アマゾン傘下のRingが3つの新製品で自動車用セキュリティーに進出、その1つはテスラとのAPI連携

Amazon(アマゾン)傘下のRing(リング)は、家庭や近所用のセキュリティーから自動車の世界に手を広げようとしている。米国時間9月24日に開催されたアマゾンのデバイスとサービスの盛大な展示会で同社は、3つの新製品、Ring Car Alarm(カーアラーム)、Ring Car Cam(カーキャム)、Ring Car Connect(カーコネクト)をデビューさせた。最初の2つはデバイスだが、最後のひとつは自動車メーカー向けのAPIとハードウェアのセットとなる。いずれも来年の早い時期に出荷される。

「実際、Ringをスタートさせてからずっと、さらにDoorbot(ドアボット)の時代まで遡って、自動車用のセキュリティーを求められ続けてきました」とインタビューで言及したのは、RingのCEOで創設者のJamie Siminoff(ジェイミー・シミノフ)氏。「それは、私たちが常に念頭に置いていたものですが、先に片付けなければならないことがあまりにも多かったのです。製品を作って、しっかりと働けるようにするには時間がかかるものです。そのため、この分野への進出には手間取りましたが、私たちの使命は住宅地を安全にすることです。自動車に起こることの多くは、住宅地にも起こるのです」と語った。

シミノフ氏は、今回発表できた製品が1つだけではなく、あらゆる顧客のニーズをカバーできる一連のセットであったことをとても喜んでいた。Ring Car Alarmは、OBD-II(車載故障診断装置ステージ2)対応の無線機器で、駐車中の車への衝突、車上荒らし、さらにはレッカー移動を感知する。Ring Car Camはセキュリティーカメラだ。Wi-Fi対応だが、追加プランでLTEにも対応できる。駐車中の事件や事故を監視するほか、走行中は緊急衝突検知や警察官に停止を命じられたときの録画も可能だ。3つ目のRing Car Connectは、ユーザーが内蔵カメラの映像を見たり、ドアロックの状態を確認したりできるように、自動車メーカーが車に統合するAPIと接続する後付け装置だ。

3つの製品でいきなり正面から、しかもRingにとって未経験の分野で参入した理由をシミノフ氏に尋ねた。「詳しく調べるようになって、これは1つのサイズで誰にでも合うといった種類の製品ではないことが、身にしみてわかったのです」と同氏。「むしろ、自動車に関連する製品一式を作ることなのだと気づきました。Ringでは、本当に独創的で、市場で際立ち、私たちの使命に合致し、顧客の生活をよりよくできるとわかったものだけを発売するよう努めています。完全にとは言いませんが、これまではそうしてきました」と続けた。

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製品の価格帯は大きな幅がある。Ring Car Alarmは予定小売価格が59.99ドル(約6300円)、Ring Car CamとCar Connectは、どちらも199.99ドル(約2万1000円)。Ring Car Alarmは、明らかに幅広い顧客層を狙っている。車への犯罪行為を予防する目的で、車とRingアプリが連動できるようにする基本機能をセットで提供するものだ。この装置は、Ringアプリに警報を送る。ユーザーが望めば、サイレンを鳴らすこともできる。Car Alarmはまた、他のRing製品やAmazon Alexa端末との連携も可能で、車に衝撃が加えられたり窓を割られたようなときには、Alexaが声で知らせてくれる。Ring Car Alarmは、Ringの親会社であるAmazonが今年中にサービスを開始する予定の低帯域幅無料無線ネットワーク・プロトコルAmazon Sidewalk(サイドウォーク)を使った接続が必要となる。

Ring Car Camは、もう一歩進んで、車の様子を目で監視できるようにするものだ。Wi-Fiが届く範囲で使用できるが、コンパニオンプランを選べば内蔵LTEによる接続が可能になる。また、これを取り付けた車に乗っている間にも使えるセキュリティー機能がある。RingのEmergency Crash Assist (緊急衝突アシスト)は、重大な事故だと判断した際には、即座に第一対応者に車の位置を通報する。さらに警察に停車を求められたとき、「Alexa、停止を命じられた」と話せば、自動的に録画が始まる。ネット接続されている場合、その映像は自動的にクラウドに送られる。プライバシーに関しては、写したくないときにレンズを隠せるフタがカメラ本体に付いている。録画中に音声だけをオフにすることも可能だ。

そしてRing Car Connectだが、これは自動車メーカーが使用するAPIで構成されていて、Ringの利用者が車に発生するあらゆる問題の警報を受け取れるよう、または車載カメラの映像を見られるようにする。また、後付け製品ではほとんど見ることが許されなかった情報にもアクセスできるようになる。

例えば、車のドアがロックされているかアンロックされているかなどだ。Ringの最初のパートナーとなる自動車メーカーはTesla(テスラ)だ。同社は、Model 3、X、S、YをRing Car Connectに対応させる。ユーザーは、2021年に199.99ドル(約2万1000円)で発売予定の後付け装置を取り付ける必要があるが、それによりセントリー(見張り)モードの録画映像や、運転中の映像をRingアプリで見られるようになる。

画像クレジット:Ring

Ringのセキュリティー・エコシステムは、簡単なドアベルから発展し、家全体(こちらもさらに広がっているが)、家の周囲、本格的な警報サービス、そして今や自動車にまで発展した。同社は決して、その栄誉ある地位に甘んじているわけではない。間もなく、郵便受け用のセンサーが29.99ドル(約3100円)で発売される。文字どおり手紙の「着信」を知らせてくれる装置だ。これが、今回の発表にちょっとした花を添えている。

画像クレジット:Ring
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(翻訳:金井哲夫)

