過去10年間に音楽業界は認識不能な状態に陥った。デジタル音額は王であり、楽曲はクラウド上で(作成)購入される。高速なコンピューター処理と低価格なハードウェアのおかげで、プロ用録音機材が誰の手にも届くようになった。人工知能はアルバムを作り、映画に音楽を加え、ゲームのムード音楽を生成した。ではAbbey Roadのような歴史的レコーディングスタジオは、進化するこの業界でどう位置づけられるのだろうか。
Abbey Road Studiosは、その方法を見つけるべく大きな一歩を進めた。代表のIsable Garveyによると、彼らは過去1年間スタートアップと会い、学界と話して現況を理解し、どうやって自分たちが関われるかを探った。その結果生まれたのが今年10月にスタートしたAbbey Road Redだ。RedはAbbey Roadのイノベーション部門として、音楽テクノロジーの起業家、研究者、開発者を支援するために作られた。
Redプログラムの一環として、Abbey Roadは同社が言うところのヨーロッパで唯一の音楽技術に特化したインキュベーターを立ち上げた。一般的な特典もあるが、この新しいプログラムの強みは主としてAbbey Roadおよび親会社であるUniversal Musicがもたらす業界との関係と経験、即ちアーティストとの直接アクセスだ。
これまでにAbbey Road Redと仕事をした最初で唯一の会社はTitan Realityだ。同社の製品、The Pulseはあらゆる楽器を演奏できるように作られた3Dコントローラーだ。
「われわれはアイデアがまとめる前の段階でTitanを見つけた。つまり彼らはわれわれの思考プロセスの一部だ。実際彼らは特殊なケースだった。一般にわれわれが求めるスタートアップにはいくつか条件がある。まずシードラウンドとシリーズAラウンドの間であること。社員は2人から10人程度。そしてもちろん、求めるものは他の誰とも同じ ― 創立CEOやパートナーたちの驚くほど力強い起業家精神だ。かなりテクノロジー中心であることが必要で、サービスやエージェンシーをベースとしたビジネスではない。そして音楽でなくてはならない。なぜならそれがわれわれの特長だから。
Abbey Road自身の偶像的歴史がさらなる興奮をもたらしていることは間違いない。Abbey Roadスタジオは、もちろんあのビートルズが100曲以上を録音したことで有名な場所だ。しかし、そこはまたピンク・フロイドの『狂気』、『スター・ウォーズ』や『007 スカイフォール』のサウンドトラック、さらには1930年代にステレオサウンドが誕生した地でもある。Redのチームはさりげなく振舞っているが、防音されたホールを歩けば、偉大な音楽と創造性の反響が感じられる。
Abbey RoadのRedインキュベーター、第1回クラスの申し込みは今日が締切だ。2月に始まる最初のプログラムでは3社を受け入れる。今回を逃がしても心配はいらない、Redインキュベーターは6ヵ月毎に3社のスタートアップを引き受ける。そして、もし少しでも金銭面が気になるなら、プログラムの特典の対価として、Abbey Roadは2%の株式および将来の投資ラウンドで市場価格で投資する権利を得る。それ以降、必要なのは愛だけ、だと彼らは考えている。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)