昨年良かったことといえば、識者たちがアプリの死滅について書くようになったことだ。
一時は消費者向けソフトウェア産業の救世主と目されたアプリも、今では飽和し、インパクトを失い、過少利用になり、過小評価になり、そして退屈なものになった。
そこに登場したのが、ロサンゼルスのMaple Mediaだ。同社がやろうとしているのは、アプリの整理統合〔ロールアップ、仮想バンドル化〕、市場のベストアプリを一体的にまとめて、それに対して強力なマーケティングとビジネス開発努力を注ぎ込む、という取り組みだ。
Maple MediaのファウンダーはMichael RitterとClark Landry、Ritterはロサンゼルスの中堅ゲームデベロッパーJam Cityの役員として長年、ビジネス開発を手がけてきた。Landryは、ロサンゼルスのスタートアップシーンで長年活躍してきたエンジェルだ。
Maple MediaはWalt Disney家の投資ファンドShamrock Capitalから3000万ドルを調達し、良質なゲームアプリや生産性アプリ、エンターテインメントアプリなどを探して買い上げている。
Landryによると、アプリは1本を、5桁から8桁の半ばという価額で買い上げる。〔数万ドル〜数千万ドル〕
目的は、いくつかのブランドを立ち上げること。そして、それを軸にパートナーシップを築き、そのアプリケーションのネットワーク全体に亙るまとまった広告収入で稼ぐ。ターゲットは国籍を問わないが、当面はヨーロッパからの英語化されたアプリをねらう。
Ritterによると、Maple Mediaはアプリデベロッパーの市場や業界をコントロールする位置に立ちたいわけではない。同社とアプリデベロッパーのパートナーシップの形は、売上分有(マージン)や少数株主権方式(マイノリティ投資)が主だ。
重要なのは、支配被支配の関係ではなく、ネットワークを築くこと。同社のプレスリリースによると、同社のプラットホーム上にはすでに150本のアプリケーションがあり、モバイル広告の月間インプレッション(到達)数は10億を超えている。同社はすでに、黒字だ。
“すばらしい才能のあるデベロッパーはたくさんいるけど、ビジネス開発のスキルはそれとは全然次元が違うからね”、とRitterは語る。“事業としての毎日の経営努力や、アプリの収益化努力などは、全然別のスキルだし、フルタイムの取り組みが必要なんだよ”。