防犯カメラのRingがビデオのエンドツーエンド暗号化を今年中に導入

Ringは、同社のセキュリティー製品をユーザーにとってより安全にする取組みの一環として、エンドツーエンド・ビデオ暗号化を今年中に実施する。アプリのコントロールセンターに将来この切り替えを行うためのページを新たに追加し、エンドツーエンド暗号化が公開されるまでの間、ユーザーのビデオを安全にするためのRingの暗号化対策の詳しい情報を提供する。

同社は米国時間9月24日に、新しいデバイスも発表しており、同社初のドローンもその1つだが、創業者兼CEOのJamie Siminoff(ジェイミー・シミノフ)氏は、新しいセキュリティー対策こそが一番大きな違いを顧客にもたらすものだと語った。

「エンドツーエンド暗号化は我々が提供する中で最も重要なプロダクトです。なぜならセキュリティーとプライバシーとユーザーによる制御はRingの基盤をなすものであり、これを業界に先駆けて一層強化していくことは、当社の責任だと考えているからです」と語る。

シミノフ氏は、同社が今年実施した2要素認証の義務化は、業界標準の先を行くものであることも指摘した。同氏に、エンドツーエンド暗号化ビデオをデフォルトにせず利用したくないユーザーがオプトアウトできるようにした理由を尋ねたところ、「ご承知のとおり、プライバシーの基準は個人によっ異なりさまざまなニーズがある」とのことだった。

エンドツーエンドについて一例を挙げれば、Alexaに向かって「玄関に誰がいるか見せて」とは言えなくなる。なぜならエンドツーエンドでロックされるからだ。その手のことが起きると顧客はやりたいことができなくなる。つまり、エンドツーエンド暗号化はあらゆるユーザーの使い方にマッチするわけではないので、オプションにしているというわけだ。

一方ではこの種の安全性をぜひ欲しいという人もいるので、今後の当社の製品は、そして業界全体がそうなってほしいのは、ユーザーが必要なセキュリティーを設定できて透明性のあるシステムだ。本日発表したビデオ・コントロールセンターでも、Ringのビデオなど顧客のデータに関する情報をユーザーが見られるようにしている。

つまり同氏の望みは、自社の製品を使ってユーザーが自分の使いたいシステムを構築できるようにすることだ。「室内ドローンのAlway Home Camは別のかたちでそれを表現したもので、家中の部屋を映す能力があるが、いつどこを撮るかを選ぶ能力も兼ね備えています」と同氏は説明した。

そして「大切なのは人々がテクノロジーを使うための選択肢を提供すること。ただし、快適に使い、理解し、制御できることだと思います」と締めくくった。

Amazon Hardware Event

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Ringの最新防犯カメラは自律飛行型屋内ドローン、2021年に約2.6万円で出荷予定

Ringはドアベルを再発明することで事業全体を構築した。そして同社はAmazon(アマゾン)のハードウェアイベントの期間中に、来年中にRing Always Home Camを販売することを発表した。

同製品は、シンプルなホームセキュリティカメラに似たアプローチを採っている。名前からは想像しずらいが、この防犯カメラとして機能するRing Always Home Camは、実際には家の中を自律的に飛行するドローンで、複数の場所にビデオカメラを設置しなくても、ユーザーがチェックしたい部屋をドローン経由で見ることができるというものだ。なお、Ringはアマゾン傘下の企業だ。

Always Home Camは、ユーザーが事前設定したルートを飛行するようにスケジュール可能だ。この小型ドローンは、手動で飛行させることはできず、飛行中に一度だけ録画を開始する。もちろん本体ケースにドッキングしている場合は、カメラのレンズは物理的にブロックされる。 同社は「どちらの機能もプライバシーを念頭に置いて厳密に運用するのに役立つ」と説明している。Always Home Camはまた、使用中に意図的に音を出すように設計されており、実際に動き回って録画していることを誰かに知らせるようになっている。

Always Home Camには屋外のオープンスペースで使用するために設計されたドローンに見られるような露出したローターはない。安全のためにプラスチック製の枠とグリルで囲われているのみだ。サイズも小さく、横7×縦7×高さ5インチ(約18×18×13cm)で、人と家庭用品の両方の安全に保つだろう。

「なぜこのような野心的な異例のホーム セキュリティカメラを開発することを決めたのか」について、Ring創業者兼CEOのJamie Siminoff(ジェイミー・シミノフ)氏に聞いた。特に、ドアベルや投光照明といった実証済みの家庭用ハードウェアの実績を考えると疑問に感じたからだ。

同氏は「Always Home Camはユーザーのフィードバックから生まれたものです。その多くは『家にいるか、家の特定の場所で何かが起きたときにそれを見ることができたらいいな』という意見だった」という。あるいは「特定の部屋用のカメラが必要だが、利用するのは特定の時間に限られている」といったものだ。

「家のあらゆる部屋にあらゆる角度からカメラを設置するのは現実的ではありません」と同氏。「無制限のリソースがあったとしても、まだ実用的ではないと思います。Always Home Camで私が気に入っているのは、1台のカメラですべての問題を解決してくれることです」と続ける。

ドローンはRingの主要事業ではないが、Always Home Camは屋内で安全かつ完全に自律的に操作できる小型機を作るという技術的な課題があるにもかかわらず、249ドル(約2万6300円)という比較的低価格で提供される予定だ。

シミノフ氏に「Ringが自社で開発したデザインを用いて、専門外の分野でどのようにしてこの価格帯を実現したのか」と尋ねたところ「技術が枯れてくるについて、これらの部品の多くは価格が下がってきました。自動車メーカーは現在、これらの部品の多くを大量に使用しているためコストダウンが起こっています。明らかに同じ部品ではありませんが部品コストはすべて下がってきています。また、私はこのプロダクトを思いついたときに、手ごろな価格でなければならないということにチームに提案しました」と答えてくれた。

Ring Always Home Camは、Ring Alarmを含む既存の製品群と連携して、アラーム発動時に自動的にあらかじめ設定された経路を飛ぶ。Ringアプリを使ってモバイルデバイスにライブでビデオをストリーミングすることも可能だ。多くの点で、これはRingのエコシステムの自然な延長のように見えるが、同時にSFの世界から飛び出したようにも見える。

