Slack(スラック)などのコミュニケーションツールと連携した上でAIを用いてデータ解析し、従業員のコンディションや業務時間などを客観的に可視化するサービス「Well(ウェル)」を開発するBoulder(ボルダー)は8月22日、ジェネシア・ベンチャーズ、FORCASとジャパンベンチャーリサーチで代表取締役を務める佐久間衡氏、そしてヘイ代表取締役の佐藤裕介氏を引受先とし、合計で6000万円の資金調達を実施したと明かした。
また、Boulderは同日、Wellのα版をリリースしたと併せて発表。無料トライアルのユーザーの募集を開始した。
Boulderは2019年4月に設立されたばかりのスタートアップ。代表取締役の牟田吉昌氏はWellを「従業員がより前向きに働きやすくする『エンプロイーサクセス』プラットフォーム」と説明している。
牟田氏いわく、エンプロイーサクセスとは「自社の収益と従業員のウェルビーイングを両立させるという概念」(牟田氏)。同氏は、企業はCSRやIR、カスタマーサクセスやPRなどに力を入れている一方、エンプロイーサクセスに関してはないがしろにしがちだ、と話す。「従業員ファーストに考え、彼らのために何かをするという概念が曖昧になっている。その状況を改善するための仕組みを我々が作っていく。エンプロイーサクセスを日本で流行らせたい」(牟田氏)関連サービスは、海外ではSAPが80億ドルでの買収を発表したQualtricsなどがある。
働き方改革が急がれる日本において、2015年12月より50人以上いる事業所では「ストレスチェック制度」が義務化されているほか、従業員アンケートを実施している企業は多い。だが、牟田氏は「それでは客観性に乏しい」と考え、Wellを開発するに至ったという。
「従来はアンケートなどで従業員や組織のコンディションを把握していたが、個人が『鬱陶しい』、『ダルい』と感じてしまうと嘘をつきがちだ。アンケートを取らなくても、嘘でない客観的な事実を可視化して分析するツールを作りたかった」(牟田氏)。
現段階ではα版のWellは、Slackなどのコミュニケーションツール上で従業員の行動データを取得、AIで解析し、個人および組織のコンディションを可視化することができるツールだ。
大きな特徴は、アンケート入力を省きコミュニケーションツールからデータを取得するため、従業員や組織の現状を客観的な情報によりリアルタイムに可視化できる点だ。また、Slackなどを利用していれば即座に導入でき、最短翌日から従業員や組織の現状を把握、分析することが可能となっている。
今後は課題の可視化だけでなく、課題解決に繋がるような機能も加えていく予定であり、そこが他社の提供する類似したビジョンを持つサービスとの差別化に繋がっていく、と牟田氏は話した。「課題を解決するには課題特定が重要。そのため、α版では『客観的事実』の『リアルタイム』での可視化にフォーカスした」(牟田氏)。β版では課題解決のための「相談マッチング」などの機能を実装する予定だ。
牟田氏は以前、マネジメントを担当していたころ、「メンバーがエンゲージメント高く働ける職場をつくる」ことに注力し1on1の会議をなるべく週1で行うなどの工夫をしていたものの、メンバーが休職の末、退職してしまうという事態を経験した。メンバーの顔色や普段の会話で感じた印象などによる「感覚的」なマネジメントにより苦労させてしまったと感じ、「正しい客観的事実」ならびに「適切な解決策」の重要性を痛感し、Boulderを設立しWellを開発することに踏み切ったという。
Boulderは調達した資金をもとに体制を強化し、引き続きWellの開発を進めていく予定だ。