約1〜3日、連続待受時間は約18日、充電時間は約3時間。自分が描いたジェスチャーがちゃんと届いたかを確認するためのバイブレーションも搭載する。サイズはS(内径19mm)、M(同20.6mm)、L(同22.2mm)、XL(同23.8mm)の4種類がある。
大事なことをお伝えしていなかったが、吉田卓郎は11月18日、19日に東京・渋谷で開催する我々のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」に登場してくれる予定だ。その頃には購入者の手元にRingが届いていそうだが、ユーザーの反応を踏まえつつ、今後の展望を聞ければと思っている。