そこでシミノフ氏に「消費者はこの種のテクノロジーを日常生活の一部として真剣に受け止める準備ができていると思うか」と尋ねた。

シミノフ氏は「私が思うに、それはある意味、はるか向こうにあるものなのです」と認めた。「しかし、私が気に入っているのは、この水平思考の制約を取り除いたときに起こることです。裏にある必要性を見極め、どんな技術が存在するのかを考え、何を構築できるのかを考えることから、私たちが何をすべきなのか考えるのが大好きです。何かを達成して業界第一線に私たちの足跡を残せることは、私にとって本当にエキサイティングです」と締めくくった。

Amazon Hardware Event

画像クレジット:Ring

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(翻訳:TechCrunch Japan)

大手ファッションブランドのJ.Crewが顧客アカウントの被害を公表

大手ファッションブランドのJ.Crewが、同社顧客のオンラインアカウントが「権限のない1つのグループ」によってアクセスされたと発表した。このアクセスは約1年前のことだが、今になってこの被害を公表した。

同社は米国時間3月3日にカリフォルニア州司法当局を通じて公表した書面で、ハッカーは2019年4月ごろに顧客のアカウントにアクセスしたと述べた。この書面によれば、ハッカーは顧客のオンラインアカウントからカード種別、カード番号の下4桁、有効期限、請求先住所などの情報を取得した。オンラインアカウントには顧客の注文番号、配送確認番号、配送状況も保存されていた。

同社の広報担当者は、ハッカーがクレデンシャルスタッフィング攻撃(パスワードリスト型攻撃)のテクニックを使ったことを認めた。これは、すでに流出しているユーザー名とパスワードを使って別のウェブサイトのアカウントにアクセスするテクニックだ。

広報担当者は、影響を受けた顧客は「少数」だと述べたが、正確な数には言及しなかった。カリフォルニア州で事業を運営している企業は、同州の500人以上の住民に関係するセキュリティの問題が発生したら司法当局に報告することが義務づけられている。当局に提出された書面には「複数の州」への通知と記載されており、カリフォルニア州在住以外の顧客にも影響が及んだことが示唆されている。

さらに重大な疑問は、なぜJ.Crewはこの問題を検知し当局と顧客に公表するまでに約1年を要したのかということだが、これについても明らかにされていない。

広報担当者は、「定期的なウェブのスキャン」で不正アクセスを検知し、顧客には「即座に通知した」と述べた。いつスキャンしたか、なぜアカウントの被害をもっと早く検知できなかったかは明らかにされていない。カリフォルニアと、J.Crewの本社があるニューヨーク、そのどちらの法律でも、企業が被害を公表する期限は具体的には定められていない。「適切なタイミングで、不合理な遅れなく」顧客に通知するというだけだ。

クレデンシャルスタッフィング攻撃によるセキュリティの被害を公表した企業としては、J.Crewが最新のケースだ。昨年はSpotify、メキシコ料理レストランのChipotle、Amazon傘下のドア用インターホンメーカーのRing、ゲームストリーミングサービスのTwitchが顧客からアカウント流出の訴えを受けた。

画像: Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

1500個以上のRingのパスワードがダークウェブ上で発見

あるセキュリティ研究者が、ダークウェブ上でドアベルカメラのRingに関連つけられた1562個の電子メールアドレスとパスワードを発見した。

このパスワードのリストは米国時間の12月17日に、ダークウェブ上の匿名のテキスト共有サイトにアップロードされたものだ。このサイトは一般に、盗まれたパスワードや違法な資料を共有するために使用されている。その場所であるセキュリティ研究者が、Ringカメラへのログインとアクセスに使用できる電子メールアドレスとパスワードのキャッシュをカメラのタイムゾーンや「ドライブウェイ」や「玄関」といった設置位置情報と共に発見したのだ。

その研究者が、その調査結果をRingブランドを所有するAmazonに報告したところ、Amazonはその調査結果を公に議論しないよう依頼してきたという。この記事を書いている時点では、ダークウェブ上のリストはまだアクセス可能だ。

12月19日に、2番目のRingの認証情報リークが判明した。当日の早い段階で、BuzzFeed NewsがドアベルのRingに関係した3600件を超える同様のデータキャッシュが、オンラインで投稿されことを報告している。冒頭のデータは、BuzzFeedが入手したデータセットと類似したデータセットのようだ。有効なメールアドレスとパスワードを知っている人なら誰でもRingアカウントにログインして、Ringの顧客の住所、電話番号、支払い情報の一部を取得できる。また、認証情報を手に入れたものは、設定が有効になっていた場合には、家庭のRingデバイスのビデオデータの履歴へアクセスすることも可能になる。データがどのようにして公開に至ったのかは不明だ。

ダークウェブ上の情報(画像:TechCrunch)

TechCrunchは、ダークウェブのリストで情報が見つかった数十人の個人に連絡した。その際、各ユーザーに対して発見したパスワードを提示した。回答を送ってきた人は皆、それが自分自身のパスワードであることを認めた。

私たちのアドバイスをきっかけに、全員がパスワードを変更し、一部のユーザーはアカウントに対する二段階認証を有効にした。

私たちが見たほぼすべてのパスワードは、比較的単純で推測が容易なものだった。これらのパスワードは、ハッカーがパスワードを推測するために使用するパスワードスプレー手法やハッカーがほかのさまざまなウェブサイトのアクセスに利用することができた、すでに公開または漏洩したユーザー名とパスワードの組を使うクレデンシャルスタッフィング手法などで収集された可能性があある。

Ringの広報担当者であるYassi Shahmiri(ヤーシ・シャミリ)氏は、本記事の当初の公開までにはコメントを寄せなかったが、記事投稿後に電子メールでデータ漏洩に関して否定した。

