アップルの上級副社長が新型コロナ対応サプライチェーンの安全性について説明

Apple(アップル)は米国時間5月14日、2020年のサプライヤー責任進捗報告書を公開した。Sabih Khan(サビ・カーン)オペレーション担当上級副社長は報告書中の書簡で、世界中のサプライチェーンにおける安全と保護に関する取り組み強化に向け同社が策定した計画の概要を詳述した。

カーン氏が2019年に現職に就任してから公に何かを発表するのは筆者が知る限りこれが初めてだ。この書簡ではアップルの従業員とサプライチェーンメンバーの「安全で健康的な職場に対する権利」を確保するためのアップルの取り組みについて説明している。

世界で最も優れた家電メーカーであり、ポールポジションに位置する企業として、アップルの取り組みと姿勢は明らかに、いわばつぶさに見られている。アップルの施策は世界中に展開する他の製造業者の手引きとなるだろう。

カーン氏はアップルのサプライヤーにまず感謝し、何千人もの従業員がサプライヤーと協力して事業を継続する計画を立てたと述べている。その計画は、各国の健康に関する推奨事項と新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散緩和に関する普遍的なルールを考慮して策定された。

サプライヤーの工場で実施された施策は次のとおりだ。

  • 健康診断
  • 密度の制限とソーシャルディスタンス(社会的距離)の厳格な順守
  • 作業中および共有エリアの両方で個人防護具の使用を義務付け
  • ディープクリーニングプロトコルの実施
  • マスクと消毒剤の従業員への配布

アップルはまた、必要に応じてサプライヤーの工場のフロアプランを再設計・再構成した。社会的距離の確保のために時差勤務シフトなどの柔軟な労働時間も導入している。

アップルは自社のサプライヤーに対して実施したさまざまな安全保護の施策実行に加えて、業界全体のスタンダード確立に向け、NGOや他の組織に同社の計画を共有した。

「我々はあらゆるもののなかで人を第一に考える。そして我々と一緒に働くすべての人に同じことを求める。最高の基準を維持したいと考えるからだ」とカーン氏は書簡で述べている。「当社のサプライヤー行動規範は、あらゆる種類の差別やハラスメントを防ぎ、サプライヤーの従業員が匿名で声を上げられる通報手段を提供する。我々はサプライヤーと提携して教育と訓練の機会を創出している。大学の学位取得プログラム、職業訓練イニシアチブ、健康増進プログラムなどを提供し、従業員が新しいスキルを学び、目標の達成に向けて取り組めるようにしている」。

アップルのサプライヤー報告書は例年2~3月に公開されるが、報告書で新型コロナウイルス対応の詳細を発表する前に、まず保護対策の計画・実行に時間をかけたかったという。

「新型コロナは前例のない挑戦となったが、同僚、友人、隣人の健康を改めて大切に思う人間愛から希望とインスピレーションを得た。自分と他人の健康を思う気持ちは我々がいつも持てるものだ。人と地球を守る我々の取り組みに終わりはないかもしれないが、この先に最高に明るい未来が待っていると今ほど確信したことはない」。

2020年のサプライヤー報告書は、サプライチェーンの従業員5万2000人へのインタビューに基づいている。現在49カ国のサプライヤーを監査しており、2018年の30カ国から増加した。2019年の監査は合計1142件だった。アップルの廃棄物ゼロプログラムは、サプライチェーンからの炭素排出量と廃棄物を削減するために2015年に導入された。報告書によるとこのプログラムは現在、すべての主要製品の最終組み立て、検査、包装工程に統合されている。アップルは2019年に130万トンの廃棄物の埋め立て地行きを回避し、製造工程から出る水の40%(約94億ガロン=427億リットル)を再利用した。

カーン氏の書簡の全文は以下のとおり。

健康が第一です。 今も、いつでも。

世界中の人々が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに伴う多くの困難に直面する中、地球を守り、あらゆる人々に尊厳と尊敬をもって接することの重要性を再認識しました。これは我々の意思決定すべてに反映されている価値観です。

