国境を接する2大国間の地政学的緊張が激化する中、インド政府は人気モバイルゲームアプリPUBGなど100種類以上をインドのサイバーセキュリティに対する脅威として禁止した。
9月2日インドのIT省は「インドの主権、統合、国防及び公の秩序に対して有害な影響を与える」ことを理由に118種類のアプリを新たに禁止した。この措置は「何千万ものインドのインターネットおよびモバイルネットワークのユーザーを守るためのものだ」という。
今回の措置は2カ月前にインド政府が、TikTok、Alibaba傘下のUCブラウザ、UCニュースなど59種類のアプリを禁止したのに続くものだ。インドはTikTok最大の外国市場だった。
今回禁止されたアプリには、検索エンジンのBaidu(バイドゥ)、企業向け共同作業アプリのWeChat Work、クラウドストレージのTencent Weiyun、ゲームのRise of Kingdoms、ユーティリティのAPUS Launcher、TikTok用VPNサービス、eコマースのMobile Taobao、ビデオホスティングのYouko、ニュースポータルのSina News、カードリーダーのCamCardなどに加えて、PUBGのライト版などが含まれる(禁止されたアプリのリストはこちら)。
今回禁止リストに追加されたアプリの中ではPUBGが段違いにユーザー数が大きい。モバイルアプリの分析企業であるSensor Towerによれば、インドにおける7月の月間アクティブユーザーは4000万人以上だった。インドはPUBGの累計インストール数の4分の1を占めるという。PUGB自体の開発元は韓国企業だが、中国でのゲームの配信については中国のネット大手のTencent(テンセント)が手掛けている。
インドのエレクトロニクスおよびインフォメーションテクノロジー省は声明で「我々は多方面から繰り返しこの問題に関する指摘を受けていた。これにはAndroidとiOSプラットフォーム上のいくつかのモバイルアプリがユーザーデータを盗み、承認を得ないまま常習的にインド国外のサーバーに送信していたという複数の報告を含む。インドの主権とユーザーのプライバシーを害するこれらのアプリに対して厳しい措置を取るべきだとする公衆の意見が高まってていた」と述べている。
世界最大と第2位の人口を誇る両国間の緊張は今年に入って激しく激しさを増した。ヒマラヤの国境紛争地帯における衝突で20人以上のインド兵が中国軍に殺害されるという事件が起きた後、「中国ボイコット」がインドにおけるTwitterのトレンドのトップを占めるようになった。多くのインドのユーザーが中国製スマートフォンやテレビなどの製品を壊すビデオをソーシャルメディアにアップしている。
今年4月にインドは外国投資に関する規制を大幅に見直し中国の投資家に対し事前に政府の承認を得ることを義務付けた。これら中国の投資家は近年インドのスタートアップに対し数十億ドルの投資を行っていた。この後、インドのスタートアップエコノミーにおける中国投資家の地位は大きく後退している。先月アリババグループはインドにおける新たな投資を少なくとも向こう半年中止したと報じられた。
8月31日にインド国防省は「先週末、両国の既存の取り決めに反し、国境地帯における領土拡大を図る中国軍によってインド軍が妨害を受けた」と発表している。
画像:Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)