インフルエンサーマーケティングのプラットフォームを運営するBitStarは8月20日、第三者割当増資と銀行からの融資により、総額13億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
第三者割当増資の引受先は、既存株主であるグローバル・ブレインが運営するファンド、ABCドリームベンチャーズが運営するファンドのほか、コロプラネクストが運営するファンド、グリー子会社のWright Flyer Live Entertainment、INTAGE Open Innovation Fund、Makers Fund、朝日新聞社、名古屋テレビ・ベンチャーズの各社・各ファンドなど。
BitStarは広告・プロダクション・メディア制作の3つの領域で、テクノロジーを活用したインフルエンサーマーケティングのしくみ、インフルエンサーと企業とを結び付けるプラットフォームを提供している。
インフルエンサーマーケティングのプラットフォーム事業では、UUUMやVAZ、THECOOが運営する「iCON CAST」、Candeeなど、ほかにもサービスがある。BitStar代表取締役の渡邉拓氏は「UUUMやVAZはプロダクション機能を、Candeeは制作を得意としている。BitStarは元々は広告領域に明るく、一番シェアもあったが、プロダクションや制作領域にも進出して3領域を垂直統合し、一気通貫で対応できる点が強み」と述べる。
同社がインフルエンサーと企業のマッチングプラットフォーム「BitStar」を公開したのは2015年秋のこと。以来、「スマホ時代にインフルエンサーが活躍できるインフラづくり」をビジョンに掲げ、約3年間テクノロジーを強化してきた、と渡邉氏は言う。
「インフルエンサーマーケティングを手がけるところでも、まだまだアナログなところが多い。BitStarはインフルエンサーの創出・発掘から育成、マネタイズまで、テクノロジーの力でデータを使って自動化や最適化を進めてきた」(渡邉氏)
例えば、創出・発掘ではYouTubeやInstagramなどの成長インフルエンサーを自動検知してスカウトできるクローリングシステム、育成支援では、YouTubeチャンネルをデータに基づいて分析し、配信方法を最適化するシステムを、またマネタイズ支援では、大量の企業からのオファーを効率的に実施するマッチングプラットフォームなどを提供している。
こうした施策もあって、キャスティングなども含めた同社の広告取引の累計案件数は約4000件となっているそうだ。
そして同社はBitStarのほかにも、昨年秋以降、プロダクション領域やメディア領域にも事業を展開。インフルエンサープロダクション「E-DGE」やインフルエンサーマーケティングのプランニング・分析ツール「Influencer Power Ranking」、ファンコミュニティサービスの「costar」といった、新サービスを追加した。またバーチャルYouTuber(VTuber)のグループ「アマリリス組」のプロデュースも始めている。
渡邉氏は「広告・プロダクション・メディア制作を垂直統合することで、各領域で重なる部分ができ、ナレッジやテクノロジーの共有が可能になる。この事業間の連携で、各分野が相互成長できる」と話している。
さらに3領域にわたって事業を展開することで「どのプレイヤーとも協業できるのも利点」と渡邉氏は言う。今回の資金調達では、事業会社の出資参加により戦略的協業を図ることも同社の目的のひとつとなっている。
例えばグリー子会社のWright Flyer Live Entertainmentは、先日VTuber専用のライブ配信プラットフォーム「REALITY」をリリースしたばかり。彼らとのタッグでBitStarはVTuber事業の推進を図っていく。
またインテージには、TVだけでは実態が捉えにくくなってきたコンテンツ視聴について、Influencer Power Rankingを通じて、SNS上の情報を提供。共同で商品開発も検討している。
朝日新聞社、名古屋テレビとは、YouTubeチャンネルなどのデジタルメディア制作で協業を図っている。今回追加投資を行ったABCについては、朝日放送グループ傘下のアニメ製作会社と組んでVTuberプロデュースも検討するという。
これらの動きについて渡邉氏は「YouTuberをテレビへ出演させるというデジタルからマスへの流れだけでなく、マスからデジタルへの流れを作っていくことも考えている」と述べている。
ほかにも「資本提携に限らず協業を図っていく」と渡邉氏は言う。8月10日には博報堂との戦略的提携を発表。「調達資金の一部をインフルエンサーマーケティングに関わるスタートアップへの出資や、M&Aに投資することも予定している」と渡邉氏は話している。
資金調達で「インフルエンサーが活躍できるインフラづくり、エコシステムの強化を図りたい」と渡邉氏は語る。
また渡邉氏は、MCN(マルチチャンネルネットワーク:YouTuberと提携してプロモーションや権利管理などをサポートする組織)への出資も行い、海外のインタラクティブエンターテインメント事情に精通するMakers Fundが株主として参加したことについては「海外の先端情報を取り入れ、グローバル展開につなげることも期待している」とも述べている。
BitStarは2014年7月の設立。これまでにシードラウンドでEast Venturesから、2016年8月のシリーズAラウンドでコロプラから、2017年6月のシリーズBラウンドではグローバル・ブレインから資金を調達している。また2017年10月にはTBS、ABC子会社のCVCから資金調達を行っている。今回の資金調達はシリーズCラウンドにあたる。これまでの累計調達額は約18億円に上るとみられる。