「アカウントが公開されていると私たちが判定した顧客には通知を行い、彼らのパスワードをリセットしました。さらに、Ringアカウントへの不正なログイン試行を、監視しブロックし続けています」と広報担当者は語った。しかし、会社側の主張とは異なり、私たちが接触した人のうちRingから連絡を受けた人はいなかった。

これがこの1週間のうちにRingの防犯カメラが関与したものの最新のセキュリティ事案だ。先週には、米国各地でハッカーたちがRingカメラに侵入していた方法に関するニュースレポートが登場していた。一部の犯罪フォーラムが、Ringアカウントに侵入するツールを共有しているのだ。その後、今週初めにMotherboardがRingカメラの持つお粗末なセキュリティ対策を報告した

例えば、他の人間がログインしていることや、頻繁にアクセスされていること、そして弱い形式の二段階認証を使用していることなどを、ユーザーに通知しないのだ。Ringは「ベストプラクティス」を使っていないユーザー側に責任の多くがあると考えている。しかし、ユーザー保護のための「基本的なセキュリティ対策」を講じていなかったことに対する非難の声も起こっている

Ringはまた、合衆国内との法執行機関との緊密な関係に対して、議員たちからの追求を受けている。ほかにも漏洩したRingアカウント認証情報のセットが、どれくらいダークウェブ上を漂っているのかは不明だ。ユーザーは、強力でユニークなパスワードでアカウントを保護し、2段階認証を有効にする必要がある。

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(翻訳:sako)

アマゾン傘下のドアホンメーカー「Ring」が行方不明児の捜査に協力

Amazon(アマゾン)傘下のRingは、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)と協力して、Ringのコミュニティーアプリ「Neighbors」に行方不明の子供たちのポスターを掲載する。Neighborsは地域の犯罪のニュースや安全に関わる事象を地域コミュニティーで共有するための無料アプリで、Ringのドアホンやカメラのユーザーに限らず誰でも利用できる。

NCMECは24時間のホットライン(1-800-THE-LOST)を開設して米国内の行方不明の子供を探すとともに、アンバーアラート(公衆メディア経由の緊急警報)やソーシャルメディアへの投稿を通じて行方不明者の情報を共有している。Ringとの提携によって、NCMECは数百万人からなるアプリのコミュニティーを通じて広範囲の人々とつながることができる。コミュニティーにはRingのビデオドアホンのユーザーがいるので、NCMECで共有できる重要情報を持っている可能性がある。

Ringによると、最近このしくみによって米国ニューメキシコ州アルバカーキで行方不明の子供が家族と再会した。ただしこのケースに誘拐は関係していない。いなくなった14歳の少年はフットボールの試合の後、父親に拾ってもらうのを待っていたが場所を間違えていた。携帯電話も自宅の電話番号もなかったため、助けを求めることができなかった。家族は警察に届け、RingのNeighborsアプリに迷子通知を掲載したところ、アプリユーザーのひとりが少年を見つけて両親に連絡した。

NCMECは今回の提携によって、すでにNeighborsアプリで行われているような情報交換を正式なものにすることを考えている。メンバーの誰かが見たことを拡散したり、上の事例のように自分の子供が行方不明になった親が助けを求めるケースなどだ。

Ringによると、NCMECの行方不明児のポスターは、関連地域のメンバー全員に公開される。捜索に役立つ可能性のある情報を持つ人に通報を促す投稿も行われる。

FBIによると、2018年に警察に届け出のあった子供の行方不明事例は42万4066件だった、とRingは付け加えた。

この提携は、Ringの世間におけるイメージを払拭する必要があるタイミングに発表された。

Amazon傘下の同社は、 警察との関係で批判を受けて議会による調査まで行われたほか、顔認識技術の利用にまつわる計画についても問題になった。最近では、RingのドアホンからWi-Fiパスワードがハッカーに流出したことも発覚した。Ringは二要素認証などによる高度なセキュリティーを必須にしていなかったため、ユーザー名とパスワードを入手したハッカーが侵入し全米のユーザーを攻撃する事件も起きた。

一連の事件をきっかけに、複数の消費者団体やプライバシーグループがRingのカメラに対する製品警告を発信し、RingのNeighborsアプリがデバイスの位置情報などの非公開情報を共有していたことも指摘した。

こうした深刻な問題を抱えながらも、RingのNeighborsアプリのアクティブユーザーは増え続けている。Sensor Towerによると、これまでに米国ではNeighborsが700万回インストールされている。Ringのドアホンは現在世界中で1000万台以上設置されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazonのドアベル「Ring」にWi-Fiのパスワードが盗まれる脆弱性が見つかる

セキュリティの研究者たちが、接続されているWi-Fiネットワークのパスワードを露呈するAmazonのドアベル「Ring」の脆弱性を発見した。

Bitdefenderによると、Amazonのドアベルは、それがローカルネットワークに加わったときにオーナーのWi-Fiパスワードを平文のテキストで送信する。近くにいるハッカーはそのWi-Fiパスワードを横取りしてネットワークにアクセスし、重大な攻撃や盗聴行為などを仕掛けることができるだろう。

Bitdefenderによると「デバイスを最初に構成するとき、スマートフォンのアプリはネットワークの認証情報を必ず送信する。その送信はセキュリティに守られていないし、同じく無保護のアクセスポイントを通る。そのネットワークが動き出したら、アプリはそれに自動的に接続してデバイスを調べ、その認証情報をローカルネットワークに送信する」と説明する。

しかし、これらすべてが暗号化されない接続の上で行われるから、送信されたWi-Fiパスワードはそのまま露呈する。AmazonはRingの脆弱性を9月に直したが、この脆弱性は米国時間11月7日の時点で未公開だ。

