アマゾンがアプリストアの手数料引き下げとAWSクレジットで小規模開発者を支援

Apple(アップル)やGoogle(グーグル)といった大手アプリストアに続き、Amazon(アマゾン)がアプリ開発者を支援する「Amazon Appstore Small Business Accelerator Program」を間もなく開始すると、米国時間6月15日に発表した。この新しいプログラムは、対象となる売上の少ないアプリ開発者からアマゾンが受け取る手数料を削減するというもの。これまでAmazonアプリストアでは、アプリ内課金を含む収益の30%が手数料として徴収されていたが、今回のプログラムが開始になると、前年の収益が100万ドル(約1億1000万円)以下だった開発者は手数料が20%に引き下げられ、さらにAWS(アマゾン ウェブ サービス)のクレジットが提供される。

このプログラムの仕組みは、2020年末に発表されたアップルの「App Store Small Business Program」と似たものだ。アップルのプログラムでは、年間の収益が100万ドル以内であればアップルから差し引かれる手数料が15%に引き下げられ、100万ドルを超えると標準の30%に移行する。この手数料率は翌年に入っても継続される。一方、2021年になってからGoogleが取った方針はやや異なり、Google Playストアを通じて得た収益が毎年100万ドル分までは手数料が15%に引き下げられるというものだった。

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アマゾンが徴収する手数料はそれでも20%と、アップルやGoogleより依然として大きいが、これは開発者にAWSクレジットという別の特典を提供するためだ。

同社によると、1暦年におけるAmazonアプリストアからの収益が100万ドルに満たない開発者は、収益の10%をAWSサービスのプロモーションクレジットとして受け取ることができるという。これによって開発者が利用できるAWSサービスには、コンピューティング、ストレージ、データベースなどのインフラストラクチャー技術から、機械学習や人工知能、データレイクやアナリティクス、IoT(モノのインターネット)などの新興技術まで含まれると、アマゾンは述べている。このAWSのクレジットに手数料の減額を合わせると、開発者は最大で収益の90%相当を受け取ることができると、アマゾンは主張する。

開発者の収益が当年中に100万ドルを超えると、標準手数料率に戻り、年内はAWSクレジットを受け取れなくなる。

翌年以降に開発者の収益が再び100万ドルを下回った場合は、その次の暦年には再びプログラムの対象となる。

「私たちは、クレジットを通じて小規模な事業者がAWSを使い始められるように支援し、そのアプリビジネスを容易に構築・成長させることができるようにしたいと考えています」と、AmazonアプリストアのディレクターであるPalanidaran Chidambaram(パラニダラン・チダンバラム)氏は発表の中で述べ「AWSを使うことで、開発者は幅広い技術に簡単にアクセスでき、革新を加速させ、想像できるほとんどすべてのものを構築できるようになります」と続けている。

アプリストアの手数料を引き下げる動きの背景には、大手テック企業のビジネスの性質に対して、Basecamp(ベースキャンプ)、Spotify(スポティファイ)、Epic Games(エピック・ゲームズ)などの大規模なアプリパブリッシャーが反競争的であると主張し、規制当局からの圧力が強まっているという現況がある。Epic Gamesはアプリストアの手数料をめぐってアップルを提訴しており、この裁判の結果が前例となる可能性もある。このような状況に対応し、アップルとGoogleは善意の表れとして、自社のアプリストアプラットフォームの収益に大きな影響を与えない範囲で、小規模事業者から徴収する手数料を引き下げることにしたのだ。

アマゾンによると、この新しいプログラムは2021年第4四半期に開始となる予定で、参加方法についての詳細はその時に発表されるという。

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画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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