モバイル決済サービスAlipayを展開するアリババグループの金融サービス会社Ant Financialは、投資ラウンドシリーズCを締め切り、累計140億ドルもの資金を調達したことを明らかにした。
この巨額調達に関しては、いくつかのメディアがAntを取り上げるなど、この1、2カ月噂が飛び交っていた。それはIPOと関連づけられていて、少なくとも90億ドルの資金を調達し、評価額は1000億ドル超となるというものだった。しかし、実際の数字はそれを上回るものだった。
今回の資金は、地元の投資家による米国ドルと中国人民元での分割発行だ。投資家には、シンガポールの政府系ソブリンファンドであるGICとTemasek、マレーシア政府系ソブリンファンドのKhazanah Nasional Berhad、米国のプライベートエクイティWarburg Pincus、カナダ年金基金投資委員会、Silver Lake and General Atlanticが含まれる。
Antは調達した資金でグローバル展開し(すでに進出している中国外マーケットでのプレゼンスを高める)、テクノロジーの開発や雇用にも注入する。
Ant FinancialのCEOで経営執行役会長のEric Jingは「私たちのビジョンとミッションを共有する投資家を迎えられることを嬉しく思う。今後、我々は共に包括的な金融サービスをグローバルで展開し、平等な機会を世界にもたらす。我々は過去14年間、人々の暮らしや小規模事業者に貢献してきた。そのことを誇りに思うし、その事実は我々を勇気付けるものだ」とコメントした。
Antは、アリババが2014年に米国で大規模な新規株式公開をする直前にスピンオフした企業で、アリババはAntに出資していない。しかしアリババは最近、Antの株式の33%を取得している。
Antは長い間、株式公開すると予想されてきた。2016年に45億ドルを調達した時には、株式公開を検討していると報道されたが、その代わり資本金を600億ドルにすることを選択した。
今回もそれに似ているが、額が大きい。Bloombergの報道によると、今回のシリーズCラウンドで企業価値を1000億ドル増やした(Antは企業価値についてコメントしていない)。このような飛躍を成し遂げるのに、Antは過去2年で一体どんなことをしたのだろう。
Antは、5億人の顧客に、デジタルバンキングや投資サービスなどを行うAlipayを提供していており、中国における主要なフィンテック企業の1社だ。しかし近年は海外で同様のビジネスの展開を始めている。特に、インド、タイ、韓国、インドネシア、香港、マレーシア、フィリピン、パキスタン、バングラデシュといったアジアの国々で投資を行ったり、ジョイントベンチャーを立ち上げたり、そして新事業を展開したりしている。
しかしながら、米国で企てたMoneyGramの買収は、米国政府がこの12億ドルの案件を阻止し、失敗に終わっている。
経営面に目を向けると、Antは昨年14億ドルの利益を計上したとされる。株式を公開すればこの数字はさらに大きなものとなることは明らかだ。
米国での買収は成功しなかったにもかかわらず、今日のAntの発表によると同社が抱える顧客はグローバルで8億7000万人にものぼるという。しかし、中国以外でのビジネスはまだ初期段階にあり、現時点では、私はこの数字については半信半疑だ。しかしながら、今後、中国と同じくらいの規模のビジネスをアジア各国で展開するというのは大いにあり得る。世界のほとんどのIPOを上回るほどの大規模な資金調達を1回のラウンドで行ったことで、海外展開のプランは強固なものとなる。
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(翻訳:Mizoguchi)