このように、スマートホームの技術には相次いでセキュリティの問題が見つかっている。スマートホームデバイスは生活を楽にして家を安全にするために作られているはずだが、研究者たちは、それらが保護するはずのものへのアクセスを許す脆弱性を、次から次と見つけている。

この前は研究者たちが、人気のスマートホームハブにドアの鍵(スマートロック)を開けさせて、その家に侵入できた。

AmazonのRingについては、法執行当局(警察)が厳しい調査を行っている。GizmodoなどのニュースサイトがRingと警察との密接な関係の詳細を、関連のメッセージングも含めて報じている。今週は、ハロウィーンで何百万ものお菓子をねだる子どもたちを追跡したとRingがInstagramで自慢していたそうだ。

関連記事:Security flaws in a popular smart home hub let hackers unlock front doors(人気のスマートホームハブはハッカーがドアの鍵を開けられる、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Ring Floodlight Camは、投光機付き防犯カメラのスラムダンクだ

すぐれた家庭用防犯カメラの条件は、簡単に設置できて、かつ利用者の不安を取り除いてくれることだ。249ドルのRing Floodlight Camはどちらも実現している。

カメラは古い投光機が付いていた場所に取り付けることが可能で、ネットワークにはWi-Fiでつながる。設置は簡単で、移動するものに反応して照明をつけることも、一晩中照らして侵入者を防ぐこともできる。ナイトビジョンモードを使えば暗いときにも撮影が可能だ

移動物体を検知するとシステムから通知が送られ、年間30ドルのモニタープランに入っていれば60日間ビデオが保存される。ビデオは移動を検知したりある程度人を判別するには十分な解像度だが、すこし離れたところのナンバープレートは読めないかもしれない。

そしてほかのRing製品と同じく、アプリを通じて侵入者に話しかけたりサイレンを鳴らすこともできる。サイレンは周囲の騒音に消される程度の音量だが、効果はあるだろう。

この手のカメラはNetatmo Presenceをはじめいくつか試してきたが、Ring Camの耐久性は気に入っている。NetatmoのようなSF的スタイリングはないが、暗いところを照らすライトという仕事をしっかりこなす。しかも、SDカードスロットをもたないため、防水性は完全だ。防水はNetatmo Presenceを使っているときに遭遇した問題だ。

Ringはあらゆることをしっかりこなした。他のカメラソリューションがスタンドアローンであったり、新築時に設置する必要があるのに対して、このカメラは過去のシステムと互換があり、非常によくできている。システム全体のインストールはすぐに終わり、(今のところ)問題なく動作しているが、ブルックリンの風雨に耐えられるかどうかは時を待たなくてはわからない。

もし読者が投光機を購入予定で、デザイン性が気にならないならこれはお薦めだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマートロック分野を狙っているのはAmazonだけではない

留守中に自宅のドアを開けようとする人がいれば泥棒だと思うのが普通だ。しかしAmazon.comはそんな思い込みを変えたいと考えている。

先週、Eコマースの巨人はWi-Fi内蔵ドアホンのメーカーであるRingを11億ドルで買収した。これは、同社が昨年Amazon Keyを発表したのを受けてのことだ。Amazon Keyはスマートロックとカメラを組み合わせた、商品を屋外に置かれたくない利用者向けの、宅内配達システムだ

しかし、玄関ドアテクノロジーに高い価値を置くのはAmazonだけではない。オンデマンド配達の時代、サービス提供者はローテクのドアを舞台に機能の拡張をはかってきた。スマートロックのメーカーやセキュリティー会社もこの分野に力を入れている。

数カ月前に本誌が報じたように、玄関のドアを開ける方法は100年来あまり変わっていない。ほとんどの人が金属製の板状のキーを錠に差し込んでドアを開いている。訪問者は昔ながらの呼び鈴を鳴らす。そして、誰がなぜ来たかを示すデジタル記録もないのが普通だ。

こうした現状を変えようと大きな資金が動いている。昨年以来ベンチャー投資家は、鍵、錠、入退室システムに関わる事業とテクノロジーに取り組む様々な会社に2億ドル以上を注ぎ込んできた。現在これらの会社が計5億ドル以上を保有していることをCrunchbaseのデータが示している。

Ringは、ベンチャー資金2億ドルを調達しており、最近数カ月の間に買収された会社の中でも多額の投資を受けている一社だ。昨年10月、スマートロックのメーカーで、ベンチャー資金を7000万ドル以上獲得しているAugust Homeが、ドア開錠製品の世界最大メーカーであるASSA ABLOY Groupに金額非公開で買収された。

スマートロックと入退室システムに良い流れが来ていると考えることには理由がある。まず、鍵と入退室関連の投資は、スマートホーム分野の延長線上にあり、スマートホームシステムの成長が、鍵やドアの新テクノロジーの入口になっている。

多くの既存企業も簡単にドアを開ける方法を必要としている。顧客のドアの内側あるいは外側に商品を届ける仕事は、全体で数兆ドル規模の企業価値がある。Amazonだけでも企業価値は7000億ドルだ。

さらに、逸話的ではあるが、近年都会の人々は益々怠惰になりつつある。洗濯物、即席食品、ひげそり用品からペットの食料まで宅配を望んでいる。かつて、店まで買い物にいくのが面倒だと思ったのと同じように、家の外にでてけ荷物を受け取ることさえも不便に感じるようになっていくのだろう。

こうした傾向は、人間性にとって好ましい現状ではないかもしれない。しかし、スマートロック業界にとっては強気の指標に違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

子どもたちに分子の不思議を教える教材セットHappy Atomsは老舗企業の初のクラウドファンディング

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ほとんどのSTEM玩具を断固軽蔑しているぼくが、Happy Atomsを許せるのは、それが家庭市場ではなく教育者をターゲットにしているからだ。化学実験用具のメーカーThames & KosmosとピッツバーグのSchell Gamesが共作したHappy Atomsは、磁石で表す原子を使って分子の構造を子どもたちに教える。

