イーロン・マスク、トンネル工事の残土で作るブロックを店舗販売へ

イーロン・マスクは過去いくぶんクレイジーで、信じられないような発言をツイートしているが、ブロックについて冗談を言っているわけではなかった。TechCrunchが入手した公的書類によると、マスクはブロックを作って販売するThe Brick Store LLCという会社を設立している。

7月に設立された新会社は、SpaceXの元エンジニアでThe Boring Company(TBC)を経営しているSteve Davisが舵取りすることになっている。

TBCは新たなトンネル掘削と輸送テクノロジーを手がけていて、ブロックはトンネルを掘削して掻き出される土で作られる。イーロン・マスクは、ブロックの値段はわずか10セントになり、手頃価格の住宅プロジェクトにつながるかもしれないとツイートしている。

Brick Storeの最初の実店舗は、Teslaのスマートなデザイナーショールームからは程遠いものになりそうだ。ロサンゼルス郡南部のHawthorneに提出された計画書には、TBCやSpaceX本部から約1マイル離れたところの荒廃した化粧漆喰の建物が示されている。近づきがたい黒い鋼の安全格子が“入り口や窓のアクセントに活用される”と、TBCは建物をリノベするための申請書に書いている。

こうしたデザインにもかかわらず、TBCはこの建物を美的アピールのために選んだのではない。この建物ー以前はキッチンキャビネットの事業に使われていたーは、TBCが初のテストトンネルから掘削機械を抜き出すために掘っているトンネル出口真上に位置する。このトンネルはLoopという、人や車を乗せた独立式電動スケートが最高時速150マイルで走るという地下交通システムのショーケースとなる。

トンネルは元々、SpaceXの隣の駐車場の建物から2マイルほど公道の地下を伸びる計画だった。しかしながら今年4月、TBCは計画ルートの中程にあたるHawthorneの角地を、子会社を使って密かに200万ドルで購入していた。

7月、TBCはその角地にトンネル掘削機械を取り出すためのシャフトをつくる許可をHawthorneに申請した。トンネル掘削機というのは後ろには進めず、取り出しシャフトがなければ掘削の最後にマシーンを捨てることになるからだ。

同じ月、マスクはThe Brick Storeを設立した。州に提出した書類によると、目的は“ブロックの製造・販売”だ。TBCはすでにトンネル残土でできたブロックによる構造物を造り、マスクは15日、これら構造物はトンネル入り口に設ける監視塔に使われるだろうとツイートした。

トンネル掘削残土を価値ある商品に変えるというのは、マスクの環境を重視する傾向にあっているーそしてTBCは、それら残土を処理する費用を節約できる。TBCはさらに、このブロックをトンネルのライニングそのものの一部に活用できるかもしれない、としている。マスクは先日、トンネルは12月10日に正式にオープンすると明らかにした。

この件について、TBCはコメントの要請にはすぐさま応えなかった。

残土でできたブロックは通常、compressed earth blocks(圧縮土ブロック、CEB)と呼ばれ、その歴史は古代にさかのぼる。CEBはまだ今日でも発展途上国で使用されていて、カリフォルニア州とニューメキシコ州では建築基準で認められている。しかしそれでもなお、CEBマーケットはかなり小さいーそれはおそらくCEBの建物は建てたり、配線したり、断熱材でカバーしたりするのが難しいからだろう。

Dwell Earthは、残土と少しのセメントを混ぜたものに圧をかけてCEBを作る機械を販売している。

「イーロンは、エネルギーと才能でもって大きなチャレンジに立ち向かおうとしているようだ。我々がそうであるように、イーロンが[CEBについて]張り切っているかもしれないというのは嬉しい」とDwell Earth創業者のBob de JongはTechCrunchに対しこう語った。

TBCは今年初め、マスクから1億1200万ドルを受け取った。これらの資金は、ドジャースタジアムをLAの地下鉄につなげるループ、シカゴとオヘア空港を結ぶループ、さらにはワシントンD.C.とメリーランドを結ぶという野心的な通勤ループなどを含め、米国中でいくつものトンネルを掘るのに使われることになる。

ただ、これらのプロジェクトは、米国と中国の間で加熱している貿易戦争のために、反対にあうかもしれず、少なくなとも遅延するかもしれない。

TBCの弁護士は7月、トランプ大統領が中国製トンネル機械パーツに課す関税により、プロジェクトが最大2年遅延し、これにより雇用機会が失われる、と米国通商代表宛に書いている。TBCは、まだ正式に発効していないこの関税から免除するよう求めた。

もし、残土をリブランドしてCEBマーケットを構築できる人がいるとしたら、それはイーロン・マスクだ。しかしもしThe Brick Storeが火星ミッションや地球保護のための十分な資金をつくれなくても、少なくともこのブロック事業は“火炎放射器でない”という以上に少しは実用的だ。

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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