インターネット上の音楽をソフトウェアで自動的にマスタリングするLANDRが$6.2Mを調達

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自分の曲をSoundCloudにアップロードしたけど、音がいまいち、Timbalandがプロデュースしたような、パワフルな音にしたい、と思っているミュージシャンは多いはず。そんな彼らのためにビッグデータ分析を利用して音楽のマスタリングをするLANDRが、620万ドルの資金を調達した。

このシリーズAのラウンドをリードしたのはWarner Music Groupで、前からの投資家Real VenturesとYUL Venturesが参加した。ラッパーでレコードプロデューサーのNasや、DJのRichie HawtinとTigaとJohn AcquavivaとPete Tongが始めたファンドPlus Eight Private Equity、そしてHDGLも参加した。

マスタリングというのは、アルバム制作の最後の段階で、それまでに録音したすべての音を、ミックスして一つにまとめる仕事だ。レコードやCDの原盤(マスター)を作る、という意味でマスタリングと呼ぶ。

LANDRのCEO Pascal Pilonはこう説明する: “マスタリングは要するに音に臨場感を与える仕事で、まるでバンドが自分の目の前で演奏しているような音を作り出すんだ。ふつうはいろんな楽器やボーカルなどをばらばらに録音して、それらをミキシングするから、その段階ではナマの臨場感はまったくない”。

プロのレコーディングアーチストはマスタリングの技術者を起用して、各楽器の音量や、低音のレベル、曲の圧縮(無駄を削ぎ落とす)などをやってもらう。そのために、一曲あたり数千ドルかかることもある。

“ナマのステージでは、できるだけ良い音が出るように、セッティングに時間をかけることができる。でもインターネット上のストリーミングは、そこが弱いね”、DJでLANDRに投資もしているJohn Acquavivaはこう述べる。

LANDRはインターネット上の音楽をナマなみの迫力にするために、人工知能によるマスタリングエンジンを利用する。そのサービスの料金は、ユーザが求める音のクォリティによって、月額6ドルから39ドルまでだ。

Pilonは曰く、“これまでの50年ぶんぐらいの、何万ものファイルや曲を分析して、マスタリングの技術者たちが下(くだ)している意思決定のタイプを理解した。そしてそういう意思決定を、リアルタイムで再現できるようにした”。

マスタリングは、技術的なプロセスであると同時に、クリエイティブな仕事でもある。たとえばEDMの曲をアコースティックギターでカバーした場合、マスタリングは原曲とはまったく違ったものになる。

だからLANDRも、少なくとも今のところは、人間技術者を超えた、とは豪語しない。これまで同社はおよそ50名のオーディオやマスタリングの専門家たちによってその技術を磨いてきたが、現状では25万人のユーザの多くが、お金を払ってマスタリングの専門技術者を起用することのできない、アマチュアたちだ。

“ミュージシャンやプロデューサーの多くがGarageBandなどのソフトウェアを使って曲を作っているが、低予算のため、最後のマスタリングの工程を省くことが多い。だから、まとまりのない、未完成な曲が、そのままアップロードされるのだ”、とPilonは語る。

最近は、プロのアーチストがLANDRを使って、途中の段階の試作的なミキシングやマスタリングを素早く行う、という例が増えているそうだ。彼らは制作のいちばん最後に、金と時間をかけて、人間技術者を起用するのだ。

LANDRのマスタリングエンジンIonianは、今1.0だが、Pilonの究極の目標は、SpotifyやSoundcloudなどのストリーミングサービスが、そのすべてのオンラインオーディオに、マスタリングのいわばスタンダードとして、LANDRを使ってくれることだ。

“うちを使うと、どんなクリエイターの音でも良い音になるから、LANDRはインターネット音楽のための、誰もが使う標準技術になりたい。今後は、音楽だけでなく、ビデオの画質向上にも挑戦したい”、とPilonは語っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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