キットには、酸素や炭素、水素などの原子が入っていて、それらを組み合わせて分子を表す。iOSのアプリで分子をスキャンすると、その物質のデータや分子の特徴などが分かる。たとえば果糖の分子を作ったら、果糖が自然界のどこにあるか、体に対して何をするか、などが分かる。そう、気分を良くすることだよね。

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先生用の359ドルのパッケージには250の原子パーツが入っているが、アトムが50個のセットは129ドルだ。パーツは頑丈にできていて、電池などはいっさい使わない。アプリはパーツの色とその周りの帯で原子を判断するから、どんな位置からでも原子をスキャンできる。

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くどいようだが、STEM玩具はその多くがゴミだ。でもHappy Atomsは、どうやって化学を三次元で教えるか、という面白い、そして重要な問への解を与えている。先生がこれを使ってくれたら、高校時代の化学の成績はもっと良かったと思う。当時のぼくはAPの化学で、“努力が足りない”と評価されてしまった。

玩具は所詮、玩具だけど、Thames & Kosmosは一世紀以上にわたって本格的な化学や工作のキットを作っている。つまり、この分野の完全なプロである。そんな企業がクラウドファンディングに踏み切ったのはおもしろいが、でもそれは試す意義があるだろうし、しかもSchell Gamesとのパートナーシップで物理的なオブジェクトとアプリの両方を作れた。温室効果ガスのN2Oなんかも作れるから、まるで自分が高校生に戻ったような気持ちになり、めまいがしそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

「Ring」新モデルが4月末に出荷開始、Kickstarterは再び炎上気味

昨年10月に一般販売を開始し、よくも悪くも話題を呼んだ指輪型のウェアラブルデバイス「Ring」に、第2世代モデルとなる「Ring Zero」が登場した。

開発元のログバーの発表によれば、初代モデルと比べてジェスチャー認識精度が300%、ジェスチャー反応速度が10倍に向上し、重量も3分の1(Sサイズで5.4g)に軽量化したという。白と黒の2カラーがあり、価格は1万6900円。初代モデルの269.99ドルから約1万円値下げしたかたちだ。Amazon.co.jpで先行予約を受付中で、4月30日から発送する。

Ringは人差し指につけて空中に絵文字やアルファベット、数字を描くことで、内蔵するモーションセンサーでジェスチャー情報を取得。この情報をBluetooth経由でRingのスマートフォンアプリに送ることで、照明を点灯させたり、テレビの電源をオン・オフにするなど、事前に登録したアクションを実行できる。

第2世代モデルとなるRing Zeroでは、「Maestro(マエストロ)」と呼ぶジェスチャー認識エンジンを搭載。これによって、初期モデルと比べて、ジェスチャーのマッチング率が300%向上したのだという。

初代モデルについては僕も試したことがあるのだけど、操作の「コツ」をつかむまでは、指先のジェスチャーが認識されたのは2割程度。ログバーCEOの吉田卓郎氏によれば、「多少使い方を練習すれば、ほぼ認識される」ということだった。

第2世代モデルの「マッチング率が300%向上」についてはピンと来ない部分もあるが、吉田氏は「一度ジェスチャーの仕方を覚えるとほぼ100%認識する」と話している。それだけに、どれくらい認識率が向上したのか注目される。

Kickstarterのコメント欄が再び炎上

Kickstarterで88万ドル(約9000万円)を集めて華々しいデビューを飾ったRing。その後、デザイン変更や出荷遅延でKickstarterのコメント欄が炎上したものの、昨年10月に無事出荷をスタートした。東京・渋谷の表参道ヒルズに5日間限定でオープンした「Ring Store」には連日1時間待ちの行列ができるなど、その注目度の高さが伺えた。

その一方で、商品を受け取ったユーザーからは厳しい反応も。

Kickstarterのコメント欄には「サイズが大きすぎる」という投稿が相次ぎ、開発元のログバーは購入者にサイズ調整用のアジャスターを無料で送付している。また、YouTube上ではジェスチャー認識率の悪さを指摘する辛辣なレビュー動画が掲載され、Kickstarterの一部の支援者からは集団訴訟を呼びかけるコメントも投稿されている。

こうした声を受けて開発元のログバーCEOの吉田卓郎氏は昨年末、初代モデルに不満を持つユーザーに対して、第2世代モデルを無償提供することを発表。第2世代モデルを希望したユーザーには、4月30日以降商品が届くという。


PepperとRingの共演に見る近未来のUI

「Ring」との共演も見せた「Pepper」

TechCrunch Tokyo 2014の1日目、2014年11月18日に開催されたセッション「ロボットのいる生活と近未来のUI」では、ソフトバンクロボティクスでPepper事業を手がける吉田健一氏、ユカイ工学の青木俊介氏、指輪型デバイス「Ring」を作るログバーの吉田卓郎氏がロボットとともに登壇した。

壇上には、ソフトバンクが2014年6月に発表したロボット「Pepper」が登壇者とともに立っている。そしてユカイ工学のコミュニケーションロボット「BOCCO」がテーブルの上にスタンバイしている。これらロボットと人間が、どのようなUIでコミュニケーションを取っていくのか。それはソフトウェア開発者にとっても、ベンチャー起業家にとっても、新たなフロンティアとなる領域だ。

Pepperが「マホウノツエ」で家電を制御、「Ring」で人とコミュニケート

ソフトバンクが2014年6月に発表したPepperは、プラットフォームとして開発されたロボットだ。PepperをめぐるテクニカルカンファレンスであるPepper Tech Festival 2014の場で、ユカイ工学はPepperに対応するソリューションとして「マホウノツエ」を公開した。赤外線通信機能を備えたマホウノツエをPepperが手に持ち、Pepperがテレビやエアコンを魔法でコントロールしているかのような光景を作り出した。

