インドのスタートアップが集結しグーグルの「独占」に対抗するアプリストアを計画

インドでどの企業よりも多くのインターネットユーザーにリーチし、同国のスマートフォン市場の99%を占めるGoogle(グーグル)は、その世界第2位の規模を誇るインターネット市場において、意外な相手から挑戦を受けることになった。インドのトップ起業家集団だ。

インドの数十社のスタートアップや企業は、同盟を結成してアプリストアを開設し、グーグルへの依存度を減らそうと画策していると、この件に詳しい情報筋5人がTechCrunchに伝えてくれた。

この起業家の名簿には、インドで最高の評価額を誇るPaytm(ペイティエム)の共同創設者で最高責任者のVijay Shekhar Sharma(ビジェイ・シェカー・シャルマ)氏、オンライン旅行会社MakeMyTrip(メイクマイトリップ)のDeep Kalra(ディープ・カルラ)氏、そのほか、PolicyBazaar(ポリシーバザー)やSharechat(シェアチャット)の企業幹部など著名な人物が名を連ねている。

これに参加する起業家は増え続けており、インドでのグーグルの「独占的」な地位を懸念し、Playストアの不平等で一貫性のない同国での強制的なガイドラインへの不満を口々に表明している。

数週間前から始まったこの議論は、Google Playストアでアプリを販売する開発者は、来年からそれぞれのアプリ関連収益の30%もの分け前をグーグルに支払わなければならないと同社が発表したあとの9月29日火曜日からエスカレートしている。

インドの「トップのスタートアップと企業のほぼ全社」から企業幹部数十名が火曜日の呼び掛けに応じ、今後の対応を話し合ったと匿名を条件に一部の人たちが教えてくれた。「売り上げの30%をグーグルに収めるという話は、とうてい受け入れられない」と呼び掛けに参加した全員が同意した。

フィットネス・スタートアップGOQii(ゴーキー)の創業者であるVishal Gondal(ビシャル・ゴンダル)氏は、この話し合いがあったことを認め、Playストアに代わるアプリストアを開設すれば、インドのアプリエコシステムを即座に救済できると話していた。

TechCrunchは9月29日、Paytmに連絡を取ったがコメントは得られなかった。ここ数カ月、インドの主要スタートアップ数社は、この業界のいくつかの企業に対して、地元のエコシステムの育成に非協力的であるとして失望を表明した。

一部の企業とグーグルとの間の緊張は、同社がPlayストアの賭博的なポリシーのさらなる変更を受け、この数カ月間で表面化してきた。この変更は、クリケットのインド・プレミアリーグ・トーナメントが開催されている間にひと儲けしようと考えていたインドの数多くのスタートアップに衝撃を与えた。

グーグルは、Playストアのポリシーに再三違反しているとして、Paytmの看板アプリを同ストアから一時的に削除した。この同社の処置に失望したPaytmのシャルマ氏は、テレビのインタビューで「これはインドのアプリエコシステムの問題です。非常に多くの起業家が私たちのところへ訴えてきています。この国にデジタルビジネスが確立されていると信じる人は、それは他人の手による恩恵で支えられているものであり、そこにはこの国のルールや規制が及ばないことを知るべきです」と語っていた。

グーグルは、先月TechCrunchが記事にしたHotstar(ホットスター)を含む数社に通達を出した。インドの新聞Economic Times(エコノミック・タイムズ)は9月30日、食事の出前スタートアップであるSwiggy(スウィギー)とZomato(ゾマト)にも警告を発したと報じている。

ハーバード・ロースクールの ¥Labor and Worklife Program(労働および仕事と生活プログラム)名誉フェローのVivek Wadhwa(ビビェック・ワドワ)氏は、インドの起業家の結束を称賛し、シリコンバレーの巨人であるグーグルを、東インド会社が台頭しインドで略奪を働いていた時代になぞらえた。「現代のテック企業は、同様のリスクをもたらします」と同氏はTechCrunchに話した。

一部の参加者は、低迷する経済の自分たちの手で復興させようと市民に訴えかけているインド政府が、彼らの運動を支援することを期待している。

Androidの普及率とは別に、今のグーグルはインドのモバイル決済市場をも支配していることを、TechCrunchは今年の初めに伝えた。

インドのひと握りのスタートアップを支援するこの巨大企業は、いくつものインドの業界団体にも所属し、今年の初めにはMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏の電気通信最大手Jio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)に45億ドル(約4800億円)を投資している。

石油化学の大手企業Reliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)を経営するインド最大の富豪であるアンバニ氏は、インドのナレンドラ・モディ首相と仲がいい。Jio Platformsは今年、グーグル、Facebook(フェイスブック)、その他11の著名投資家から200億ドル(約2兆1000億円)を超える投資を引き出した。

このJio Platformsへの巨額の投資は、業界の大勢の企業幹部たちを困惑させた。「規制当局の協力が必要だという以外に、FacebookがJio Platformsに投資するビジネスケースを思いつきません」と著名なエンジェル投資家Miten Sampat(ミテン・サンパット)氏は9月30日水曜日に配信されたポッドキャストで述べていた。

グーグルは7月、Jin Platformsと低価格なAndroidスマートフォンで協力すると話していた。Jio Platformは、今後3年間で2億台ものスマートフォンを販売する計画を立てていると、複数の開発業者向けの勧誘で同社は公言している。Jio Platformsのスマートフォン製造計画を最初に報じたのはBloomberg(ブルームバーグ)だった。

このスマートフォンでは、現在4000万台近くが流通しているフィーチャーフォンであるJioPhoneの場合と同じく、Jioによって審査され認証された数十本のアプリのみを揃えたアプリストアが利用できるようになると、Jio Platformsの説明を聞いた開発者は話していた。業界のある企業幹部は、Jioのアプリストアは塀で囲まれた庭だと表現していた。

スタートアップ創設者の有望で現実味のある選択肢は、サムスンが支援するサードパーティーのアプリストアIndus OS(インダス・オーエス)だろう。先月、月間アクティブユーザーが1億人を超えたと言われている。今週初めの時点で、Paytmやその他の企業は「まだindusOSと話しをしていない」とこの件に詳しい人物は話していた。

画像クレジット:Anindito Mukherjee / Bloomberg / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。