インド最大のEdTechスタートアップByju’sが米国の読書プラットフォームEpicを約550億円で買収

Byju’s(バイジュース)は7月21日、カリフォルニアに本社を置く読書プラットフォームのEpic(エピック)を5億ドル(約550億円)で買収したと発表した。インドで評価額が最大のスタートアップByju’sが米国マーケットで事業を拡大する最新の動きだ。

買収取引は現金と株式によるもので、Epicの創業者であるKevin Donahue(ケビン・ドナヒュー)氏とSuren Markosian(スレン・マーコシアン)氏が引き続きEpicを率いる、とByju’sはTechCrunchとのインタビューで述べた。

Epicは社名を冠した、12歳以下の子ども向けのデジタル読書プラットフォームを展開している。米国の小学校の90%で活用されている同プラットフォームは、200万人超の教師と5000万人もの児童(2020年の2000万人から増加した)が使用している。

初期投資家にEvolution Mediaを抱えるEpicは、何人の子どもが本を読んでいるか、どれくらい読書に関わっているか、どこで関心が薄れ始めるかなど、リアルタイムの匿名化および集約されたデータを集めて分析している。Netflix風の動きの中で、Epicはまたオリジナル本の紙バージョンのリリースも開始した。

TechCrunchは3月に、Byju’sがEpic買収を交渉中だと報じた。ドナヒュー氏とマーコシアン氏はByju’sと関わりがある。2人がByju’sの共同創業者でCEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)氏と最初に会ったのは4〜5年前だが、買収話が始まったのは2021年だと2人は話した。

レヴィーンドラン氏(写真)はインタビューで、自身の息子がアプリを使っていて、それがきっかけとなってスタートアップを起業する機会を真剣に追求するようになったと述べた。

「我々は約8年前に、あらゆる子どもに本を提供する、という目標でEpicを創業しました。テクノロジーを通じて子どもを読書に夢中にさせることができ、子どもと読書の間にある障壁を取り除くことができると考えたのです。当社のプラットフォームはいま、米国のほとんどの学校で活用されていて、5000万人超の子どもにリーチし、10億冊の本が読まれました」とマーコシアン氏は話した。

「このプラットフォームの構築は個人的な思いからです。我々の子どもにもっと本を読んで欲しいのです。ですので、この点を鑑みて世界にプラットフォームを拡大することに目を向けるのは我々に取って理にかなったものでした。バイジューと話し始めたとき、教育に対する情熱、そしてテクノロジーが教育の機会を広げるのに役立つという信念を共有していることに気づきました。バイジューとともに我々はEpicを次のレベルにもっていくことができます」とマーコシアン氏は語った。

Epicがリリースしたオリジナル作品(画像クレジット:Epic)

米国での事業拡大

Byju’sにとって新しいプロダクトは現在のポートフォリオを拡大し、同社が探し求めてきた米国についての専門性をもたらす、とレヴィーンドラン氏は述べた。Byju’sのサービスへのEpic追加は「読書は子どもの学習にとってパワフルなフォーマットであるため、プロダクトという観点から賞賛すべきものです」とも話した。

「Epicのプロダクトの提供は米国の生徒にさらなるオプションをもたらし、当社がサービスを提供しようとしてきた層にリーチするのに役立つでしょう。Epicはこうした層をよく理解しています」とレヴィーンドラン氏は指摘した。

​Byju’s​は2021年初め、コーディングと数学をオンラインと非オンラインで提供し、またラインナップに音楽、英語、美術、科学を加える計画の一環として、海外事業をByju’s Future Schoolへとブランド変更した。レヴィーンドラン氏は、Epicがブランド名を改称するか決めていないと話したが、同社が米国でよく知られているブランドあることを認めた。

7月初めに米国でディズニーのキャラクターを使った学習アプリを立ち上げたByju’s​は米国で主に3つのサービスを提供している。各サービスは2021年だけでそれぞれ1億ドル(約110億円)を売り上げる、とレヴィーンドラン氏は予想している。「当社の野心は世界に影響を与えることです」と同氏は述べた。

Byju’s​は北米事業に10億ドル(約1100億円)を投資する計画だと同氏は話し、Epicのサービスをインドや他のマーケットにも投入する計画だとも付け加えた。

買収と資金調達

EpicはByju’s​の一連の買収の最新例だ。ここ2年、Byju’s​は米国拠点の子どもにフォーカスした「フィジタル」スタートアップのOsmoを1億2000万ドル(約130億円)で、オンラインコーディングのプラットフォームWhiteHat Jrを3億ドル(約330億円)で、コーチングセンターチェーンのAakashを10億ドル(約1100億円)近くで、そして(正式に認めていないが)インドのEdTechスタートアップTopprとGradeupを買収した。

「我々は買収をするために買収をしたわけではありません」。自身教師であるレヴィーンドラン氏はそう語り、買収した会社の買収後の成長と成功、そしてこうした企業がどのようにもともとの創業チームに率いられているかを指摘した。「当社の野望はかなり長期的なものです。我々は創業者らが成長を加速させるのをサポートするために協業しています」と同氏は述べ、Byju’s​がさらなるM&Aの機会の模索にオープンであると付け加えた。

2020年にパンデミックが始まってから15億ドル(約1655億円)を調達し、Blackstoneなど著名投資家を引きつけたByju’s​は、近年の資金調達が若い会社の買収を支えたと述べた。同社は現在、外部からさらに資金調達する計画はないが、レヴィーンドラン氏は今後数カ月内の資金調達は排除しなかった。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Byju’sインド買収

画像クレジット:Paul Yeung / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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