「魔法」をイメージしたというデバイス、ログバーのRingもPepperのためのUIとして活用可能だ。会場で見せたビデオでは、Ringのを付けた指の動き、つまりジェスチャーによりPepperを呼ぶ様子や、今日の予定をPepperに聞く様子が描かれていた。ログバーの吉田氏によれば、RingでPepperに指示を出すデモは、「3日ほどでつなぎ込みができた」そうだ。

ログバーの吉田卓郎氏

家庭を結ぶタイムライン、コミュニケーションロボット「BOCCO」

壇上に置かれていたもう1つのロボットBOCCOは、家庭のためのコミュニケーションロボットだ。公開したビデオでは、両親が共働きで帰りが遅い家庭をイメージしたユースケースを紹介した。子どもが帰宅した際、ドアに付けたセンサーを通じて職場の父親に通知がなされる。それを受けて親が子どもにメッセージを送ると、BOCCOは送られたテキストを読み上げてくれるのだ。

もちろんスマートフォンでテキストメッセージを送ることは容易なのだが、「小さな子どもにスマートフォンを持たせたくない親は多いはず」と青木氏は言う。自由度が大きなスマートフォンを小さな子どもに与えると、YouTubeで時間を使いすぎたり、怪しいサイトを開いてしまったりすることはいかにもありそうだ。BOCCOはロボットとしての個性、つまり人とコミュニケートするための性質を備えたデバイスとして作られているのだ。

Pepperを教育に、人にインプットするのではなくエンゲージする

ソフトバンクロボティクスの吉田健一氏

 

ソフトバンクロボティクス吉田氏は、Pepperにはパソコンやスマホにはない「人との関係」、エンゲージメントがあると強調する。「Pepperに入っているデバイスの技術は、実はそれほど革新的というわけではない。何が(今までのデバイスとの)違いかというと、生き物に見えるかどうか。社長(ソフトバンクロボティクス代表取締役社長の冨澤文秀氏)の2歳の子どもは、Pepperに一所懸命パンを食べさせようとする。子どもが見て生き物だと思うという関係性はパソコンやタブレットではありえない」。

ユカイ工学の青木氏もBOCCOの見た目が「ロボットっぽい」ことは重要だと考えている。自動販売機も自動改札機も、例えばユーザーの年齢を判別して挙動を変える高度な動作をする点ではロボットと呼べるかもしれないが、ユーザーは人とコミュニケートする機械とは認識しない。このセッションの文脈での「ロボットらしさ」とは、人とコミュニケートするデバイスとしての個性のことだ。

ユカイ工学の青木俊介氏

ソフトバンクロボティクスの吉田氏は、人間との関係の例として、 教育へのPepperの応用について話した。Pepperが子どもに教えるというやり方では、タブレットによる学習となんら変わらない。だが子どもと一緒に学習するスタイルだと関係が変化する。例えばPepperがわざと間違えて、子どもがそれを指摘する方が、子どもの学習スピードは上がるという。「インプットじゃなくエンゲージする、一緒に間違える」――そのようなコミュニケーションがロボットには可能なのだと吉田氏は言う。

セッションの最後で語られたのは、セキュリティ問題だ。Pepperは人と濃密なコミュニケーションをする目的のロボットだが、それは裏を返せばソーシャルハッキングの道具として使われる可能性があることを示している。「Pepperが子どもに『好きな人はいる?』などと聞くと、思わず答えてしまうかもしれない」(ソフトバンクロボティクス吉田氏)。Pepperのアプリストアでは、手作業でセキュリティチェックを実施する方針という。


ついにRingが一般販売開始、269ドルの「魔法の指輪」で何ができる?

2013年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで優勝した指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」が9日、ついに一般販売を開始した。価格は269.99ドル、日本国内での送料は一律15ドルとなっている。購入者の手元に届くまでには約1カ月がかかるという。RingはKickstarterで88万ドル(約9000万円)を集めて「魔法の指輪」と話題を呼んだが、出荷予定が当初の7月から8月末に延び、さらに9月末に延期。Kickstarterの支援者の中に返金を求める人も出ていて、製品化を不安視する向きもあった。

Ringは人差し指につけて空中に絵文字やアルファベット、数字などを描くことで、事前に登録したアクションを実行してくれる。Kickstarterの説明文によると、Bluetoothでスマートデバイスと接続したり、「Ring Hub」と呼ぶ中継器を使って赤外線による家電操作が行える。デモ動画には、人差し指の動作ひとつで電気やテレビをつけたり、音楽を再生したり次の曲に飛ばしたり、Ringを付けている人同士で連絡先を交換したり、果ては「$12」と指で描くと目の前にいる人に送金する利用シーンが紹介されている。

気になるのは、「実際にRingで何ができるの?」ということではないか。そう思って販売ページを見てみると、機能の紹介が見当たらない。そこでRingを開発するログバー創業者の吉田卓郎に聞いてみたところ、現時点で使える機能がいくつかわかった。彼によれば、デモ動画にあった連絡先の交換や音楽の再生・曲送りに加えて、スマホ経由で操作できるLED照明「Philips hue」や「Belkin WeMo」のオン・オフ、iPhoneのカメラ撮影、TwitterやFacebook、Evernoteへの位置情報と写真の送信などが可能なのだとか。

そのほかに彼がオススメする機能としては、Google Glassのカード型UIである「タイムライン」に情報を送信できることだという。Google Glassに命令する文をあらかじめRingに登録しておき、それをジェスチャーで送信するわけだ。例えば、指で太陽のマークを描けば、言葉で命令しなくてもGoogle Glassが天気予報を教えてくれるのだろう。これらすべての機能は、ジェスチャーをした後にRingのアプリを仲介して命令が送信される仕組みとなっている。

