アーリーステージの企業がShippoのシリーズAから学ぶべきこと

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シリーズAのクロージングは難しいことで有名だ。その厳しさから”シリーズA危機”という言葉が生み出されるほどである。また、シードラウンドで資金調達に成功したスタートアップのうち、25%しかシリーズAをクローズできないとも推定されている。

複数の配送会社に対応したAPIを提供しているShippoは、その苦難を乗り越えたスタートアップのひとつだ。先月同社は、USVをリードインベスターとするシリーズAで700万ドルを調達したと発表し、今後USVのAlbert Wengerを取締役として迎える予定だ。

他の起業家がShippoの経験から学べるよう、彼らは特別な計らいとして、シードラウンドとシリーズAで使われたプレゼン資料を一般公開することを決めた(記事の末尾参照)。プレゼン資料からは機密情報が取り除かれているものの、Shippo CEOのLaura Behrens Wuはそれぞれの資金調達の詳細について話をしてくれた。

TC:2014年にシードラウンドで資金調達をしようとしていたときの話からはじめましょう。いつ頃資金調達の必要性を感じましたか?また、その時はどんなゴールに向かって進んでいましたか?

Wu:Shippoをはじめてから7ヶ月経った頃に資金調達を決断しました。最初の4ヶ月は手持ちの資金を使い、残りの3ヶ月は500 Startupsのプログラムに所属していて、Shippoの成長に関する数字を確認したとき資金調達の必要性に気づきました。機能しているプロダクト・満足している顧客・取引量の増加という、ビジネスに最低限必要なものはその頃既に揃っていたんです。一方で、その当時私たちのプロダクトがヒットしていたとも、市場にフィットしていたとも言えないんですけどね。その頃から何度も何度もプロダクトの改良を行ってきましたし!

新米ファウンダーだった私たちは、Shippoのビジネスに参加して会社の成長を手助けしてくれるような支援者を探していました。また、事業の成長に専念できるよう、資金調達のプロセスは本業とは全く別のスケジュールで捉えるようにしていました。

TC:あなたと共同ファウンダーのSimonはどちらも外国人ファウンダーですよね。アメリカではどのように投資家とのネットワークを作っていったんですか?

Wu:当初は500 Startupsを通じてでしたが、その後は自分自身の評判を高めることでネットワークを築いていきました。さまざまな場面で会う投資家(や他のファウンダーなど全員)に、自分のことを、信頼に値し責任感がある人だと考えてもらいたいですよね。そのためにも、自分が約束したことを必ずやり遂げるということが大切です。アドバイスをもらって人の時間を使っておきながら、なにもアクションを起こさないなんてことは、絶対にしてはいけません。

TC:当時のShippoの段階において、投資家はどのような指標を重要視していたんですか?

Wu:投資家はトラクションの兆候を見たがっていました。私たちは、ユーザーが常にShippoを利用し、気に入っている(利用率・継続率の増加、低い解約率などを指標として)ということを投資家に証明することができました。また、常に議論にあがっていたのが市場規模で、支援先企業にとって十分な可能性がその市場にあるのかというのを彼らは知りたがっていました。

TC:シードステージにある企業には、何も指標がなかったり、あったとしても価値ある洞察が得られるほどではないという場合が多いと思いますが、彼らにはどのようなアドバイスをしますか?

Wu:ひとつのKPIを重視するということですね。指標を得たいがために複数の指標を準備する必要はありません。本当に意味のある数値だけに集中するんです。もしもそれが何か分からない場合(もしくは目標に到達しない場合)は、お客さんが自分たちのプロダクト無しでは生きていけないと思うほど、彼らを満足させることに集中すればいいんです。

TC:投資家を説得させるのが最も難しかったことはなんですか?

Wu:マーケットプレイスやECが盛り上がっている一方、配送業に注目している投資家はあまりいませんでした。配送業に隠された問題を知らない人にとっては、とても地味な業界ですからね。しかし、そのうち問題の深層や、私たちのプロダクトがどのようにその問題を解決できるか、さらにはそこからどのようなデータが得られるか、といったことにある人が気づきはじめると、段々と興奮が高まっていったんです。

TC:ラウンドはクローズまでにどのくらいかかりましたか?また、ラウンド自体はどのように構成されていたんですか?

Wu:私たちが資金調達に注力しようと決めてからは、全部ひっくるめて約4ヶ月程度かかりました。その間に125もの投資家と話をしました。一旦勢いづくと、とても上手く進んで行き、全てが3週間のうちにまとまりました。当時はYC Safeがまだなかったので、法律事務所が用意した通常のコンバーティブル・ノートの書類を準備して、Jeff Clavierがそれを基にプライスドラウンドを計画しました(これはとても一般的な書類とプロセス)。

他社とちょっと違っていたのは、シード段階のプライスドラウンドで取締役のポジションを投資家に渡したことですかね(これは一般的なアドバイスに反する動き)。しかしこれは私たちにとって、とても価値のあることでした。シード段階で取締役になるということは、私たちが成功するまで支援し協力するという覚悟をその投資家が持っているという表れですからね。私たちがシリーズAで資金調達した際に、Jeffは取締役のボジションをはずれ、通例に従ってシリーズAの投資家が取締役になれるよう席を空けてくれました。

TC:会社をシードステージからシリーズAで資金調達ができるようになるまで成長させる上で、1番大変だったことはなんですか?

