アプリケーション開発に誰もが容易にAIを導入できるようにしたいSpice AIはMicrosoftスピンオフ

シアトルのSpice AIは、開発者が自分のアプリケーションの中でAIを容易に利用できるようにする。同社は今日(米国時間10/14)、100万ドルのシード資金を調達したことを発表した。

言うまでもなく大きなラウンドではないが、投資家たちの顔ぶれには目を見張るものがある。それらは、Madrona Venture GroupとPicus Capital、TA Ventures、そしてエンジェルはGitHubのCEO Nat Friedman氏とMicrosoft AzureのCTO Mark Russinovich氏だ。このプラットホームを支えるチームもそうそうたるメンバーで、CEOのLuke Kim氏はMicrosoftに10年いてAzureではIncubationsチームを共同で作り、エンジニアリングのチームを率いてDaprを創業した。またCTOのPhillip LeBlanc氏は、Azure Active DirectoryとVisual Studio App Centerで仕事をし、GitHub対応を担当した。

チームによると、AIをアプリケーションに組み込むことは今日ですら難しすぎる仕事だ。Microsoft時代にKim氏は、ニューロフィードバックの個人的プロジェクトを始めた。このような療法をもっと利用しやすくするために彼は、脳波のデータの時系列を分析するAIシステムを作ろうとしたが、それが今だに非常に難しいことを悟った。

彼曰く、「超難しくて、しかもおかしい。Microsoftにいたんだから、必要なリソースはすべてある。でもサイドプロジェクトをやろうとすると、リソースはどこにもない。しかも、どちらのケースでも、AIやMLをアプリケーションに統合することはすごい難関だった」。

彼によると、最近の10年間でAIは大きく進歩したが、その進歩を取り入れてインテリジェントなソフトウェアを作る技術はまだまだ未熟だ。


画像クレジット: SpiceAI

「このような状態を克服することが、AI技術にとって最後の1マイルだ、と思った。光ファイバーも、実際に家庭に普及するまでに何年もかかった。MLをアプリケーションで使いこなせるようになるためにも、同じことが言える。そのギャップを填めて開発者にとってとても容易な技術にすることを、目指している」、とKim氏は言う。

彼によると、Spice AIを創るにあたってDaprから学んだことが多かったが、Next.jsでVercelがやっていることなども参考になった。

今となっては、これらすべてが当たり前と思えるかもしれない。なぜなら、今や多くのスタートアップがAIの敷居を下げることを目指している。でもKimが主張するのは、彼らがやっているのは主にAIの可用性を容易にすることであり、データ分析やビジネスインテリジェンス(BI)に多くの人が容易にアクセスできることを目指している。しかしSpice AIがやろうとしているのは、開発者がAIをアプリケーションに楽に統合できるようにすることだ。だから同社のターゲットはデータサイエンスのチームではなく、プロのデベロッパーだ。

Spice AIのシステム構築でおもしろいのは、報酬関数を重視していることだ。つまり開発者は、アルゴリズムが何を目指して自分を最適化していくのかを指定できる。エアコンを制御するアプリケーションなら、消費電力を低くしたい。オーストリアのリテイラーと共に試行しているプロジェクトなら、顧客のオーダーの理想的なピックアップ(拾い上げ)位置を見つけたい。それは、つねに至近の場所とは限らない。運転時間やアイテムの可用性などの変項に依存するだろう。

同社はSpicerackと名付けたパッケージマネージャーも作っている。それによって開発者はマニフェストと自分の報酬関数を公開し、他の開発者が自分のユースケースで再利用できるようにする。

このようなプロジェクトの常として、Spice AIのチームもそのアイデアをオープンソースのプロジェクトとしてローンチしている。今後リリースする商用バージョンではエンタープライズのサポートも入ってくるが、チームはクラウドサービスのバージョンや、エンタープライズが自分のモデルをホストできるためのプライベートなレジストリも考えている(それを同社はSpicepodsと呼んでいる)。

Madrona Venture Groupのパートナーで最近までMicrosoft CloudのGM/COOだったAseem Datar氏はこう言っている: 「Madronaは10年近く、インテリジェントなアプリケーションに投資してきたが、AIの開発を既存のワークフローにシームレスに導入して、開発者が高品質なアプリケーションの構築を加速するという、LukeとPhillipのビジョンは刺激的だ。これはまだ始まったばかりであり、今後の彼らの旅路に同行できることはエキサイティングだ。このような有能なチームと初日から一緒に仕事をしてビジョンの実現に寄与できることはすばらしい」。

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Spice AI

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TechCrunch Japan

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