現時点で「魔法の指輪」と呼べるほどのプロダクトであるかはわからないけれど、なぜRingは販売ページで機能を紹介しないのか? この点について吉田に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「現状でこれができます!って言うよりも、まずはRingという全く新しい世界観を味わってほしいと考えています。普通にガジェットとして見ると機能だけにフォーカスしてしまいますが、僕たちはあくまでもライフスタイルをもっとシンプルにしたいんです。ジェスチャー入力デバイスというと、Leap MotionやKinectなどを想像しますが、あくまでもこれらは機能ベース。僕らはワンジェスチャーという本当にシンプルなライフスタイルを世界中の人たちに提案したいです。」

販売ページによれば、リチウムポリマーバッテリー(3.7V / 22mA)を内蔵し、連続稼働時間は約1〜3日、連続待受時間は約18日、充電時間は約3時間。自分が描いたジェスチャーがちゃんと届いたかを確認するためのバイブレーションも搭載する。サイズはS(内径19mm)、M(同20.6mm)、L(同22.2mm)、XL(同23.8mm)の4種類がある。

大事なことをお伝えしていなかったが、吉田卓郎は11月18日、19日に東京・渋谷で開催する我々のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」に登場してくれる予定だ。その頃には購入者の手元にRingが届いていそうだが、ユーザーの反応を踏まえつつ、今後の展望を聞ければと思っている。

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指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」がKickstarterでキャンペーン開始、2014年7月出荷予定

2013年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで優勝した指輪型ウェアラブルデバイスの「Ring」を開発するスタートアップ企業のログバーが今日、Kickstarterでキャンペーンを開始した。キャンペーンは35日間で目標額は25万ドル。キャンペーン開始直後の現在、242人の支援者がいて3万7850ドルが集まっている(この記事を書き始めてから書き終わるまでの30分で4000ドル増えた。日本時間2月28日午前7時現在)。2014年4月に量産を開始して、7月に米国、日本、ヨーロッパ、中国への出荷を開始するという。6世代のプロトタイプを経てのデバイス提供開始ということになる。

Ringは6つのサイズでの提供を予定している指輪型のデバイスで、人差し指につけて空中に絵文字やアルファベット、数字などを描くことでジェスチャーを認識してくれる。開発者は低レベルの座標情報を取ってどうこうするというよりも、定義済み、または自分で定義したジェスチャーをRingのAPI経由で利用して、現実世界のデバイスやサービスとつなぐことになる。独自ジェスチャーの定義はスマホアプリ上でできるようだ。RingはBluetooth LEを搭載していて、スマートデバイスと接続もできるが、Ring Hubと呼ぶ中継器を使って赤外線による家電操作が可能だ。Ringのアクティベートには今のところiOS7以上かAndroid 4.4以上を搭載するデバイスが必要で、Windows Phone対応やRing Hub提供は今後の予定となっている。

デバイス的にはモーションセンサーとタッチセンサーを備える。ジェスチャー開始前に明示的にタッチによってジェスチャー開始をRingにユーザーが伝えることによって、小型デバイスながら1度の充電で1000ジェスチャーを認識するだけのバッテリ持続時間を実現したという(より正確な数字はキャンペーン終了前にアナウンスするという)。

ジェスチャーによって、家電や電子機器の操作ができるほか、文字入力や支払いなども可能になるという未来っぽいデバイスだ。小さなLEDとバイブレーターを搭載していて、ノーティフィケーションやアラートをユーザーに伝えるフィードバック機構もある。ジェスチャーによる入力という点でRingとの共通点もありそうなLeap Motionは、こうしたフィードバックが画面だけで、実はそのことが「未来を垣間見れるデバイス。ただし、イライラ棒みたいなもんだけどね」というビミョーなLeap Motionの感想につながっていたように思う。少し複雑なことをやろうと思うとLeap Motionの操作は難しくなり、少なくとも私にとっては学習性無気力感を引き起こすデバイスだった。Ringのタンジブルなフィードバックが、使用感にどう影響するのかは興味をそそられる。

実は去年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルでは、Ringのログバーを優勝とすることについて審査員の間で意見が割れた。応用の幅が広そうで独自性が高いという意味では、「目線が高い」野心的なプロダクトだけれども、端的に言って「風呂敷を広げただけちゃうの?」という意見もあった。美麗な動画で可能性を語り、ごくシンプルな電灯のオン・オフのデモを1つやったのはいいけれど、結局使い物になるプロダクトを本当に実現できるのかどうか疑わしいのではないか、という懐疑的な意見があったのだ。ハードウェア系のスタートアップの人たちに意見を求めてみても、入手可能なバッテリや通信モジュールのサイズや性能から言って「指輪サイズ」は、かなり無理があるのではないか、という話もあった。

この辺のことをログバー創業者の吉田卓郎氏にステージ裏で聞いたところ、むしろ何故デバイスの実現性に疑問を持たれるのか分からないという回答だった。ハードウェア的な意味では、特にサイズを妥協すれば作ること自体は難しくなく、むしろ本当に難しいのはサイズを小さく保ったままバッテリ持続時間を確保することと、ジェスチャーの認識精度を上げる作り込みだと語っていた。ジェスチャー認識のために常時スタンバっていると、とても常用できるバッテリ持続時間にならない。あるいはセンサーから生の座標データを開発者に伝えところで普段幾何学系のアルゴリズムなんて扱わない現代の一般的なソフトウェア開発者にとっては使いづらい。ジェスチャーの定義と認識精度の向上、それをどういうAPIで見せていくかというのがチャレンジだ、という話だっ。Kickstarterでデビューして真っ先に世の中に登場したスマートウォッチのPebbleの登場時なんかもそうだけど、2014年のRingは可能性を広げてファンとなる開発者エコシステムの醸成に腐心するべき時期なのかもしれないね。Leap MotionやPebble同様にアプリストアも用意するようだし、家電や組み込み機器メーカーまで巻き込んで作り込みができれば面白そうだよね。