Wu:ファウンダーに期待される役割がすごい速さで変わっていくことです。もともとは全て自分たちでやっていたのに、専門家を雇って権限を委譲していなかければいけません。そしてファウンダーとしての私たちの役目は、会社がスケールするにつれて目まぐるしく変わっていきます。チームが出来上がってくると狂乱状態がおさまってきて、より大きな課題に取り組めるようになるんですが、それでもプレッシャーは変わらずそこにあります。ただ、そのプレッシャーは当初のものとは少し性質が違うような気がします。

TC:スタッフの雇用というのはどのファウンダーも直面する課題のようですが、どうやって効率的に人を雇う術を学んだのですか?

Wu:当初は、以前自分の下で働いていた人や一緒に働いていた人など、知り合いを当たるのが1番の手段でした。しかしそれでは数が稼げません。

私たちは、大規模な雇用方法についてはまだまだ模索している最中です。雇用は、一時期私が自分の時間の約80%を費やしていた程、シリーズA後のShippoにとって大きな焦点のひとつとなっています。現在私たちは、リクルーターや紹介ボーナス、ブランディング、カンファレンス参加など、さまざまな方法を試しているところです。近いうちに新しい情報を共有できればと思っておりますのでお楽しみに!

TC:シリーズAでは、どのようにアプローチ先となるVCを決めましたか?シードラウンドと比較して話をしたVCの数に変化はありましたか?

Wu:シリーズAでは25社のVCと話をしました。さらに私たちは、組織としてのVCだけでなく、その中にいるパートナーという存在に重きを置いていました。また、これまでに大型のマーケットプレイスやEC企業の立ち上げに関わったことがあり、願わくばECショップが日々直面している配送に関する問題点を理解しているような投資家と仕事をしたいと考えていたんです。結果的に、シードラウンドの投資家の支援を引き続き受けると同時に、USVのAlbert WengerがShippoに参加することとなり、私たちは興奮しました。Albertが持つTwilio(別のAPI企業)とEtsyでの経験は、非常に貴重ですからね。

シードラウンドに比べるとずっとタイトな日程でしたが、自分たちのスケジュールに沿って、プロセスに振り回されるのではなく、私たちの方からプロセスを進めていきました。

TC:プレゼン資料以外に、デュー・デリジェンスの一環として何か別の資料を準備しましたか?

Wu:シリーズAのミーティングに向けて、Shippoのフィナンシャルモデルと収支予測が正確かつ完全かというのをチェックし、顧客からの推薦状も持っていきました。さらにはSocial Capitalのmagic 8-ball分析を行い、これは投資家だけでなく私たちにとっても大変有益な情報でした。今でも会社の状況を確認するために分析結果を使っています。

TC:シリーズAでの資金調達前に知っておけばよかったと思うことは何ですか?

Wu:数週間の間でシリーズAの投資家について深く知ることはできないため、彼らとは資金調達のプロセスを開始するずっと前から関係性を築きはじめなければいけません。そして資金調達の段階で、既にどの投資家に参加して欲しいかというのが分かっていれば、彼らとの会議がもっと効果的なものになります。

TC: Shippoの投資家であるAlbert Wenger(USV)やJeff Clavier(SoftTech VC)とはよく話をしているようですが、積極的なアドバイザーの存在はどのくらい重要だと思いますか?

Wu:Jeffとは月次の電話ミーティングをしていますが、それだけでなく必要に応じて彼とは連絡をとっています。何かあればどんなときでも彼にテキストを送っていますし、Albertについても同じことが言えます!

私は定期的に連絡をとることで信頼関係が構築されると強く信じています。投資家は(悪い)ニュースを聞いたときに驚くべきではないと思いますし、彼らとは常に会社の動向に関する最新情報を共有すべきだと思います。つまり、取締役会の場にサプライズがあってはいけません。

Version OneのBoris WertzFundersClub、500 Startups、Jeff、Albertは、大企業との交渉の場や、見込み顧客への紹介、採用者候補の選定、オペレーションに関するアドバイスなど、さまざまな場面で私たちにとってかけがえのない存在でした。

TC:シリーズAに到達するのは大変ですが、シリーズBに到達するのも同じくらい大変ですよね。今後Shippoの成長を持続または改善するにあたって、どんなことを考えていますか?

Wu:成長を続けるには、繰り返しになりますが人材の雇用が不可欠です。Simonと私しか会社にいなかった頃は、私たちが全部やらなければいけませんでした。でも今は、自分たちのやっていたことを他の人ができるようにしなければいけません。そのためには、仕組みやプロセスが必要で、現在専門家の力を借りながらそのシステムを構築しようとしています。最高の幹部陣を揃えるのは本当に重要です。

また、私たちは話をした全ての投資家から資金を調達したわけではありません。その代わり資金調達のプロセスで、たくさんの素晴らしいフィードバックを得ることができました。そのフィードバックを持ち帰って、私たちの事業のさまざまな点を改善するのに使おうとしているところです。

TC:Shippoの次の一手は何でしょうか?

Wu:私たちはどんな企業や人に対しても、よりスマートにものを送ることができるテクノロジーを提供したいと考えています。

Shippo Seed Deck

Shippo Series A Deck

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。