サプライヤー責任進捗報告書は、そうした理念をどの程度実行に移したのか、進捗状況を振り返っています。しかし、私はまず、グローバルサプライチェーンにおいて今、新型コロナという前例のない挑戦に対処し、人々が安全に仕事に戻れるよう、我々がどう行動しているかについて共有したいと思います。あらゆる人々に安全で健康的な職場に仕事に戻る権利があるからです。

パンデミックによって影響を受けなかった国はありません。新型コロナによる複雑かつ急速に変化する影響を乗り切るにあたり、世界中のすべてのサプライヤーのコミットメント、柔軟性、チームへの配慮に感謝したいと思います。我々は当初からサプライヤーと協力して、人々の健康を最優先する計画を策定し、実行してきました。何千人ものアップルの従業員が、世界中のサプライヤーと協力してその計画を実行するために精力的に取り組んできました。

これは何よりもまず、健康診断、密度の制限、工場における社会的距離の厳格な順守など、各国の状況に適したさまざまな保護策について世界中のサプライヤーと協力することを意味します。作業中およびすべての共用エリアの両方で個人保護具の使用を義務付け、ディープクリーニングプロトコルを実施しマスクと消毒剤を配布するためにサプライヤーと協力してきました。

また、当社のチームはサプライヤーと提携し、必要に応じて工場のフロアプランを再設計および再構成し、人間同士の距離を最大化するため、時差勤務シフトを含む柔軟な労働時間を設定しています。我々は、最先端の医療およびプライバシーの専門家と緊密に協力して、高度な安全衛生プロトコルを開発し続けます。

サプライチェーン全体でツールを開発しベストプラクティスを実行するにあたり、業界内外で得た知見を共有しています。我々が何者であるかを長く定義してきた価値が、新型コロナによって弱められることはありません。その価値は我々がお互いやこの惑星に対して負っている責任に根ざしています。

今年のサプライヤー責任進捗報告書では、こうしたことを実現するために2019年に取り組んだことについて説明しています。100%再生可能エネルギーへ移行することであっても、職場での権利について何百万人もの従業員に周知することであっても、事業のすべての側面に当社の価値観を適用します。そして毎年、サプライヤーも順守を求められる基準の水準を引き上げています。

我々はあらゆる事のなかで人を第一に考えます。そして我々と一緒に働くすべての人に同じことを求めます。当社のサプライヤー行動規範は、あらゆる種類の差別やハラスメントを防ぎ、サプライヤーの従業員が匿名で声を上げられる通報手段を提供します。我々はサプライヤーと提携して教育と訓練の機会を創出しています。大学の学位取得プログラム、職業訓練イニシアチブ、健康増進プログラムなどを提供し、従業員が新しいスキルを学び、目標の達成に向けて取り組めるようにしています。

我々は実現したこと、していないことに関して進捗状況を報告し、透明性の確保に努めています。この報告書は、サプライチェーンの5万人を超える従業員へのインタビューと、抜き打ち監査を含む49カ国1000以上のサプライヤー工場監査に基づいています。当社の製品に注ぐのと同様の細部と革新への注意が、この報告書だけでなく、我々の世界中のサプライヤーネットワークが確実に基準を維持するための作業にも反映されています。

我々全員が共有する環境は壊れやすいものです。気候変動との戦いや排出量の削減にこれまで以上に力を注いでいます。戦略的パートナーシップを通じて、当社のサプライヤーは二酸化炭素排出量を削減し、水やエネルギーなどの貴重な資源を節約に貢献しています。グリーンマニュファクチャリングはスマートマニュファクチャリングであり、より広く言えば、環境に良いものはビジネスにも良いことを理解しています。

新型コロナは前例のない挑戦となりましたが、同僚、友人、隣人の健康を改めて大切に思う人間愛から希望とインスピレーションを得ました。自分と他人の健康を思う気持ちは我々がいつも持てるものです。

人と地球を守る我々の取り組みに終わりはないかもしれませんが、この先に最高に明るい未来が待っていると今ほど確信したことはありません。

サビ・カーンはアップルのオペレーション担当上級副社長です。

サビは、サプライヤーに関する責任を含むアップルのグローバルサプライチェーンをリードしています。

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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