インターネットでフラット化した世界のこれから


編集部注記: Alec Oxenford は、アメリカでオンラインのグローバル広告掲示板を運営する OLXのファウンダーである。

インターネットは急速に世界をフラットにし、経済における役割も以前とは異なるものとなっている。新興国でのインターネットの普及が進み、それに伴いインターネット関連の起業も相次いでいる。インド、中国、南アメリカ、アフリカでは既に大きく成長したスタートアップが誕生している。Alibabaはその中でも突出している企業ではあるが、他にもこのような企業はたくさんある。

しかし、先進国がこのような企業とそれらが地盤とする新興市場に注意を向けることは少ない。(Alibabaの数ヶ月にも及ぶ大規模な広報活動を持ってしてもだ。)多くの起業家にとってこれは朗報ではあるが、先進国の人はこれを機に目を覚まさなければならない。

AlibabaのIPOで興味深かったのは、予想通りの成功を収めたということもあるが、2014年までアメリカや他の地域でもAlibabaを知る人があまりに少なかったことだ。周知の通り、Alibabaは巨大な企業だ。15年前からビジネスを続け、去年は1日の売上が90億ドルを記録 したこともある。

アメリカでほぼ注目されていない企業が、歴史上最も大きいIPOを行えたのにはどのような背景があったのか?これはきっとAlibabaに限ることではないだろう。Alibabaのような成功は世界のテクノロジーセクターの何を表しているのか?

この質問の根底には、これからこの議論をますます重要なものにする一つの事実がある。それは、モバイルの普及により何万もの人がインターネットを利用できる ようになってきたこと、そしてFacebookのInternet.org のように世界中にインターネットを普及させようとする活動が行われてることで、相対的にアメリカのインターネットにおける存在感が小さくなっているということだ。

国際連合の情報と通信技術の専門機関である国際電気通信連合によると、現在モバイルブロードバンドのサブスクリプション数における新興国が占める割合は55% であり、2008年の20%から激増した。このレポートでは、モバイル端末のサブスクリプション数は、全世界の人口数に迫りつつあるとも報告している。それは一人が複数の端末を所有しているという理由だけではない筈だ。

アメリカは何故これに注目すべきなのか。それは、Alibaba、Tencent、Flipkart、Snapdeal、Baidu、Justdial、Mercadolibreのような企業がアメリカ市場以外の所で誕生し、ここまで成長することができたのは、アメリカの企業が残した市場のチャンスを見逃さなかったからだ。

人口が2億人に迫りつつあるナイジェリアは、 アフリカ最大のテクノロジーの中心地になろうとしている。しかし、不可解なことに、今までを振り返ってもこの急成長中のテクノロジーセクターに投資しているのは10社しかいないという話も聞く。一方で、Uberを見てみると、30以上の投資家の支援を受けている。いかに偏っているかが分かるだろう。

特定の市場にフォーカスし、勢いのある企業は何故アメリカ市場に進出することには積極的でないのか?より良い質問は、何故、他の企業は時間とリソースを投資して、ナイジェリア、インド、ブラジルといった急成長する市場で事業を展開しないのか?このような市場には潜在的な成長の機会も多く、既に発展したアメリカや西ヨーロッパの市場より低い競争率の中で、高い利益が見込める場合が多いだろう。

自国の市場を、例えばバンガロールの市場より理解しているという考えがこのような状況を生んでいるのだろう。確かに、この考え方は自然であるし論理的である。しかし、私は新興市場におけるコンシューマーの動きを観察したり、実際に足を運んだりすることに多くの時間を費やして感じたことがある。それは、良く言われていることでもあるが、私たちコンシューマーの行動は驚くほど似通っているということだ。つまり皆基本的な要因に影響されて行動するのだ。ボストンの人とブエノスアイレスにいる私とでは物事の優先順位は異なるだろう。例えば、サッカーへの関心とかだ。しかし私たちは皆、生活の質を良くしたいという共通した思いがあるのは間違いないだろう。この思いは特にEコマースでのインターネット上の行動の誘因となる。

このような事実は、統一が進む世界の経済とテクノロジーセクターにとってどのような意味を持つのだろうか?インターネットの初期の段階では、AOLやYahooといったweb 1.0を代表するインターネット企業がアメリカ市場を席巻した。インターネットは次第に成熟し、現在はインターネットの第二段階であると言える。ここでは、Facebook、Google、YouTube、Appleが瞬く間に巨大企業へと発展し、初めて真のグローバルなインターネット企業となった。

では、第三段階ではどうなるのだろうか。Alibabaのような多国籍プレイヤーがアメリカのコンシューマーを獲得する為にアメリカ国内の企業と市場を争うようになる日は近いだろう。この動きはまだ進んではいないし、GoolgeやAmazonといったアメリカに地盤を築いている企業と張り合うのは難しいことではある。しかし、今後アメリカを席巻するインターネットプラットフォームが新興市場から生まれる可能性は多いにあるだろう。

インターネットはあなたが思うよりもずっとフラットにチャンスを与えるのだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。